[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

写真拡大 (全3枚)

PEACE!!!!!!!!!!!!!!!

戦火のなかで始まった北京パラリンピック。そもそもがコロナ禍での開催でもあり、楽しい祝祭ムードにはなりづらい状況でしたが、より一層悲痛な、沈痛な、重苦しいものとなりました。自らも約束したはずのオリンピック休戦を破って、隣国ウクライナに侵攻したロシアに失望しました。改めて強く非難します。

迎えた開会式、そこにはロシアとベラルーシの選手団の姿はありませんでした。「当然だ」とする声が圧倒的なのだろうと思います。両国選手について一度は「個人」としての参加を認めたIPCが、それを一晩で撤回することになったのは、それだけ強い声が寄せられたのだろうと思います。「当然だ」と。致し方ないことだと思います。


【外国旗】ウクライナ国旗(テトロントロピカル) サイズ:50×75cm【領収書発行】
価格:4500円(税込、送料別) (2022/3/5時点)



IPCパーソンズ会長は苦渋の決断にあたり、相当に多くの国・地域・選手からボイコットを示唆する声があったことを明かしています。同時にロシア・ベラルーシの選手団に対して「あなた方は政府の被害者だ」「ここに来たアスリートは侵略国家で生まれたが、兵士でも侵略者でもない」と同情を寄せました。そこには単なる非難を示すだけではなく、理念を実現できなかったリーダーとして苦悶する姿がありました。

戦争はすべてに連鎖し、政治家や軍人だけでなく、無辜の市民を巻き込んで悲劇を生み出していきます。スポーツに励む選手たちからも命を落とした人がいると聞きます。その怒りがロシア・ベラルーシに向かうのは当然です。一緒に試合などできるか。何故アイツらがのうのうと大会に参加しているのだ。アイツらが出るのなら我々がボイコットする。当然の意志として理解できます。

ただ、そうした怒りと憎しみがあるからこそ、あえて綺麗事を貫かないといけないという意志もまた存在したのだろうと思います。スポーツと政治を混同してはいけない、五輪パラリンピックは平和の祭典、そういう理念が綺麗事としてバッサリと切り捨てられる今だからこそ、です。

スポーツも政治と無縁のはずがありません。国威発揚に利用され、その代わり栄誉栄華を約束され、断ち切れない関連があります。すべては綺麗事である、そうかもしれない。それでもどこかにつながりが、認め合う機会が、共に生きる機会が残されていなければ、分断は加速していくでしょう。憎しみ合い、戦い合い、政治でも経済でも敵対していくなかで、相手のすべてを否定していくようになるのは必然です。先鋭化すれば「敵性」のものをすべて、その国の出身である人や、その国の商品や、その国の言葉を排除していくような動きとなるでしょう。極論すれば「滅ぼせ」と。

そのとき最後のほうまで残るのが文化であり、エンターテインメントであろうと思います。何の役にも立たず、ただし直接心を打つもの。憎しみのなかでも美しさや素晴らしさを感じられるもの。チャイコフスキーの音楽を素晴らしいと感じることは、ロシアへの怒りや非難と相反するものではありません。戦火のなか、憎しみのなかでも、何かそういうものが残って、完全に互いを断ち切ることなくつながっていることが、平和への希望だろうと思うのです。

スポーツと政治は無縁ではいられないけれど、「何か混同されないものを残さなければ」すべてが断ち切られてしまうから。実際に戦争が行なわれているなかで「平和の祭典」などと称するのは鼻白む話かもしれないけれど、戦争のなかでさえも人と人とがつながる機会がなければすべてが断ち切られてしまうから。五輪パラリンピックは、そういう機会に成り得るものだから。すべてを断ち切らずに留めて欲しかったと思いますし、そうできなかったことについてパーソンズ会長は苦悶したのだろうと思います。

ちょうどトロッコ問題のように、どこかの国の政府の被害者を断ち切らないようにすると、ほかの形での被害者が生まれてしまい、それが相当に多いとなったとき、選べるのはこの形しかなかったのだろうと思います。大会のなかにまで戦火が広がることが不可避の状況で、選べるのはこの形しかなかったのだと思います。この大会を目指したすべての選手を救うことは不可能なほど分断が加速してしまっている今は、こうするしかなかったのだろうと思います。決して国際世論を読み間違えたわけではありません。理念を実現できない無力さを感じているのだろうと思います。

だからこそ、この開会式でパーソンズ会長が何を語るのか、見守っていました。過去の大会を振り返る演出でソチ五輪のときだけ沈黙した実況のように、国連での非難決議を棄権した開催国中国のように、それに触れることなく大会の喜びだけを語った組織委員会会長のように、沈黙するのか。いや、そんなはずがありませんでした。パラリンピックを主導し、平和と理解と共生を目指す人はむしろ強く、明確なメッセージを発信しました。



