環境配慮の農産物、流通業者6割が優先 消費者と隔たり…価値浸透カギ 農水省調査

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 水田の中干し期間の延長など、温室効果ガスの排出削減に配慮した農産物について、流通加工業者の6割が優先的に取り扱う意向であることが農水省の調査で分かった。一方、消費者は「値段に関係なく買いたい」が1割に満たず、価格が膨らむことへの抵抗感が強い。同省は、販売時にガス削減量を示すなど消費者に付加価値を伝える取り組みで、流通拡大につなげたい考えだ。

 同省は環境負荷低減を目指す「みどりの食料システム戦略」で、2050年に温室効果ガスの排出実質ゼロ化を掲げる。戦略推進へ同省が1、2月に実施した調査で分かった。流通加工業者は2425事業所、消費者は1000人が回答した。

 燃費の良い農機利用、水田の中干し期間の延長など、ガス削減につながる手法を取った農産物について、流通加工業者で「既に優先的に取り扱っている」は11%、「優先的に取り扱いたい」は49%で、「優先的に取り扱いたいと思わない」は36%だった。

 優先的に取り扱う理由(複数回答)では、「将来世代により良い地球環境を提供するため」が70%、「CSR(企業の社会的責任)活動のため」が22%となるなどした。

 一方、消費者は、ガス削減に配慮した農産物を「値段に関係なく買いたい」は7%にとどまった。同省は「生産者のガス削減の取り組みを価格転嫁しても、消費者の多くに受け入れられない可能性がある」とみる。

 消費者に、ガス削減に配慮した農産物の販売促進に役立つ取り組みを複数回答で尋ねると、「判別できる表示の実施」が45%、「排出の少ない栽培方法の紹介」が44%、「栽培段階でガスを排出・吸収していることの周知」が41%と、表示や周知を求める声が多い。

 同省は22年度、農薬や肥料、プラスチック資材、燃料などの使用量から算定したガス削減量を農産物の販売時に表示する取り組みを実証し、販売促進効果を確かめる。