胸骨が痛い時は整形外科へ!医師が考えられる病気や原因を徹底解説!

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胸骨が痛くて何が原因で痛いのかわからないときに、Medical DOC監修医が考えられる原因や病気・何科を受診すべきか・正しい対処方法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
楯 直晃 医師(リアラクリニック)

2013年熊本大学病院初期臨床研修医
2015年熊本大学病院総合診療専門修練医
2018年国立熊本医療センター救急集中治療部医員
2020年リアラクリニック名古屋院院長
2021年メディカル・テート株式会社CEO

救急科専門医、抗加齢医学専門医、プライマリケア認定医、内科認定医、産業医、健康スポーツ医、医療経営士、禁煙サポーター、日本産婦人科学会会員、厚労省緊急避妊研修修了、厚労省緩和ケア研修修了

「胸骨が痛い」症状で考えられる病気と対処法

胸骨が痛い症状で考えられる病気には、胸骨周りの関節炎や骨折から心臓や肺の病気や心因性のものなど多岐に渡ります。
特に心臓の病気は生死に直結するものもあり注意が必要です。それぞれの症状とその対処法についてご紹介します。

胸骨が痛い症状で考えられる原因と治し方

胸骨が痛い場合は、肋軟骨炎という病気の可能性が考えられます。

肋軟骨炎(ろくなんこつえん)

肋軟骨炎とは、肋骨と胸骨をつないでいる関節や肋骨と肋軟骨の接合部に痛みを生じる病気です。多くの場合、咳や体を動かした時に痛みがあり、押すと痛みがあります。数週間で自然に治ることが多いのですが、長引いたり再発を繰り返したりすることもあります。痛みが激しい場合は整形外科を受診しましょう。

胸骨が痛くて息苦しい症状で考えられる原因と治し方

胸骨周囲が痛くて息苦しい場合、気胸という病気の可能性があります。

気胸

気胸とは、肺に何らかの原因で穴が空いて空気が漏れてしまう病気です。若い痩せ型の男性に多く見られます。

気胸の対処法

すぐにできる対処法は、無理な姿勢や運動を控え、安静にすることです。息苦しさのある症状は危険な場合が多いので、早めに内科を受診してください。

胸骨を押すと痛い、咳や深呼吸をすると胸骨が痛い症状で考えられる原因と治し方

胸を押すと痛い、咳や深呼吸をすると胸骨が痛い場合は、肋骨骨折の可能性が疑われます。

肋骨骨折

肋骨骨折とはその名の通り肋骨が折れている状態です。肋骨骨折は胸部のけがの中で最も多く見られるもので、比較的軽い力でも骨折してしまいます。

肋骨骨折の対処法

応急処置は、患部に厚手のタオルなどをあてて軽く圧迫することで痛みを和らげる効果が期待できます。早めに整形外科を受診して治療を受けましょう。

左側・右側など胸骨の片側が痛い症状で考えられる原因と治し方

左側・右側など胸骨の片側が痛い場合は、帯状疱疹の可能性が考えられます。

帯状疱疹(たいじょうほうしん)

帯状疱疹とは、子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが免疫力の低下などにより再活性化して痛みや発疹を引き起こす病気です。主に体の左右どちらかに帯状の赤い発疹が現れます。自然に治る場合もありますが、治療開始が遅れたり、放置されると頭痛や高熱などの症状が現れたり、痛みの後遺症が残ることもあります。

帯状疱疹の対処法

発疹が出てから72時間以内に抗ウイルス薬を飲み始めることが望ましいと言われていますので、疑わしい場合は早く皮膚科を受診しましょう。

胸骨の上側または下側が痛い症状で考えられる原因と治し方

胸や背中に激痛が走る場合は、大動脈解離が疑われます。

大動脈解離

大動脈とは心臓から送り出された血液が最初に通る人体の中で最も太い血管で、胸のあたりに位置しています。その大動脈の血管の膜が何らかの原因で裂けてしまうのが大動脈解離です。動脈硬化や高血圧、喫煙、ストレスなどが発症の原因と考えられています。

大動脈解離の対処法

致命的な病気であることから、一刻も早く医療機関を受診する必要がありますので、休日夜間問わず、救急車を呼んで救急外来を受診しましょう。

胸骨の中心・真ん中が痛い症状で考えられる原因と治し方

胸骨の真ん中付近が痛い場合は、胸肋関節炎の可能性があります。

胸肋関節炎(きょうろくかんせつえん)

胸肋関節とは、胸骨と肋骨をつなぐ関節で、その部分が何らかの原因で炎症を起こすのが胸肋関節炎です。

胸肋関節炎の対処法

治療には消炎鎮痛剤の湿布や内服薬などを使用します。数週間で自然に治癒することが多いのですが、長引く場合は他の病気の可能性もあるため内科や整形外科を受診しましょう。

