渋谷〈Bunkamura ザ・ミュージアム〉で『ボテロ展 ふくよかな魔法』スタート。

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南米コロンビア出身の美術家、フェルナンド・ボテロの展覧会『ボテロ展 ふくよかな魔法』が渋谷〈Bunkamura ザ・ミュージアム〉で始まりました。日本での個展開催は26年ぶり。1932年生まれで今年90歳となるボテロ自身が監修した展覧会に足を運びました。

ボテロが大きなキャンバスに描くふくよかな魔法とは?

フェルナンド・ボテロ。

フェルナンド・ボテロは、1950年代後半から欧米で高く評価されてきた現代を代表する美術家のひとりです。南米だけではなくヨーロッパやアメリカ、アジアでも大規模展が開催されています。

ボテロは、展覧会のタイトルにあるように、人はもちろん、動物、果物に楽器、紙に至るまで、ふくよかに表現することで知られています。

フェルナンド・ボテロ『泣く女』1949年 水彩/紙。

展覧会は「第1章 初期作品」「第2章 静物」「第3章 信仰の世界」「第4章 ラテンアメリカの世界」「第5章 サーカス」「第6章 変容する名画」の6つに分かれています。

最初に展示されているのは17歳のボテロが描いた水彩画『泣く女』。すでに女性の体をボリュームたっぷりに描いています。

『楽器』1998年 油彩/カンヴァス。第2章展示風景。左より『黄色の花』『青の花』『赤の花』(3点組)2006年 油彩/カンヴァス。

それまでも対象物に実際よりボリュームを持たせて描いてきたボテロですが、1956年にマンドリンを描いているときに発見をします。マンドリンの穴(サウンドホール)をとても小さく描くと、大きな輪郭と細部とのコントラストが生じ、楽器がふくらんで見えたのです。

「第2章 静物」として集められた作品は、マンドリンをはじめとする楽器や、果物、花などにボテロによるふくよかな魔法が掛けられているのを見ることができます。楽譜や布、よく見れば花びらまでぷっくり。色使いの鮮やかさも魅力的です。

第3章展示風景。第3章展示風景。左より『枢機卿』1998年 油彩/カンヴァス、『ヴァチカンのバスルーム』2006年 油彩/カンヴァス。

ボテロが生まれたコロンビアはカトリック教徒の多い国です。「第3章 信仰の世界」では、宗教的なテーマの絵を集めています。ただしそれらは、聖職者の世界とそこにあるかたち、色彩、衣装、そしてその造形的で詩的な側面を絵画的に探究するためのもの。ユーモアと風刺をもって人物にアプローチしています。

この展覧会のパンフレットにも採用されている『コロンビアの聖母』(1992年)という作品もそのひとつ。涙を大量に流す聖母が抱く幼子イエスは、小さなコロンビア国旗を手にしています。この絵が描かれた1990年代、コロンビアの情勢が非常に不安定だったことをほのめかしているそうです。

第3章展示風景。バレリーナもボテロが描くと、ふくよか。第3章展示風景。

「第4章 ラテンアメリカの世界」には、ラテンアメリカの社会や日常を描いた作品が並びます。絵の中心となっているのは、権威ある大統領、苦しい立場にある人、ダンスする人やミュージシャンなど。

大胆な構図と明るい色使い、さらにドローイングの作品でも人々を生き生きと描写。複雑な社会背景を伺わせる作品も並びます。

『象』2007年 油彩/カンヴァス。『空中ブランコ乗り』2007年 油彩/カンヴァス。

「第5章 サーカス」では、2006年にメキシコ南部でサーカスと出会ったことをきっかけに生まれた作品が展示されています。空中ブランコに乗る人やピエロ、動物、そしてサーカス団員の日常もモチーフにしています。サーカスはピカソやマティス、ルノワールもモチーフとしましたが、ボテロの穏やかで静かな特徴が反映された作品になっています。

『モナ・リザの横顔』2020年 油彩/カンヴァス。

「第6章 変容する名画」ではボテロが敬愛する偉大な芸術家による有名な絵画をモチーフにした絵が展示されています。中でも2020年に描かれた『モナ・リザの横顔』はこの展覧会で世界初公開となります。

誰もが知るレオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』をモチーフにした作品をボテロは何度も描いています。実はボテロに注目が集まったのも1963年にニューヨーク近代美術館(MoMA)のエントランス・ホールにボテロの『12歳のモナ・リザ』(※本展には出展されません)が展示されたことに始まります。

