C大阪内定を勝ち取った阪田。「若い選手が躍動して、攻撃的なイメージ。そこで僕も思い切ってチャレンジしたい」と意気込む。写真:安藤隆人

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 3月26日、東山高の高速ドリブラー阪田澪哉のセレッソ大阪内定が発表された。ちょうどこの時、東山は関東遠征に来ており、武南、昌平、横浜F・マリノスユース、正智深谷など強豪校を相手にハイレベルな戦いを見せていた。

 阪田とボランチの真田蓮司、CB新谷陸斗がU−17日本高校選抜からチームに戻り、ベストメンバーで臨むことができたこの遠征で、右サイドから何度も自慢のスピードでサイドを突破してチャンスメイクを見せた阪田。高校ラストイヤーが始まるこのタイミングでC大阪内定を決めた理由、そしてサッカーに対する想いを訊いた。

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「昨年9月に練習参加に一度行って以来、常に『見てもらっている』という気持ちを持っていましたし、自分の将来をよく考えていただけました。セレッソは若い選手が躍動して、攻撃的なイメージがありますし、そこで僕も思い切ってチャレンジしたいと強く思ったんです。

 僕の武器も、逆に欠点も見てもらっているからこそ、早い段階でセレッソ入りを決めて、注目されるなかでもっと成長して、来年プロになる自覚を持って取り組みたいと思いました」

 阪田がブレイクの時を迎えたのは昨年のことだった。地元・京都の宇治FCジュニアユースから東山にやってきた頃は、今のようなスピードアタッカータイプではなく、ボランチとしてボールを散らしたり、サイドハーフとしてゴール前でフィニッシャーとして勝負するタイプの選手だった。
 
 しかし、阪田の代は『歴代最強』と言われるほど、多くの優秀なタレントが東山に集結。同じボランチのポジションには真田という大きな存在がいた。

「蓮司のように上手くて捌けて、ロングボールも上手い選手がボランチにいるので、僕がボランチになるより、蓮司たちに使われる側になったほうがいいと思ったんです」

 サイドハーフに定着していくなかで、さらなる大きな発見があった。それは彼の最大の武器であるスピードだ。「スピードはあるほうだとは思っていましたが、そこまで武器とは思っていませんでした」と語るが、鎌田大地などを育てた福重良一監督は阪田の特徴と将来性を瞬時に見抜き、サイドでスピードをフル活用させるように1年時から試合に起用をした。

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 ゴール前に侵入してクロスや裏へのパスを受けるプレー以外に、ワイドや中盤の位置でボールを受けてから加速して、サイドをえぐってクロスや、カットインからのシュートというバリエーションを身につけた。

「徐々に僕のスピードが武器になることが分かって、大きなきっかけになったのは昨年のインターハイでした」。チームはベスト8に進むことができ、阪田も強烈なプレスバックと奪ってからのドリブルでの駆け上がりで、攻守の切り替えの中心になり、1ゴールを挙げた。

 だが、「1人で打開するシーンがあまりなかったんです」と唇を噛んだように、スピードを武器にするには、個人として相手に与える怖さが必要だと痛感した。

「これからもっと僕が上に行くには、絶対に個で打開しないといけないと思っていたので、そこの意識はさらに強まりました」

 この言葉通り、昨年度の選手権では何度も快足ドリブルでペナルティエリア内に侵入していくプレーを見せた。
 
 ボールを受けて対峙するDFを牽制しながら、一気にスピードアップするドリブルだけではなく、スペースをわざと開けておいて、そこにトップスピードで侵入してワンタッチで相手を振り切る、さらにはディフェンスライン間に息を潜めて、一瞬の隙をついてボールを引き出してからの仕掛けなど、そのバリエーションは夏よりも格段に増えた。

 この躍動が彼の評価をさらに上げた。U−18日本高校選抜の一員として大学トップクラスの選手が集結するデンソーカップチャレンジ福島大会に出場。フィジカルに勝る相手に臆することなくドリブルを仕掛けると、辞退者が出たことでJヴィレッジカップに出場するU−17日本代表にも追加招集。同年代の選手たちを相手に多彩なドリブルで何度もチャンスを作り出した。

「デンチャレではカバーとスライドのスピードが速かったので、工夫をしてプレーしました。相手は『高校生には絶対に負けたくない』という気持ちでガツガツくるので、その力を利用してタイミングを外したり、加速するタイミングを図ったりしていました。

 そのおかげでJヴィレッジカップではすごく余裕を持ってプレーできた。チームも攻撃的なサッカーを掲げていて、ボールを持ったら仕掛けろと言われているし、FWに小林俊瑛(大津高)という大きくて上手い選手がいるし、持ち味を出しやすかったと思います」

 
 着実に自分の武器を磨き上げてきたことで、将来の道は開かれた。ここからは彼が冒頭で口にした通り、“J1内定選手”として注目されるなかでのプレーとなる。

「セレッソには同い年の北野颯太選手がいます。すでにトップデビューして活躍をしているので、ああいう選手になりたいと思っていますし、負けたくないです」

 リーグ5試合に出場(うちスタメン1試合)し、U−19日本代表にも名を連ねる北野の存在は、阪田にとって大きな刺激となっており、内定が決まったことの安心感はない。

「ずっと坂元達裕(オーステンデ)選手を参考にしていました。右サイドでキレが凄いし、相手の逆を取るのが上手い。坂元選手のように持ち味を発揮できる選手になりたい。今のところはそこまでの選手ではありませんが、少しずつレベルを上げていきたいですし、カットインと縦突破を使い分けられる選手になりたいと思っています」

 内定が発表された日、遠征先の宿舎でチームメイトからサプライズのお祝いをケーキと共に受けた。
 
「サプライズはめちゃくちゃ嬉しかったです。チームメイトに支えられているなと思ったし、そういう仲間と共に日本一を取りたいなと本気で思いました。チームメイトは明るいし、みんなで戦えるチーム。

 中学時代、僕が高卒でセレッソに入れるなんて夢にも思わなかった。東山に来て僕の人生は変わったと思っているからこそ、結果で恩返しをしたいんです。もっとこのチームの中で成長できる部分はあるので、これからチーム全体で1つになってやりたい」

 新たな決意と目標を胸に、高校ラストイヤーを走り出した阪田。さらなる成長を求めながら。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)