『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』尾形 哲 KADOKAWA

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 現在、肝臓に脂肪が溜まる「脂肪肝」になる人が増えているといいます。そう聞いて、「私はお酒を飲まないから関係ない」と思った方は、ちょっと注意が必要かもしれません。

 かつて肝障害というと、ほとんどは慢性ウイルス肝炎の人かアルコールを多飲している人がかかるものでした。けれど、現在増えているのが、お酒を飲まない人による「非アルコール性脂肪性肝疾患」。2016年のデータによると、日本人の2266万人がこの病気を発症しており、その数は年々増え続けているそうです。

 脂肪の溜まった肝臓は、自覚症状のないまま徐々にその機能が失われていきます。さらに、肝硬変や肝臓がんへ進行してしまう恐れもあり、けっして軽視できる病気ではありません。

 その原因となっているのが、過剰な栄養摂取。脂肪肝、脂肪肝炎のうちに食事を変えることができれば、肝硬変や肝臓がんは予防できるといいます。

 そこで、2017年に長野県の佐久市立国保浅間総合病院に設立されたのが、肥満・脂肪肝専門外来の「スマート外来」。こちらでおこなわれている、科学的根拠に基づく食事法で減量する方法を公開したのが、書籍『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』です。

 「やるべきことは、肝臓を傷めつける食材を減らして、スーパーで買える、肝臓をいたわる食材を増やすこと」と記すのは、肝臓先生の異名を取る著者の尾形 哲さん。外来患者の8割以上を3カ月で5kg減に導いたという脂肪肝改善メソッドは、現代人であれば知っておいて損はないことでしょう。

 同書に登場するのは、日々の中で肥満と不調をかかえた男女3人。スマート外来をおとずれ、O先生の指導のもと、減量や糖質制限に励む様子が描かれます。最初に出てくるのは、健康を考えて野菜ジュースを飲んだりしているのに、産後は体重が増えるいっぽうだという40代の主婦。O先生は彼女に「体重を1日1回測って記録する」「甘い飲み物をやめる」「野菜を増やす」「糖質を減らす」「加工食品を減らす」という、肝臓をいたわる「極意5カ条」を伝えます。まさにこれは、脂肪肝の人にまず試してほしい「肝臓の働き方改革」と言えるかもしれません。積極的に食べたい食材や摂取量、調理法などについても詳しく書かれており、専門医にかからずとも自分で食事改善に取り組めるのが、同書の良いところと言えるでしょう。

 全臓器の中で最も多くのエネルギーを使い、多くの役割を担いながら24時間働き続けるという「肝臓」。気づかぬうちにむしばまれ、手遅れになることがないよう、同書で脂肪肝を改善するための食事術を学んでみてはいかがでしょうか。

[文・鷺ノ宮やよい]