医師が「腕が痛い」症状の原因と対処法・市販薬を徹底解説!

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腕が痛くて日常生活に支障をきたすときに、Medical DOC監修医が腕の痛みで考えられる病気や対処法・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状や痛みが続く場合は、迷わず病院を受診してください。

監修医師:
楯 直晃 医師(リアラクリニック)

2013年熊本大学病院初期臨床研修医
2015年熊本大学病院総合診療専門修練医
2018年国立熊本医療センター救急集中治療部医員
2020年リアラクリニック名古屋院院長
2021年メディカル・テート株式会社CEO

救急科専門医、抗加齢医学専門医、プライマリケア認定医、内科認定医、産業医、健康スポーツ医、医療経営士、禁煙サポーター、日本産婦人科学会会員、厚労省緊急避妊研修修了、厚労省緩和ケア研修修了

「腕が痛い」症状で考えられる病気と対処法

腕が痛い症状で考えられる病気は、腕の筋肉や腱や軟骨がスポーツや使いすぎにより炎症を起こしている場合や、首から腕にかけて走る神経が圧迫されたり障害されている(神経障害が起きている)場合、骨折の可能性もあります。症状から考えられる病気とその対処法についてお伝えします。

腕の肘から下が痛い症状で考えられる原因と治し方

腕の肘から下が痛い、しびれる場合、肘部管症候群との可能性が考えられます。

肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)

肘部管症候群は、肘の内側の神経が慢性的に圧迫されたり引っ張られることで発症します。肘部管症候群が起きる原因には、加齢による肘の変形、子供の時の骨折による肘の変形、野球や柔道などのスポーツなどが考えられます。症状が進行すると手の筋肉が痩せてきたり、小指と薬指に変形が起きたりします。

肘部管症候群の対処法

自分でできる対処法は、なるべく肘を曲げないで安静にして生活することです。消炎鎮痛剤やビタミンB12などの内服が有効なこともあります。症状が進行していると、手術が必要な場合もあります。神経を圧迫する骨を削ったり、腫瘤の切除などの手術などが挙げられます。疑わしい場合は早めに整形外科を受診しましょう。

肘から上・二の腕が痛い症状で考えられる原因と治し方

肘から上、二の腕が痛い場合、上腕二頭筋腱断裂の可能性が考えられます。

上腕二頭筋・上腕二頭筋腱断裂

上腕二頭筋とは「力こぶ」とも呼ばれる筋肉で、肘から肩にかけてついていて、肘を曲げたり、腕を回す働きがあります。加齢やスポーツなどの負荷が原因で、この上腕二頭筋の腱が断裂してしまうことで痛みや脱力感などの症状が現れます。上腕二頭筋腱断裂が起きても、数日で症状が収まることが多く、また他の腱や筋肉があるため日常生活には支障がないことが多いです。ただし、断裂した腱は自然に治ることがありません。片方の腱が断裂していると、左右で肘を曲げる力に差ができるため、仕事やスポーツで左右の筋力のバランスが必要な場合は手術療法も検討されます。痛みが続く、痛みが激しい場合は整形外科を受診しましょう。

腕が痛くてだるい症状で考えられる原因と治し方

腕が痛くてだるい場合は、頸肩椀症候群の可能性があります。

頸肩椀症候群(けいけんわんしょうこうぐん)

頸肩腕症候群とは、神経や血管が圧迫されたり筋肉の負荷が原因で、首回りや肩、腕、手首などに痛みやだるさ、こりなどが現れる病気です。

頸肩椀症候群の対処法

蒸しタオルなどで肩を温めて筋肉の血行を良くするなどの対処法が挙げられます。しかし、症状が強い場合は整形外科を受診しましょう。

スマホを操作していると腕の肘から下が痛い症状で考えられる原因と治し方

スマホやパソコンのキーボード・マウスを操作していると肘から下が痛む、手首が痛む場合、ドケルバン病の可能性が考えられます。

ドケルバン病

ドケルバン病とは、手の親指とつながる腱が腱鞘の部分で炎症を起こして、痛みや腫れを引き起こす病気です。親指を動かす働きをする腱は手首の親指側あたりにある腱鞘と呼ばれるトンネル状の組織を通ります。親指を使用しすぎると、腱鞘に炎症が起きるのです。

