【戸塚啓コラム】日本らしさか「引き算の戦い」か。カタールW杯にどう挑む?
全体としては、とてもバランスが取れたものとなった。
カタールW杯のグループステージの組合せである。
誰もが一見して“死の組”と思うようなグループはない。ブラジル、セルビア、スイス、カメルーンが同居したグループGは、2位争いが激しそうだ。ベルギーとクロアチアが首位を争うグループFでは、1986年以来の出場となるカナダが面白い。アルフォンソ・デイビス(バイエルン・ミュンヘン)やジョンサン・デイヴィッド(リール)をはじめとして、将来性豊かで個性的なタレントが揃っている。1986年以来9大会ぶりの出場となるカナダが、ヨーロッパの強豪相手にどのような戦いを見せるのかは興味深い。
日本はグループEに組み込まれ、スペイン、ドイツ、大陸間プレーオフの勝者(ニュージーランドかコスタリカ)と対戦することになった。スペインとドイツが1位を、日本は大陸間プレーオフの勝者と3位を争うというのが、このグループの一般的な評価だろう。
グループステージを突破すると、1位ならグループFの2位と、2位ならグループFの1位と、ラウンドオブ16で激突する。ベルギーとの4年越しの再戦が、実現するかもしれない。
スペインもドイツも、一時期の不調から脱出した印象だ。スペインは21年開催のユーロと東京五輪を経て、世代交代を進めてきた。パウ・トーレスやペドリはもちろん、17歳のガビのような新世代のタレントが登場してくると、チームは俄然活気づく。
ドイツもタレントは豊富だ。こちらもジャマル・ムシアラやカイ・ハヴァーツらの台頭が、チームを力強く押し上げている。
スペインは4−3−3を主戦術とする。ドイツは3バックでも4バックでも戦える。4バックなら4−2−3−1にも4−3−3にも対応し、それらすべてのシステムを高い次元で表現する。
世界のトップ・オブ・トップの2か国から、どう戦ったら勝負できるだろうか。ワンサイドゲームを、回避できるだろうか。勝点を取れるだろうか。勝機を見出せるだろうか──。
勝ち上がるための現実的な対策は、「引き算の戦い」になる。自分たちの良さを発揮するよりも、相手の良さを潰すことに力を注いでいくのだ。本田圭佑の1トップで挑んだ10年南アフリカのような戦いかたである。
当時を思い返すと、複雑な思いに駆られる。ベスト16入りの歓喜に浸りつつも、物足りなさがこみあげてきたものだ。「果たしてこれが、日本サッカーの目ざす方向性なのか」といった疑問が、頭をもたげたのだった。
強豪国相手に真っ向勝負を挑んでも、勝つは難しい。それは客観的な事実だ。しかし、アジアでは「引いた相手をどう崩すのか」をテーマに戦い、W杯では「相手の攻撃をいかに抑えるか」にテーマを変えるのは、日本サッカーが目ざす道として果たして正しいのか、と思うのだ。
たとえばメキシコやアメリカは、FIFAランキング上位国が相手になると、戦いかたを変えているのか。極端に守備的なスタンスは取らないだろう。真正面から撃ち合いを挑まないとしても、自分たちの良さをぶつけることにためらいはないはずだ。
それだから、W杯で上位に食い込めないのかもしれない。しかし、グループ突破をつねにうかがえるチームとなっているのも事実だ。
メキシコは94年から7大会連続で、グループステージを突破している。7大会連続でベスト16止まりと言うこともできるが、その安定感は評価されるべきだ。
グループステージ突破には、ドイツかスペインのどちらかを倒さなければならない。あるいは、どちらのチームとも引分けなければならない。難しいタスクだが、日本らしさを捨ててほしくない。森保一監督のもとで積み上げてきたものを、恐れることなくぶつけてほしいのだ。
その結果としてグループステージ敗退に終わったとしても、得るものはある。できること、できないことが、はっきりする。自分たちに足りないものを見つけたら、あとは改善していけばいい。国際的な競技レベルは、W杯を受けた改善の繰り返しによって進歩していくと思うのだ。
カタールW杯のグループステージの組合せである。
誰もが一見して“死の組”と思うようなグループはない。ブラジル、セルビア、スイス、カメルーンが同居したグループGは、2位争いが激しそうだ。ベルギーとクロアチアが首位を争うグループFでは、1986年以来の出場となるカナダが面白い。アルフォンソ・デイビス(バイエルン・ミュンヘン)やジョンサン・デイヴィッド(リール)をはじめとして、将来性豊かで個性的なタレントが揃っている。1986年以来9大会ぶりの出場となるカナダが、ヨーロッパの強豪相手にどのような戦いを見せるのかは興味深い。
グループステージを突破すると、1位ならグループFの2位と、2位ならグループFの1位と、ラウンドオブ16で激突する。ベルギーとの4年越しの再戦が、実現するかもしれない。
スペインもドイツも、一時期の不調から脱出した印象だ。スペインは21年開催のユーロと東京五輪を経て、世代交代を進めてきた。パウ・トーレスやペドリはもちろん、17歳のガビのような新世代のタレントが登場してくると、チームは俄然活気づく。
ドイツもタレントは豊富だ。こちらもジャマル・ムシアラやカイ・ハヴァーツらの台頭が、チームを力強く押し上げている。
スペインは4−3−3を主戦術とする。ドイツは3バックでも4バックでも戦える。4バックなら4−2−3−1にも4−3−3にも対応し、それらすべてのシステムを高い次元で表現する。
世界のトップ・オブ・トップの2か国から、どう戦ったら勝負できるだろうか。ワンサイドゲームを、回避できるだろうか。勝点を取れるだろうか。勝機を見出せるだろうか──。
勝ち上がるための現実的な対策は、「引き算の戦い」になる。自分たちの良さを発揮するよりも、相手の良さを潰すことに力を注いでいくのだ。本田圭佑の1トップで挑んだ10年南アフリカのような戦いかたである。
当時を思い返すと、複雑な思いに駆られる。ベスト16入りの歓喜に浸りつつも、物足りなさがこみあげてきたものだ。「果たしてこれが、日本サッカーの目ざす方向性なのか」といった疑問が、頭をもたげたのだった。
強豪国相手に真っ向勝負を挑んでも、勝つは難しい。それは客観的な事実だ。しかし、アジアでは「引いた相手をどう崩すのか」をテーマに戦い、W杯では「相手の攻撃をいかに抑えるか」にテーマを変えるのは、日本サッカーが目ざす道として果たして正しいのか、と思うのだ。
たとえばメキシコやアメリカは、FIFAランキング上位国が相手になると、戦いかたを変えているのか。極端に守備的なスタンスは取らないだろう。真正面から撃ち合いを挑まないとしても、自分たちの良さをぶつけることにためらいはないはずだ。
それだから、W杯で上位に食い込めないのかもしれない。しかし、グループ突破をつねにうかがえるチームとなっているのも事実だ。
メキシコは94年から7大会連続で、グループステージを突破している。7大会連続でベスト16止まりと言うこともできるが、その安定感は評価されるべきだ。
グループステージ突破には、ドイツかスペインのどちらかを倒さなければならない。あるいは、どちらのチームとも引分けなければならない。難しいタスクだが、日本らしさを捨ててほしくない。森保一監督のもとで積み上げてきたものを、恐れることなくぶつけてほしいのだ。
その結果としてグループステージ敗退に終わったとしても、得るものはある。できること、できないことが、はっきりする。自分たちに足りないものを見つけたら、あとは改善していけばいい。国際的な競技レベルは、W杯を受けた改善の繰り返しによって進歩していくと思うのだ。
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している