ぺこぱのような「人を傷つけないお笑い」が主流に

 3月6日に開催された『R-1グランプリ』で、お見送り芸人しんいちが優勝を果たした。出場資格ギリギリの芸歴10年めというラストイヤーで、見事3199人の頂点を勝ち取った。

 しんいちの1本めのネタは、ギターを片手に「僕の好きなもの」を歌いあげるもの。「行きつけの店がつぶれた先輩好き」「受験落ちたやつにもう一度確認してみろって言うの好き」「顔出ししたらファンが減った声優さん好き」などと、いくつもの “毒ネタ” を吐き出した。

 審査員のバカリズムは「本当に悪意のセンスが素晴らしい」と絶賛。一方、ネットでは、しんいちの芸風に賛否の声が集まった。

《お見送り芸人しんいちは優勝しなくても売れてほしい。笑った》

《お見送り芸人しんいち本当に嬉しい。ずっと好きだったし、今回のネタも涙出るくらい笑ったなぁ》

《みんなが少し思ってるけど言葉にしてない感情に気付いて言葉にできる秀逸さが凄いし、最後の涙に感動しました》

 否定派は、

《お見送り芸人しんいち、シンプルに心象が悪い》

《お見送り芸人しんいち嫌いやわ ネタとか人バカにしてるようにしか思えんし面白くない》

《頑張ってる人をいじってるのはあんま面白くないかなぁ。》

 といった具合だ。

「今回のR-1に対する反応を見ていると、ここ数年ずっと続いている、“人を傷つけない笑い” の風潮を色濃く感じます。

 2019年の『M-1グランプリ』では、決勝に残ったミルクボーイやぺこぱが見せた、相手を否定しない前向きなツッコミが『時代に合っている』と称賛され、トレンドとなりました。

 しかし一方で、強くて毒のあるディスりネタが好きだった人たちからは、『面白くない、物足りない』といった批判が起こりました。

 お笑い好きの間では、よく議論を呼んでいる話題ですが、だからこそ、今回しんいちさんが披露した “毒ネタ” に賛否それぞれの声がたくさん集まったのでしょう」(芸能ジャーナリスト)

 容姿いじりや偏見を助長するような発言が批判を浴びるなど、「お笑いは過渡期にある」と言われる昨今。今後どのような芸人が生き残っていくのか、注目が集まる。