ドケルバン病の対処法

対処法は、安静にして刺激を減らすことです。シップなどの外用鎮痛消炎薬を貼るのもいいでしょう。痛みが2週間以上続く、痛みの範囲が広がっている、痛みが強い場合は整形外科を受診しましょう。

腕が痛くてズキズキする症状で考えられる原因と治し方

腕が痛くてズキズキする場合は骨折の可能性があります。
腕の部分で多く見られるのが、上腕骨顆上骨折です。肘の部分に激しい痛みと腫れを生じ、痛くて腕が動かせなくなり、手や指がしびれることもあります。子供に多く見られ、転んで手をついたり、鉄棒などから転落して肘が反ることで骨折してしまいます。骨折が疑われる場合は、無理に動かさず、整形外科を受診しましょう。

腕が痛くてしびれる症状で考えられる原因と治し方

腕が痛くてしびれる、肩や肩甲骨周囲が痛む場合、胸郭出口症候群の可能性が考えられます。

胸郭出口症候群 (きょうかくでぐちしょうこうぐん)

胸郭出口症候群とは、鎖骨の下あたりにある神経や血管が締め付けられたり、圧迫されることにより神経障害や血流障害を起こす病気です。なで肩の女性や、重いものを持ち運ぶことが多い人に多く見られます。

胸郭出口症候群の対処法

自分でできる対処法は、腕をあげる動作や重いものを持ち上げるような運動は避け、安静時も肩を少しすくめたような姿勢をとることです。主な診療科は整形外科です。

テニスやプランクをして腕が痛い症状で考えられる原因と治し方

テニス愛好家に多く見られ、物を掴んで持ち上げる動作やタオルを絞る動作をすると腕に痛みが生じる症状が当てはまります。このような場合、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の可能性があります。

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

テニス肘は、テニスをしている人に生じやすく、中年期以降によく見られる病気で、年齢とともに肘の腱が痛むことで症状が現れます。

テニス肘の対処法

対処法は、手首や指のストレッチをこまめに行うこと、スポーツや手を使う作業を控え安静にし、湿布などの消炎鎮痛薬の外用などです。症状がよくならない場合は整形外科を受診しましょう。

予防接種や点滴の後に腕が痛い症状で考えられる原因と治し方

予防接種や点滴の後に腕が痛くなることがあります。新型コロナワクチンの予防接種では、50%以上の人に接種部位の痛みが現れると言われています。これらは免疫反応の一種で、接種後数日以内に回復することが多いです。痛みの症状に対してアセトアミノフェンなどの抗炎症薬の内服が効果的な場合もあります。しかし症状が1週間以上経っても改善しない場合は医療機関で相談しても良いでしょう。予防接種や点滴の針が神経に触れると、しびれや痛みを引き起こす神経障害が生じることがあります。

すぐに病院へ行くべき「腕が痛い」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

腕の痛み・筋肉痛に加え筋力低下や赤褐色尿などの随伴症状が見られた場合は、内科へ

筋肉痛、筋力低下、赤や褐色の尿が出る場合は、横紋筋融解症の可能性が考えられます。

横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)

横紋筋融解症とは横紋筋という筋肉が何らかの理由により分解されることにより血液中に様々な物質が放出され急性腎機能障害など重篤な合併症をきたす疾患です。横紋筋は横縞模様のある筋肉で、体を動かしたり姿勢を保つ役割を担っています。横紋筋融解症が発症する原因は、外傷や薬物摂取後、感染症罹患後など多岐に渡ります。特に薬の服用のあとに筋肉痛や脱力感などがある場合は、すぐに内科を受診してください。

日常生活で「腕が痛い」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「腕が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

