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 ネコは人の言葉が分かる、と少なからぬ数の人間が信じているが、科学的に見てその真偽のほどはどうなのであろうか。まず、そもそもネコについての研究というものは(彼らのヒト社会において果たしている役割の大きさに比して言うならばだが)意外と少なく、これまでは科学的な探求はほとんど行われていなかった、というのが1つの前提である。

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 話が多少逸れるのだが、イヌに関しては研究がある。イヌは、個体差と訓練の必要はあるが、最大で4000ほどの玩具の名前を記憶することができることが既に実証されていると言う。

 今回紹介する研究は、ネコは同居している他のネコや、あるいは家族の人間の個体を識別し、さらにそれらの個体名を音声的に弁別できるのか、という点に着目して行われた。研究の中心に立ったのは京都大学大学院文学研究科日本学術振興会特別研究員の高木佐保氏である。

 今回の研究には、期待違反法という手法が用いられた。ネコの研究をするために開発された技法というわけではなく、乳幼児や動物など、言語的コミュニケーションが困難あるいは不可能な相手を対象に、知覚能力などを調べるための研究技法である。

 具体的にはどうしたかと言うと、2つの実験を行った。まず、3個体以上で飼育されている家庭のネコと、ネコカフェのネコを実験対象とした。ネコの前にモニターを用意し、同居のネコの名前を読み上げた後、そのネコの写真と、別のネコの写真を提示。

 そうすると、ネコカフェのネコはどちらの写真にも同じような反応しかしなかったが、家庭のネコは「対応していない写真を示されたとき」モニターを長く注視した。この反応は、「期待に違反する現象が起こった」、つまりそのネコにはどの個体の写真が「示されるべきであるかが分かっていた」というのが、期待違反法の基本的な考え方である。

 また第2の実験では、家庭のネコに対し、同居する人間の名前と顔を用いて同様の実験を行った。すると、同居期間が長いほど、「ネコがその人間の顔と名前の対応を記憶している」と考えられる反応を示すことが分かった、と言う。

 つまり、ネコは人や他のネコの顔や名前を識別できていることが証明されたわけである。

 なお、研究の詳細はScientific Reportsに掲載されている。