都心の大型物件が、また一つ動きだした(記者撮影)

東京都目黒区に所在するオフィスビルやホテルなどの複合施設「目黒雅叙園」について、保有する中国政府系ファンドが売却を検討していることが東洋経済の取材でわかった。

雅叙園は現在、SPC(特定目的会社)経由で中国の政府系ファンド、チャイナ・インベストメント・コーポレーション(CIC)が保有している。複数の不動産関係者によれば、CICから運用を受託するアメリカのラサールインベストメントマネージメントは不動産市況の好調を受け、このほど売却に向けたアドバイザリー業者の選定に着手した。

売却時期は未定だが、金額は2000億円規模となる可能性がある。

4度目の売却劇

雅叙園は目黒駅から徒歩3分の場所に立つ複合施設。敷地面積は約3.7万平方メートルで、オフィスビルやホテル、結婚式場など計5棟の建物で構成される。源流は1931年に開業した料亭で、1991年には敷地内に19階建てのオフィスビル「アルコタワー」、2011年には同じく16階建ての「アルコタワーアネックス」が竣工した。

雅叙園の運営会社はバブル期の投資が痛手となり2002年に破綻、債権を買い取ったアメリカの投資ファンド、ローンスターが新たなオーナーとなった。ローンスターは2014年8月、雅叙園を森トラストに約1300億円で売却。5カ月後の2015年1月、森トラストはCICに約1430億円で転売した。

CICはもともと森トラストと共同でローンスターから雅叙園を取得する予定だったが、機関決定が間に合わず断念。やむなく森トラスト単独での取得となり、売却先を探していたところCICが改めて名乗りを上げた。

複数の関係者によれば、ラサールインベストメントマネージメントは2021年ごろから売却を模索。今月に入ってアドバイザリー業者の選定活動を本格化させた。売却額は2000億円規模となる見方が出ている。

賃料引き上げや建て替えが実現すれば

アルコタワーおよびアネックス棟の中核テナントであるアマゾンジャパンは、オフィス市況の回復を受け、前回の売買時である2015年当時よりも高い賃料で賃貸借契約を結んでいるとみられる。賃料の上昇分だけ、利回り換算での売却額は膨らむだろう。

売却額を占ううえでは、敷地内のホテルの動向もカギを握りそうだ。運営会社が締結している定期借家契約では、賃料が相場よりも安い。買い手の投資家が賃料を適正水準に引き上げたり、建て替えて高層化を図ったりすれば、収益拡大が十分見込める。

CICの意向によっては最終的には売却が中止される可能性も残るが、すでに不動産ファンドなどが関心を示しているもよう。不動産へのマネーの流入はまだまだ続く。

(一井 純 : 東洋経済 記者)