ロシアが国営メディアを用いて流布するプロパガンダに対抗するために、ハッカーがロシア人に向けてウクライナ侵攻に関するメールを無作為に送信することができるウェブサイトを開発しました。

Using a New Cyber Tool, Westerners Have Been Texting Russians About the War in Ukraine - WSJ

https://www.wsj.com/articles/using-a-new-cyber-tool-westerners-have-been-texting-russians-about-the-war-in-ukraine-11647100803

ロシア人に向けて無作為にメールを送信することができるというウェブサイトを開発したのは、「Squad303」というハッカーグループ。Squad303が作成したウェブサイトは、ポーランドのプログラマーがロシア企業から取得した、ロシア人の電話番号約2000万件とメールアドレス約1億4000万件宛てにメールを送信するというものです。

Send a message to randomly selected Russian! Squad303

ウェブサイトが開設されたのは2022年3月6日のことで、それ以降、世界中のインターネットユーザーがこのサイトを利用してロシア人宛てに多くのメッセージを送信しているとのこと。これまで送信されたメールの件数は数百万件を超え、メールには欧米諸国のメディアが報じるウクライナの惨状を伝えるための動画や写真も添付されているそうです。

Squad303がこのウェブサイトを作成したのは、ロシアが国内で行う情報統制に対抗するためです。ロシアは2022年2月24日にウクライナへの本格的な侵攻を開始。批判的な報道を行う独立系メディアを3月に入って遮断し、情報統制を行っています。また、ロシアではTwitterやFacebookといったSNSにアクセス制限が課されており、新しく「ウクライナ侵攻に関するフェイクニュースを報じた者は15年の禁固刑に処する」という法律ができたことで、ロシア人がウクライナ侵攻に関する正しい情報を入手することはますます困難になっています。

ロシア当局がTwitterやFacebookへのアクセスを制限する - GIGAZINE

ポーランドを拠点に活動するSquad303は、ウォール・ストリート・ジャーナルに対して「我々の目的はプーチン大統領によるデジタル検閲を突破し、ロシアの人々に向けてロシア政府がウクライナで行っている現実を伝えることです」と語っています。Squad303はこのウェブサイトを用いた取り組みを、冷戦時代に複数言語でのラジオを放送することで「事実の情報と思想を広めることにより、民主的な価値と制度を促進する」ことを目的としたラジオ・フリー・ヨーロッパになぞらえています。

アメリカ・オレゴン州ポートランドでトラックを販売しているタイタン・クロフォード氏は、Squad303のウェブサイトを使ってロシア人に向けてウクライナ侵攻に関する正しい情報を伝えているユーザーのひとり。クロフォード氏はTwitter上でロシア人とのやり取りを公開しており、「2000件の携帯電話番号にメッセージを送信した」と語っています。ほとんどのロシア人は返信をくれず、数人は罵詈雑言を返してきて、15人ほどと会話することができたとのこと。

クロフォード氏はSquad303のウェブサイトを使ってロシア人とコミュニケーションを図る理由について、「ロシア人が立ち上がり、自国政府の侵略を阻止するために現状を知る手助けをすることが目的です」「私はずっとアメリカで暮らしているので、言論の自由がないという概念をたった今理解しています。ウクライナの人々に同情していましたが、今はロシアの人々にも同情しています。なぜなら彼らは政府に洗脳されているからです」と語っています。

ウォール・ストリート・ジャーナルも複数のロシア人向けにメッセージを送信しており、ロシア人法学部生から「戦争に反対ではあるものの、政府からの報復を考えるとその意思を表明することは難しい」というコメントを得ています。この学生は「私の将来を危険にさらせというのでしょうか?プーチン大統領がウクライナで人を殺していることは知っていますが、それは私のせいではありませんし、私は誰も殺していませんし、どんな戦争も支持していません」と語ったそうです。

ラジオ・フリー・ヨーロッパの元社長で、現在はコロンビア大学で働くトーマス・ケント氏は、Squad303が開発したウェブサイトのようなツールを用いて西側諸国がロシア人に向けて情報を発信していると指摘。「もしもロシア当局が国民に対して『自分たちの権力を弱体化させることはできない』と考えているなら、これほど徹底的にメディアを検閲することはないでしょう」と語り、厳しい情報統制の理由は国民の反発が国家の体制を揺るがしかねないからであると指摘しています。