北京パラリンピック開会式 IPCパーソンズ会長のスピーチ

習近平中華人民共和国国家主席、蔡奇大会組織委員会会長、全世界のスポーツファンのみなさま、各国、地域代表のアスリート、ならびに役員のみなさま、ご来賓のみなさま、こんばんは。そして2022北京パラリンピックへようこそ。

Your Excellency, Xi Jinping, President of the People’s Republic of China,

President of the Organising Committee, Cai Qi,

Sport fans all around the world,

Athletes from all competing delegations, officials and distinguished guests,

Good evening and welcome to the Beijing 2022 Paralympic Winter Games.

今夜はまず、平和のメッセージから始めたい、いえ、始めなければなりません。共生を中核とし、多様性を祝い、違いを受け入れることを旨とする組織のリーダーとして、私はいま世界で起こっていることに強い衝撃を受けています。21世紀は対話と外交の時代のはずです。戦争と憎しみの時代ではありません。

Tonight, I want to begin with a message of peace.

As the leader of an organisation with inclusion at its core, where diversity is celebrated and differences embraced, I am horrified at what is taking place in the world right now.

The 21st Century is a time for dialogue and diplomacy, not war and hate.

オリンピック・パラリンピック期間中の休戦は、国連決議として193の国連加盟国の総意で第76回国連総会で採択されました。それは尊重し守るべきもので、違反があってはなりません。

The Olympic Truce for peace during the Olympic and Paralympic Games is a UN Resolution adopted by consensus by 193 Member States at the 76th UN General Assembly. It must be respected and observed not violated.

IPCでは、よりよい皆が共生できる世界、差別や憎しみ、無知とは無縁の紛争のない世界をめざしています。ここ北京にはパラアスリートたちが46の国や地域から集まり、互いに競い合います。戦うのではありません。

At the IPC we aspire to a better and more inclusive world, free from discrimination, free from hate, free from ignorance and free from conflict.

Here in Beijing, Paralympic athletes from 46 different nations will compete with each other, not against each other.

スポーツを通して彼らは人類の最高の姿を示し、平和や皆が共生する世界の基礎となる価値観を際立たせてくれるでしょう。パラリンピアンたちは知っています。対戦相手は敵である必要がないこと。ともに歩めばさらにより多くのことを達成できることを。

Through sport they will showcase the best of humanity and highlight the values that should underpin a peaceful and inclusive world.

Paralympians know that an opponent does not have to be an enemy, and that united we can achieve more, much more.

今夜、パラリンピックムーブメントは世界各国の当局者に呼びかけます。アスリートたち同様、ひとつになり平和、理解、共生を促してください。世界はともに生きる場であるべきです。分断されてはなりません。

Tonight, the Paralympic Movement calls on world authorities to come together, as athletes do, and promote peace, understanding and inclusion. The world must be a place for sharing, not for dividing.

変化はスポーツから始まります。それは調和をもたらし、それがきっかけとなって、人々の生き方、街、そして国をも変えることができます。史上初の夏季、冬季両パラリンピックの舞台となる北京はその証しです。大会前、何十万もの施設がバリアフリー化されました。

Change Starts with Sport.  Not only can it bring harmony, but it can be a catalyst to transforming the lives of people, cities and countries.

As the first city to stage both the summer and winter Paralympics, Beijing is proof of this.
Ahead of these Games, hundreds of thousands of facilities have been made barrier free. 

会場は壮大であり組織運営は際立っています。新型コロナウイルス対策も万全かつ効率的です。中国国民のおもてなしの精神により最高のパラリンピック、ウィンタースポーツの披露の場ができました。さらに障がいのある人々にウィンタースポーツを体験する機会も提供されました。すばらしいです。中国国民のみなさん、謝謝!

The venues are magnificent. The organisation is extraordinary. The Covid-19 prevention and control - safe and efficient.

The hospitable Chinese people have built the stage to fully showcase the best of Paralympic winter sports.

Efforts to encourage and engage persons with disabilities to try winter sports have been outstanding.

To the people of China: Xiexie!

パラリンピアンのみなさんが、スポーツを糧に障がいを受け入れた瞬間がありました。障がいによって否定されることなく自分の一部とし、そこにみずからの強みを見い出したのです。弱さとみられがちな障がいに力を見い出し、自分の可能性を最大限発揮しています。

Paralympians, there is an important moment in your lives when, because of sport, you embrace your disability. Not as something that defines you, but something that is part of who you are.  As you embrace it, you find your strength, where others have seen weakness, and your find your own power and path to maximise what you can do.