肩関節周囲炎

肩関節周囲炎とは、肩関節が痛み関節の動きが悪くなる病気です。中年以降に多く見られ、関節を構成する骨や靭帯、腱などが老化などにより肩関節の周囲に炎症を起こします。

肩関節周囲炎の対処法

対処法は、痛みが強い急性期には、三角巾やアームスリング(腕用サポーター)などで固定し安静にして、消炎鎮痛剤を内服するなどの方法が挙げられます。痛みが落ち着いてきたら患部を温めたり、肩を動かす運動や筋力強化を行います。これらの方法でも症状が良くならない場合は手術が勧められることもあります。
肩関節周囲炎は、自然に治ることもありますが、放置すると関節が癒着して動かなくなることもあります。症状が良くならない場合は整形外科を受診しましょう。

頚椎後縦靱帯骨化症(けいついこうじゅうじんたいこつかしょう)

頸椎後縦靭帯骨化症とは、背骨の中を走る後縦靭帯が骨化してしまい脊髄や神経を圧迫してしびれや痛みを引き起こす病気です。原因は不明ですが、ホルモン異常やカルシウム代謝異常、糖尿病、遺伝、慢性外傷などと関連があると考えられています。

頚椎後縦靱帯骨化症の対処法

自分で対処できないので疑わしい場合は整形外科を受診しましょう。治療法は、大きく保存的療法と手術療法の2つがあります。保存的療法とは保持や安静を目的に装具の装着や薬物投与を行うことです。保存的療法で効果が得られない場合は手術療法が行われます。

スポーツ障害による「腕が痛い」症状が特徴的な病気・疾患

テニス肘

テニス肘は、年齢とともに手首を伸ばす働きのある肘の腱が痛むことで、肘の外側から前腕にかけて痛みが生じる病気です。物を掴んで持ち上げる動作やタオルを絞る動作をすると症状が現れることが多いです。

テニス肘の対処法

対処法は、スポーツや手を使う作業を控えて安静にする、湿布などを使用する、手首や指のストレッチをこまめに行うことなどが挙げられます。症状が良くならない場合は整形外科を受診しましょう。

野球肘

野球肘は、繰り返しボールを投げることによって肘に負荷がかかり、骨や軟骨、靭帯、腱などが痛む病気です。投球時や投球後に肘に痛みが生じたり、肘の伸びや曲がりが悪くなる、急に肘が動かせなくなるなどの症状が現れます。

野球肘の対処法

対処法は、投球を中止して肘の安静を図ることが重要です。症状が悪化すると手術療法を勧められることもあります。痛みを我慢して投球を続けると症状が悪化する可能性があるため、痛みがある場合は安静にし、良くならない場合は整形外科を受診しましょう。

インピンジメント症候群

インピンジメント症候群とは、肩を上げていくときある角度で痛みや引っかかりがある症状の総称です。インピンジメントとは「衝突」の意味があり、肩関節を動かす際に他の骨や筋肉との衝突が生じ、痛みが生じる病気です。拳上ができない、こわばり、筋力低下、夜間痛などの症状を伴うこともあります。野球などの投球動作や加齢などが原因と考えられています。投球動作など痛みを引き起こす動作を避け安静にすることが大切です。痛みが改善しない場合は整形外科を受診しましょう。

「腕の痛み」を和らげる、予防するストレッチを紹介!

腕の痛みを和らげるストレッチは病気によって適切な方法が変わります。今回は中年以降に多い、肩関節周囲炎(五十肩)について説明します。
肩関節周囲炎が原因の場合、振り子運動がストレッチ方法として挙げられます。必要なアイテムは、1キロくらいの重りです。水の入ったペットボトルなどを使ってもいいでしょう。テーブルに痛くない方の手をつき、痛む側の手に1キロくらいの重りを持ち、前後、左右、円を描く動きを10往復を1セットとしてそれぞれ行いましょう。ストレッチの前にお風呂に入ったり、蒸しタオルで温めてから行うと効果的です。継続期間は個人差がありますが、振り子運動とセルフストレッチを行った結果、平均14ヶ月で痛みを伴わず日常生活が可能になったという報告があります。

「腕が痛い」ときに飲んでも良い市販薬は?

