日本時代に出版の「台湾鉄道史」 110年の歳月経て中国語全訳版発売

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(台北中央社)日本統治時代の台湾総督府鉄道部によって1910〜11(明治43〜44)年にかけて出版された「台湾鉄道史」の中国語全訳版が今年2月、約110年の時を経て発売された。台湾鉄道の黎明期を知ることができる貴重な資料として、台湾史に対する理解向上や研究への活用が期待されている。

同書は、上、中、下巻のシリーズで、清朝時代に開通した北部・基隆-同・新竹間の鉄道、日本統治時代に行われた改良工事、新竹-南部・高雄間の新線建設工事、運営状況、開通祝賀式典などに関する詳細が記されている。

台湾の鉄道や産業の発展を知る上で重要な本だが、その中国語版は1990年に台湾省文献委員会から上巻が出されたものの、読みやすい文体ではなかったばかりか、中巻と下巻が出版されることはなく、専門誌「鉄道情報」の古庭維編集長によると、台湾史理解の大きな妨げになっていたという。

そんな中、2020年に国家鉄道博物館準備室が全訳版の翻訳プロジェクトを始動すると、古編集長が中心となって翻訳チームが立ち上げられ、作業を開始。2年近くかけ、専門用語が交じり、句読点や濁点がない当時の文語体の日本語を、専門家の意見を聞きながら読み解いた。

13日には台北市内で関連イベントが開かれ、翻訳を手掛けた古育民さんは、中国語にはない間接的な言い回しや二重否定などのあいまいな表現に苦労したと振り返った。日本語の文章は中国語にすると文字数が少なくなると言われるが、それでも最終的には70万字の大作になった。また原書に折り込まれていた図面や地図、表なども忠実に再録した。

国家鉄道博物館準備室の鄭銘彰主任は「鉄道や文学の専門家の力を合わせて学術的な翻訳本が出版できたことは意義がある」と語り、今後も台湾の鉄道に関する外国語出版物の翻訳や出版を続けていく考えを示した。

(齊藤啓介)