水を張れない田んぼで不安を募らせる神谷代表(18日、愛知県安城市で)

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 愛知県豊田市にある取水施設「明治用水頭首工」で漏水事故が発生し、県内の農地5400ヘクタールで給水できない状況だ。施設を管轄する東海農政局は18日、復旧の見通しは立っておらず、ポンプを設置して対応すると発表した。ただ、工業用水を優先し、農業用水への給水時期は未定だ。

 事故が起きた施設は矢作川をせき止め、生活用水、工業用水、農業用水を取得。農業用水は西三河地域の8市に供給する。農政局によると、15日に最初の漏水を確認。せき止めている川の底に穴が開き、下流に水が漏れていた。砕石を投入して穴をふさごうとしたが変化はなく、17日に漏水が拡大。同日、緊急対策本部を設置した。

 18日午前10時現在、ポンプ25台を設置し川の水を用水に供給。十分な量ではないため、さらに台数を増やす。地域は水田を中心に穀倉地帯が広がっており、田植え作業の遅れや生育への影響が懸念される。農政局は農業用水について「一刻も早く確保できるよう対応していく」とする。

田植え間近「水こない」 農家やJAに焦り

 関係する農家やJAには不安が広がっている。同施設からの農業用水は西三河地域の8市に供給され、受益面積は約5400ヘクタール。4JAにまたがる広域で影響が出ている。8市のうち、碧南、刈谷、安城、知立、高浜の5市を管内に持つJAあいち中央によると、最も影響を受ける品目は水稲だ。今は晩生「あいちのかおり」の田植えを控えた時期。水がないと代かきや移植ができず、また直播(ちょくは)後の通水もできない。

 安城市の農事組合法人高棚営農組合の神谷力代表は「田植えができず、このままだと苗が枯れてしまう。(水田は)水を蓄える機能があるので、水が落ちないよう対策する。一刻も早く水が流れることを期待する」と話す。 影響を受ける地域を管内に持つJA西三河、JAあいち三河、JAあいち豊田でも同様に、農家から不安の声が寄せられているという。ハウス栽培の花きでかん水ができず、品質低下を懸念する農家もいる。

 取水施設を管轄する東海農政局によると、緊急対応として川の水をポンプでくみ上げて用水に供給している。ただ、工業用水向けの毎秒3立方メートルの水量確保を優先。農業用水の供給再開時期は未定とした。関係機関や事業者に呼びかけ、ポンプの増設を急ぐ。生活用水は他の用水を回して対応している。