カブス・鈴木誠也【写真:ロイター】

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「黒田から聞いていた」カーショーとの対決で3試合ぶり安打

 カブスの鈴木誠也外野手が7日(日本時間8日)、ドジャースとのダブルヘッダーに「2番・右翼」で出場。左前打と今季初の三塁打を右翼線に放ち、4月下旬以来となる2試合連続安打を記録した。計8打席に立ちフル出場したが、チームは強敵相手にいずれも完敗。今季ワーストタイの4連敗となり借金は最多の「8」となった。

 6日の試合が悪天候のため中止となり、ダブルヘッダーに初めて臨んだ鈴木。直近2試合でバットは湿っていたが、晴天の本拠地で快音を轟かせた。

 第1試合では、通算189勝を挙げている米球界屈指の左腕、クレイトン・カーショーから外角のスライダーを強振し、左前に弾き返す3試合ぶりのヒットを記録。かつてドジャースで活躍し、広島に復帰した黒田博樹氏から聞いていた好投手との対戦を心待ちにしていたが、「自分のスイングをしっかりしようというだけで入った」。情報の詰め込みを嫌う姿勢は崩さなかった。

 第2試合は、変則左腕のアンダーソンと対峙。1打席目の三振でタイミングをつかむと、3回の第2打席で外角に曲がるカットボールを捉えた。ライン際まで突き出た客席のフェンスに当たった打球の処理にもたついた右翼のベッツを視界に入れると、三塁へ土を蹴った。

 4月22日から24日にかけて記録した3試合連続安打以来の2試合連続安打は、1死無走者、0-2のボールカウント、そして左腕が繰り出すほぼ同じ軌道の変化球という状況が重なる中で打ち分けたもの。この2本に復調への確かな手応えはあったのか――。

 鈴木らしい言葉が、深読みを一気に解体した。

「そんな技術ないですよ。適当に振ったら当たっているっていうだけで。そんな器用に打ち分けるなんていう技術は僕にはないので。当てにいって失敗するぐらいだったら、自分のスイングをして失敗した方がいいなと思っているので。打ち取られて変な後悔をするぐらいだったら、思い切り振って気持ちよくアウトになった方が心残りみたいなのがないので。まずはしっかりとスイングしていくこと。その中でいろいろと微調整で(タイミングを)合わせていけたならと思っています」

本人の言葉に焦りはないが…待たれる春の訪れ

 この日喫した計3つの三振のうち、2つがチェンジアップの空振り。抜かれる球には「打てないと思います、ずっと」と歯切れよく返す。あきらめではなく、タイミングの模索はしても構築したスイングは絶対に崩さないという一貫した意識が言葉にじむ。

 思えば、4月7日のデビュー戦後、感想を問われた鈴木は言った。

「同じ野球だと思いますし。雰囲気だったり環境は違いますけど、野球は野球。特別感というか、あんまり変わりはないというか。いつもどおりという感じです」

 あれからちょうど1か月。数字的には下降線をたどっているが、本人の言葉からは焦りは感じられない。

 ここまで本拠地では14試合を戦ったが、強風と雨、そして低温という過酷な自然環境でのプレーを強いられてきた。体力の消耗も激しいはず。言い訳は絶対に口にしない鈴木だが「暖かくなると聞いているんですけど、一向にならないのでもう信じないです」とシカゴの春を嘆く。

 リグレー・フィールドの外野フェンスを覆う名物のツタには緑の新芽が出始めている。思い切りバットが振れる野球日和の日々は確実に近づいている。

 苦しめられてきた不可抗力から解放された鈴木誠也を見てみたい。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)