犠飛を放ったパイレーツ・筒香嘉智【写真:ロイター】

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「風の街」シカゴ象徴、風速は8.5メートル

■パイレーツ 4ー3 カブス(日本時間25日・シカゴ)

 パイレーツの筒香嘉智内野手が24日(日本時間25日)、敵地でのカブス戦に「5番・一塁」で先発出場。第1打席で反撃の口火を切る中前打、第2打席では同点の犠飛を放ち3打数1安打1打点1得点。4連戦の同一カード勝ち越しを決める4-3の勝利に貢献した。

 豪雨のため、当初の開始時刻から55分遅れで始まったカブスとの同一カード最終戦。心身の準備を整えていた筒香は、空いた時間を入念なストレッチなどで埋めた。

 午後2時15分にプレーボール。雨の心配はなくなっても「風の街」シカゴを象徴するような風速8.5メートルの強い風が舞っていた。打者にとって、レフト方向は厳しい風向きだったが、筒香があえてそこを狙ったのが3回の得点好機だった。

 1-2と1点を追う3回。1死二、三塁の場面で2打席目が回った。相手左腕スティールの角度のある外角低めのカーブを見逃すと、絞ったのは直球。どっしりと構えた内角に来た2球目の91マイル(約146キロ)に、筒香はバットのヘッドを遅らせ気味に出し高々と打ち上げた。

 内角球を風が逆巻く左へ――。確固たる技術に加え、状況を的確に判断して打ち上げた結果だった。筒香曰く「あの打席は、緩い球で引っ張れる球が来たらライナーやゴロにならないように(バットの)ボールの入れ方というイメージはもちろんありました」。この前置きの後に、筒香の解説が冴える。

「犠牲フライは、自分の中でいい感覚で振れた」

「ストレートを引っ張りにいったとき、それがちょっとズレたり、変化球がきたときのミスで得点できないという確率はすごく高くなるので。あそこの場面でストレートを“1、2、3(のタイミング)”で引っ張るというイメージはなかったですね。いろんなリスクを考えながらという頭で打席に入ってました」

 リスク回避を最優先させた秀逸な一振り。“ウインディー・シティー”でつかんだ好感触はさらに言葉になった。

「犠牲フライは、自分の中ではいい感覚で振れた。ああいった打席というのを増やすために微調整をしなきゃいけないなと思っています」

 反撃の口火を切った2回の第1打席は、追い込まれたカウントから外角低めのスライダ―をバットで拾う中前打。しかし筒香は「僕の中ではいい形じゃない」とさばいた。

 記録に「H」が付かない一打が明日への糧になれば、その逆もある。好打者はそうして技術を研ぎ澄ましていく。

 オリックス時代の若きイチローが、強烈な二塁ゴロに進化への確信をつかんだ話は有名だが、マリナーズ時代には日本時代を振り返り、こう話したことがある。

「僕はホームランを打ったあとで悔やんだことだってありますから」

 周囲を納得させるのに必要なのは結果。自分を納得させるには結果も内容も必要である。

 筒香嘉智はぶれない視線で二兎を追う。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)