第6章展示風景。各絵には元となった名画の作品画像があるので、見比べられます。『マリー=アントワネット(ヴィジェ・ルブランにならって)』2005年 油彩/カンヴァス。

他にも美術の教科書で見たことがあるような名画をボテロが自身の様式で描いた絵が並びます。元の絵画の写真も添えられているので見比べながら進むと、ボテロのユニークさが際立って一層楽しめるはずです。

展覧会『ボテロ展 ふくよかな魔法』では、70点もの作品が展示されています。しかも高さ1メートル以上、中には2メートルを超えるものもあるなど、大きなものがほとんどです。なかば見上げるように実物の絵画を見ることで、ふくよかさの中に官能や芸術的な美を感じ取れる展覧会といえそうです。

『ボテロ展 ふくよかな魔法』東京都渋谷区道玄坂2-24-1 B1 Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急百貨店本店横)〜2022年7月3日(日) ※5月17日(火)休館10:00〜18:00(入館は17:30まで)毎週金・土は21:00まで(入館は20:30まで)当日一般 1,800円、大高 1,100円、中小 800円050-5541-8600公式サイト※状況により、会期・入館方法等が変更になる場合があります。※会期中すべての土日祝は、オンラインによる入館日時予約が必要です。巡回展 2022年7月16日(土)〜9月25日(日)名古屋市美術館、2022年10月8日(土)〜12月11日(日)京都市京セラ美術館

『ボテロ展』にちなんだ、ふくよかなメニュー4種類。

「ミートローフ デミグラスソース 冷製ナポリタン添え」2,000円(本展覧会およびル・シネマ『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』のチケット提示で200円OFF)。

〈Bunkamura〉内の飲食店では、展覧会に因んだメニューがいただけます。

1階の中央にある〈ロビーラウンジ〉では、2種類のメニューが『ボテロ展』に合わせて準備されています。「ミートローフ デミグラスソース 冷製ナポリタン添え」はボテロの活躍したアメリカで古くから親しまれているミートローフをメインにした一皿。

温かいミートローフの付け合わせには、冷製ナポリタンとサラダ、マッシュポテトが添えられています。展覧会タイトル『ふくよかな魔法』にあわせてボリューミーに仕上げたとのこと。分厚く切られて、肉の食感を存分に味わえるミートローフにたっぷりの付け合わせは、ボテロが描く肉感的な絵画を思い出してしまいそうです。

「パッションフルーツラッシー」1,000円(本展覧会およびル・シネマ『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』のチケット提示で100円OFF)。

ボリュームたっぷりながら、さっぱりした「パッションフルーツラッシー」も用意されています。ボテロの出身地コロンビアはフルーツ王国。その中でもボテロが多用する黄色の果肉を選んで、パッションフルーツを使ったラッシーの上に生クリームとマンゴーの粒をあしらっています。

〈ロビーラウンジ〉東京都渋谷区道玄坂2-24-1 1F03-3477-918510:00〜19:00(18:30LO)

「ボテロ」1,400円(本展覧会およびル・シネマ『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』のチケット提示で200円OFF)。帽子のようなチョコレートを外すと、中にはアイスもたっぷり。

そして地下1階にある〈ドゥ マゴ パリ〉ではその名も「ボテロ」というアイスチャイフロートが用意されています。ホワイトチョコレートをカラーリングしたドームの下は、バニラビーンズたっぷりのアイス。その下には北海道産ミルクと自家製のチャイシロップが2層になっています。

ボテロの作品『コロンビアの聖母』をイメージして作られています。ふくよかな絵画にちなんで、量は通常のドリンクメニューの2倍! ゆっくり過ごすのにも向いていますね。

「ラズベリーエイド」1,200円(本展覧会およびル・シネマ『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』のチケット提示で200円OFF)。

そしてもうひとつのメニュー「ラズベリーエイド」は作品『赤の花』をイメージして、様々なベリーと花をのせたドリンクです。自家製ラズベリーシロップにソーダを加えて、さっぱりとした大人な味わいに仕上げたフルーツエイドで、初夏にぴったりのさわやかなドリンクです。

〈ドゥ マゴ パリ〉東京都渋谷区道玄坂2-24-1 B103-3477-912411:30〜22:00(21:30LO)、日祝〜21:00(20:30LO)

展覧会を見る前後の時間も、世界観に浸れる〈Bunkamura ザ・ミュージアム〉で開催中の『ボテロ展 ふくよかな魔法』。美しいものに没頭したい日に訪れてみてはいかがでしょうか?