寝起きに胸骨が痛む症状で考えられる原因と治し方

寝起きに胸が痛む場合は、狭心症などの可能性があります。

狭心症

狭心症は心臓に栄養や酸素を送る冠動脈が狭くなり心臓が酸素不足になりかけている病気です。痛みは数分から20分程度持続することが多いです。

狭心症の対処法

朝は体を動かし始めるため交感神経が働きます。その働きが血管を収縮させ血圧が上がり、狭心症が起こりやすくなると考えられています。
安静にして、心臓に負担がかからないようにしましょう。ゆっくり起き、お水を飲むといいでしょう。早めに内科を受診しましょう。
なお、胸の痛みが20分以上続く場合は、心筋梗塞という病気である可能性が高くなります。心筋梗塞は冠動脈が詰まり、心臓が酸素不足に陥り壊死が始まります。命に関わりますのですぐに救急車を呼びましょう。

胸骨が痛くストレスを感じる症状で考えられる原因と治し方

胸骨が痛く、ストレスを感じる場合は、過換気症候群の可能性があります。

過換気症候群(かかんきしょうこうぐん)

過換気症候群とは、精神的不安や極度の緊張などにより過呼吸の状態になる病気です。胸が痛い、息苦しい、めまいや動悸がするなどの症状が現れます。比較的若い女性に多く見られます。

過換気症候群の対処法

すぐにできる対処法は、意識的に呼吸を遅くする、呼吸を止めることです。数時間で症状は改善することが多いのですが、心配な場合は呼吸器内科、心療内科を受診しましょう。うつ病やパニック障害などがある場合は、その治療が過換気症候群の発症予防に効果的です。

胸骨が痛くポキッと音が鳴る症状で考えられる原因と治し方

胸骨が痛くポキっと音がなるのは、関節の周りを保護している関節液の中に気体が生じ、それが弾ける音であると推察されます。この音はクラッキングとも呼ばれます。
このクラッキングは、関節内に大きなストレスがかかるため、軟骨や骨を傷つける可能性もありますので、できるだけ避けるよう気をつけましょう。痛みが激しい、症状が良くならない場合は整形外科を受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「胸骨が痛い」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

突然の激しい胸の痛みがある場合は、一刻も早く救急車を呼びましょう。

前胸部や、胸骨の後ろのあたりが急に激しく痛む、圧迫感があるなどがこの症状の特徴です。このような場合は心筋梗塞の可能性があります。
心筋梗塞は心臓に酸素や栄養を送る冠動脈が閉塞して心臓が酸素不足になる病気です。生死に関わる病気ですので、一刻も早く救急車を呼びましょう。

「胸骨が痛い」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「胸骨が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

肋間神経痛 (ろっかんしんけいつう)

肋間神経痛とは、肋骨に沿っている神経である肋間神経が痛む症状をさします。肋間神経痛の原因はさまざまで、変形性脊椎症や胸椎椎間板ヘルニア、脊椎腫瘍などの脊椎由来のもの、肋骨の骨折や肋骨の腫瘍など、帯状疱疹、胸部手術の影響などが挙げられます。
上半身の右側か左側のみに起こることがほとんどで、肋骨に沿ってチクチク、ズキズキするような比較的鋭い痛みが生じます。

肋間神経痛の対処法

消炎鎮痛薬や神経障害性疼痛専門薬の内服、局所麻酔やステロイド注射などの治療法があります。発症の原因を探ることが大切ですので、まずは内科や整形外科を受診しましょう。

胸鎖関節痛(きょうさかんせつつう)

胸鎖関節とは、鎖骨と胸骨をつなぐ関節で、鎖骨の真ん中あたりに位置しています。胸鎖関節炎の原因には、スポーツなどで痛める場合もありますが、掌蹠膿疱症という病気の可能性も考えられます。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

掌蹠膿疱症とは手のひらや足の裏に小さな膿が多くできる皮膚の病気ですが、関節の炎症を伴うことがあり、それが胸鎖関節に起こることが多いです。痛みや骨が盛り上がってくるなどの症状があります。
掌蹠膿疱症は副鼻腔炎(ふくびくうえん)や扁桃腺炎(へんとうせんえん)、歯槽膿漏(しそうのうろう)などを併発することもあり、これらの一連の症状はSAPHO(サッフォー)症候群として近年研究が進んでいます。まずは整形外科を受診して相談しましょう。

ティーツェ症候群

ティーツェ症候群とは、肋骨と胸骨の間にある軟骨部に痛みと腫れが生じる病気です。くしゃみや咳、深呼吸、胸を捻る動きで痛みが増す傾向があります。自然に治ることが多いですが、中には長引いて慢性化することもあります。症状が長引く場合は整形外科を受診しましょう。

肋軟骨炎(ろくなんこつえん)

肋軟骨炎とは、肋骨と胸骨が接続する部分にある軟骨部分に炎症が起き痛みを引き起こす病気です。原因は不明で、靭帯へのストレスや炎症と関係があると考えられています。
押すと痛みが生じる、咳やくしゃみや深呼吸で痛みが増すのが特徴です。鎮痛剤などで痛みを和らげる治療法などがあります。緊急性は高くありませんが、症状が続く、痛みが激しい場合は整形外科を受診しましょう。

