群馬県は、豊富な県産農畜産物や全国有数の温泉地を生かし、県内に長期滞在する国内外の観光客の創出に乗り出す。忙しい日常生活から離れて心や体を癒やす「リトリート」を提唱。長期滞在に対応する関連施設の整備や情報発信などを通じ、県産農畜産物を含む観光需要の拡大を狙う。

 県は「リトリートの聖地化」を重点施策の一つに掲げる。新型コロナウイルス禍前の2019年の観光客数は延べ6603万人。一方、宿泊者数は同865万人と、首都圏に近い地理条件から日帰りの観光客が多い。

 こうした状況を受け、「リトリート」として、数週間以上の長期滞在や平日を含む数日間のまとまった日数の滞在の中で、食を含めた観光や体験を楽しむ人を増やす方針。

 22年度県予算に関連予算として2億7777万円を計上。2億円を環境整備に充てる。長期滞在に対応できる宿泊施設や地域施設の確保へ、通信や居住環境を向上させるための改修、地域の取り組みなどを支援する。

 「食で癒やし」をテーマとしたイベント、県産食材を使うレストランや宿泊施設を紹介するサイト開設などの財源に1700万円を確保。有機野菜を販売するマルシェとヨガを組み合わせたイベントを予定。県内を訪れる機会を設け、リトリートを実践する人の掘り起こしを目指す。

 推進に当たり、県観光魅力創出課に課長級の「リトリート推進主監」を新設。着任した福田真宜主監は「豊富な農畜産物を生かし、地域に合ったPRを考えたい」と意気込む。

<ことば> リトリート

 英語の意味は「隠れ家」。「仕事などの忙しい日常から離れて静養し、本来の自分に戻るための時間」という趣旨でも使われる。群馬県は、温泉や豊かな県産農畜産物を楽しみ、心と体をリセットする過ごし方を「リトリート」として提唱する。