腕が痛い場合、症状がひどくなく、原因がわかっていれば市販薬が有効であることもあります。特にすぐ医療機関を受診できない場合、市販の消炎鎮痛剤を使用することは可能です。
医療機関で処方されることもあるロキソプロフェンを含有する内服薬(ロキソニンSプラス)、貼り薬(ロキソニンSテープ)、塗り薬(ロキソニンSゲル)なども市販されています。飲み薬は胃に負担があり、湿布や塗り薬はかぶれることがあるため状況に応じて使い分けてください。

「腕が痛い」症状についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「腕が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

腕の痛みが収まったり再発したりする場合、原因はどのようなことが考えられますか?

楯 直晃 医師

加齢や過度の負荷により組織の再生が不完全な状態で同様の負荷をかけると症状が再発する場合があります。また市販薬はあくまで対症療法であり、根本的に痛みを生じる疾患が完治していない場合もあります。再発を繰り返す場合は一度整形外科で相談してください。

腕の痛みはアイシングや湿布で治せますか?

楯 直晃 医師

症状が軽度の場合、アイシングや湿布が有効な場合があります。ただし痛みが持続する場合は整形外科を受診しましょう。

腕が痛い場合、肩や首、頭の病気、またはがんが原因ということはありますか?

楯 直晃 医師

筋肉や骨の組織からも、理論上、がん(悪性腫瘍)は発生します。ご心配な場合は医療機関を受診しましょう。

朝、寝起きに腕が痛くてしびれることがありますが病院にかかるべきですか?

楯 直晃 医師

時間経過とともに増悪傾向があるか、痛みが強い場合は医療機関の受診をオススメします。

子供が腕を痛がっている場合、何科にかかったら良いですか?

楯 直晃 医師

まずは整形外科の受診をお願いします。肘の関節が抜けかかる肘内障、肘関節周囲の骨折などは子どもによく見られます。

まとめ

腕が痛いことは直接命に関わることは少ないかもしれませんが生活の質に関わることであり、油断せず症状が治まらない時は早めに整形外科を受診してください。

「腕が痛い」で考えられる病気と特徴

「腕が痛い」から医師が考えられる病気は35個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

整形外科の病気

肩関節周囲炎

肘部管症候群

胸郭出口症候群

手根管症候群

頸部神経根症

頚椎症

椎間板ヘルニア

腫瘍

神経障害性疼痛

上腕骨骨折

橈骨遠位端骨折

線維筋痛症

肘関節脱臼

肘内障

頚椎後縦靱帯骨化症

複合性所疼痛症候群

肘部管症候群

上腕骨顆上骨折

ハネムーン症候群

上腕二頭筋腱断裂

頸肩腕障害

急性動脈閉塞症

多発性筋炎・皮膚筋炎

腱板断裂

上腕骨外側上顆炎

肘内側々副靭帯性裂離骨折

内側上顆骨端症

内側側副靭帯損傷

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎

インピンジメント症候群

腱板損傷

ルーズショルダー

肩甲上神経損傷

野球肘

内科の病気

横紋筋融解症

怪我による腕の痛みが多いのですが、どのような怪我であったかによって考えられる病気も異なるため、病歴などを詳しく伝えることが望ましいでしょう。

「腕が痛い」と関連のある症状

「腕が痛い」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

症状の特徴

腕のしびれ手が痺れる肩が痛い首が痛い肩甲骨の痛み

肘が痛い

肩が上がらない


「腕が痛い」症状の他に、これらの症状がある場合「肘部管症候群」「テニス肘」「上腕骨顆上骨折」「横紋筋融解症」などの疾患の可能性が考えられます。
複数の症状が見られる場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。【参考文献】
・肘部管症候群(日本脊髄外科学会)
・ドケルバン病(日本手外科学会)
・上腕骨上骨折(日本整形外科学会)