「胸骨が痛い」症状の正しい対処法・市販薬の使用方法

市販薬は、病院にすぐに行けない場合に痛みを和らげる目的で使用するのはいいでしょう。肋軟骨炎などの関節の炎症が原因の場合は、消炎鎮痛剤などが効果的と考えられます。

「胸骨が痛い」症状におすすめの市販薬

市販されている消炎鎮痛薬には、ロキソプロフェンの成分を含むロキソニンSなどがあります。ロキソプロフェンより鎮痛効果は穏やかですが、胃腸に優しい鎮痛薬の成分として、アセトアミノフェンがあります。ラックル速溶錠などにアセトアミノフェンが含まれています。

「胸骨が痛い」症状の対処法

早く治したい場合は、安静にして休養をしっかりとることや、栄養バランスの良い食事をとることも重要です。
猫背や不自然な姿勢は、骨格の歪みを引き起こして神経を圧迫することで、痛みのきっかけになります。肩の力を抜いておへそのあたりに力を入れお腹を少しへこませましょう。
5日間市販薬を服用しても痛みが治らない場合は症状が重度であるか、原因が違う可能性がありますので、服用をやめて医療機関を受診しましょう。
市販薬は症状を和らげる効果がありますが、病気を完治することはできません。症状が和らいでも、病気は進行していってしまう場合もあるので、医療機関を受診することをお勧めします。

「胸骨が痛い」症状についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「胸骨が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胸骨が痛いのは姿勢が原因ということはありますか?

楯 直晃 医師

猫背や前屈みや反らしすぎなど不自然な姿勢を続けると肋骨が歪んで神経を圧迫し、痛みを引き起こすことが知られています。日頃から正しい姿勢を心がけましょう。

くしゃみをすると胸骨が痛いのですが、病院に行くべきでしょうか?

楯 直晃 医師

くしゃみをすると胸骨が痛む病気には、肋骨骨折、肋軟骨炎などがあります。肋骨骨折は折れていても気づかれにくく、症状が悪化する可能性もあります。一度整形外科を受診した方がいいでしょう。

生理前に胸骨が痛いときの原因と対処法を教えて下さい。

楯 直晃 医師

生理前は水分を体にため込みやすくする働きのある女性ホルモンが多く分泌されているタイミングであり、胸の中にも水分が蓄えられ張りや痛みが生じやすい時期です。カルシウムやビタミンB6らが不足すると生理前の不快症状が出やすいとの報告がありますので、食事バランスに気をつけてみましょう。

まとめ

胸骨が痛む症状の疾患には、肋骨骨折や肋間神経痛など骨や神経の病気の場合と、心臓や肺や食道の病気の場合、帯状疱疹のように皮膚に症状が現れる病気や、精神疾患など非常に多岐にわたります。特に心筋梗塞や大動脈解離などは生死に関わるため救急車を呼ぶ必要のある緊急性の高い病気です。これらの病気の可能性を除外する意味で胸の痛みは決して放置してはいけない症状と言えます。

「胸骨が痛い」で考えられる病気と特徴

「胸骨が痛い」から医師が考えられる病気は38個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

整形外科の病気

肋骨骨折

胸肋関節炎

肋軟骨炎

ティーツェ病

肋間神経痛

頸椎椎間板ヘルニア

脊椎腫瘍

変形性脊椎症

脊椎炎

肋間筋痙攣

脊椎圧迫骨折

SAPHO症候群

ティーツェ症候群

内科の病気

心筋梗塞

心膜炎

狭心症

胸部大動脈瘤

大動脈解離

肺塞栓

肺高血圧

気管支炎

肺炎胸膜炎

気胸

膿胸

縦隔炎

逆流性食道炎

食道痙攣

胃十二指腸潰瘍

胆石症

胆嚢炎

膵炎

乳腺外科の病気

乳腺炎

皮膚科の病気

帯状疱疹

掌蹠膿疱症

精神科の病気

パニック障害

心臓神経症

過換気症候群
胸部の症状は骨や神経、皮膚の病気だけではなく、内臓疾患も鑑別の候補に挙がるため原因は多岐に渡ります。病歴や既往歴などによって鑑別の候補は変わります。

「胸骨が痛い」と関連のある症状

「胸骨が痛い」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

胸が痛い

押すと胸が痛い

息苦しい

胸焼けがする


「胸骨が痛い」症状の他に、これらの症状がある場合「肋軟骨炎」「気胸」「肋骨骨折」「帯状疱疹」「心筋梗塞」「過換気症候群」などの疾患の可能性が考えられます。
複数の症状が見られる場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。【参考文献】
・肋骨骨折(日本骨折治療学会)
・大動脈解離の症状は(国立循環器病研究センター)
・過換気症候群(日本呼吸器学会)