カブス・鈴木誠也【写真:ロイター】

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試合後の室内での打ち込みを欠かさない「休んでも切り替わらない」

 カブスの鈴木誠也外野手が18日(日本時間19日)、本拠地シカゴでのパイレーツ戦に「4番・右翼」で出場。第2打席で右越え二塁打を放ち、4月7日(同8日)の開幕戦から続けた自己ベストの9試合連続安打に次ぐ7試合連続安打とした。その他の打席は四球、左飛、空振り三振で3打数1安打。打率は.257となった。

 5月に入り打撃が下降した鈴木が上昇の気配を見せている。逆転され1点を追う4回裏の第2打席、先発右腕ウィル・クロウの96マイル(約154キロ)外角直球を捉え、右越え二塁打を放つと、1死後に6番シュウィンデルの左前打で同点のホームを踏んだ。

 外角球に絶妙な角度でバットを入れる鈴木本来の打撃で今季10本目の二塁打を記録。四球、左飛、空振り三振の打席にも好感触が残った。

「今日に限っては全打席自分の中では悪くなかった。今日みたいな打席内容を続けていけられたらいいなと思います」

 試合途中に右足首を痛めた9日(同10日)から2試合の欠場を挟み、7試合連続安打。この間の打率は.304。4本の二塁打と3打点を挙げる鈴木は、試合後も報道陣の立ち入りが禁じられている室内ケージでの打ち込みを欠かさない。メジャーは162試合の長丁場。時差のある敵地への移動も多く、疲労軽減と体調管理が大切になる。だが、鈴木はこのルーティンを変えるつもりは現時点でないと言う。

「休んでも切り替わらないので。ある程度、感覚的に良くならないと納得がいかないですし。じゃ、次の日にすぐ感覚が良くなるのかって言われたらそうはならないので。そこで基本、やることは一緒です。何がずれているのかとかを感じて、切り替えて。明日はこんな感じでいこうと、(打席に)向かうためによりいいものを見つけておきたいなと思っています」

「全部考えて守備に入る。だから慌てることなくできている」

 めずらしくクラブハウスが締まる時間前に戻ってきた鈴木は、前日の記念すべきメジャー初補殺についても状況の説明を加えた。

「ランナーがランナーだったので。捕った場所もそんなに深い位置ではなかったので。捕ってからランナーを見て、あ、走ったわ! と思って投げたっていう感じですね。あまり足の速いランナーじゃないんでね。捕って確認をしてから投げたという感じでしたね」

 筒香嘉智の飛球で三塁から本塁を狙ったのは体重113キロの巨漢ボーゲルバック。定位置よりやや前に上がった打球は風で流され鈴木は右翼線寄りで捕球。慌てることなく本塁右前で構える捕手コントレラスにワンバウンドのストライク返球。相手の反撃の芽を摘むプレーだったが、鈴木は本塁補殺への大切なポイントを絞り込んだ。日本と違いメジャーでは特別な場合を除き試合前のシートノックはない。鈴木はどんな準備をして臨んでいるのか。

 問うと、完膚なく説き明かした。

「ランナーがいてもいなくても、どういう打球が来たらこういう捕り方をして、こういう感じで投げてというのはシチュエーションを含めて全部考えて守備に入る。だから慌てることもなくできているのかなと。全打球、難しい打球もそうですし簡単な打球もそうですし、どういう打球の回転で、どういう打球が飛んできそうなのかっていう。ピッチャーが投げた後のスイングの仕方だったりと、ある程度頭に入れているので。もちろんその通りに来ない可能性もあるんですけど、それよりも難しい打球を想定しながら守備に入るので。今のところは落ち着いて守ることができているのかなと思います」

 打撃のように練習を積めないのが守備。異なる場面での捕球から送球の一連の動作をイメージし試合中に周到に繰り返す。「無駄なことを考えないとだめ」とよく言っていたイチローは、本塁打をもぎ取るためフェンスによじ登る足の運び方とグラブの差し出し方まで頭に描いていた。「無駄=あらゆる場面の想定」ができる空白が野球には豊富にある。落ちてくる打球、切れていく打球、打者のバットの出方から一歩目のスタートをどの方向に切るか、半身体勢からの捕球後は体をどう切り返し送球するか……。ライトの芝の上で常に鈴木はシナリオを練ってきた。

 いつになく饒舌だった鈴木の貴重な話の後に思った――。

 筋肉に覚え込ませるのが打撃だとすれば、守備はイメージという記憶の糸のタペストリー。

 結果を導くための、味わい深い準備の側面を鈴木誠也が教えてくれた。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)