世界人口の15%が障がいのある人々ならば、パラリンピアンは残り85%の人々に障がいのある人々がどんな望みでも機会さえ与えられれば、叶えられることを見せています。それゆえにIPCなどの主導のもと「WETHE15」キャンペーンが立ち上げられ、18の国際機関連合とともに歩んでいます。WETHE15は障がいの可視化、アクセス性、共生と平等の権利のためのキャンペーンです。

If 15% of world’s population has a disability, Paralympians show to the remaining 85% of people that persons with disabilities can do whatever they want, if given the opportunity.

This is why the IPC and the International Disability Alliance launched WeThe15 alongside a coalition of 18 international organisations.

Through WeThe15 we want to campaign for disability visibility, accessibility, inclusion, and equality of rights.

世界の12億の障がいのある人々は人生を謳歌し、夢を追い、紆余曲折を生き抜き、社会貢献する機会を同様にもつべきです。人類、そしてひとりひとりがそのような変化を約束し、このような機会を保証すべきです。

Every one of the world’s 1.2 billion citizens with disabilities should have the same opportunity to live life to the fullest, chasing their dreams, finding their way through life’s ups and downs, and contributing to society. As humankind, it is up to each and every one of us to Commit to Change to guarantee that opportunity.

最後にパラアスリートのみなさん、今大会のための準備、とりわけパンデミック下においては決して容易ではなかったと思います。みなさんは決意の意味を示し、忍耐を体現しています。みずから成し遂げたことを喜び、自分の力で世界を変えられる、変えることを誇りに思ってください。

Finally, Paralympic athletes, your preparations to reach these Games have not been easy, especially due to the global pandemic. You define the meaning of determination, you personify perseverance.

Celebrate your achievements here, and be proud that your abilities can, and will, change the world for a many, many millions of people.

そしてどうかフェアプレーのもと、楽しんでください。みなさんの健闘を祈ります。

謝謝!サンキューベリーマッチ!ムイトオブリガード!

平和を!!!!!!

Above all, have fun and play fair. 

I wish you all the best of luck.

Xiexie! Thank you very much! Muito obrigado! Peace!


この6分間弱のスピーチが、この開会式のほとんどであったような気がします。どれだけ華やかに、どれだけ盛大に大会を彩ろうとも、このメッセージがこもっていなければ、心のない虚ろな式典となっていたことでしょう。花火でも演出でも歌や踊りではなく、メッセージが主役となった式典であったことに救われる思いがします。

平和を乱したこと、オリンピック休戦を破ったこと、それに対する憤りはもちろんある。理解できる。しかし、世界はともに生きる場であり、分断されてはならない。アスリートたち同様にひとつになり、平和と理解と共生による社会は実現できるはずだ。パラリンピックという機会に街がバリアフリー化されたように、スポーツから始まる変化によって社会も変われるはずだ。平和を実現できるはずだ。明確で簡潔なメッセージでした。共生を諦めない、意志の表れでした。この難局に臨むにあたって、こういうリーダーがいることは頼もしいと思いました。

そして式典の最後、聖火が灯されるとき、偶然かもしれませんが、まさしく共生を示すような場面がありました。オリンピックと同様に聖火台にトーチを差すだけの聖火点灯ですが、最終点火者は視覚に不自由を抱えており、トーチをさす穴がすんなりと把握できずにいました。トーチを差そうとしても真っ直ぐに入らず苦心していました。

皆は待ちました。その人のするべきことを、その人のやり方で、その人なりの手順でやるのを待ちました。最後に係員がほんの少しサポートしたようですが、最終点火者自らがしっかりとトーチを差して、聖火は灯りました。聖火を灯すと、観衆の声援にガッツポーズで応えました。

これまでの大会で見てきた仕掛けとアイディアにあふれた点火も素晴らしかったけれど、この何でもない作業が何でもない作業ではない人も存在することを感じ、ただし十分な時間と少しの支えがあればやっぱり何でもない作業にできるのだということを感じるのは、どんな点火よりも印象的でした。聖火の名にふさわしい火が灯ったと思います。

相手を知り、同じ時間を過ごすことで、何かが生まれる。

断ち切ってしまうのではなく、つながりから始まるものがある。

お花畑の綺麗事かもしれませんが、全部の綺麗事がなくなってしまった身もふたもない世界よりは幾分かマシではないかと思いながら、この大会を見守っていきたいと思います。綺麗事を全部捨ててしまったら「撃たれる前に撃て」「撃ちそうなヤツを全部撃て」「撃て撃て撃て」が正解になってしまいますからね。身とかふたどころではなく本当に何もかも全部がなくなってしまいますからね。「PEACE」の祈りと希望を失わずにいたいものだなと思います。

ロシアの人もそうでありますように。

すべての人がそうであれますように。

「共生」がいかに難しくて必要なことか、噛み締める時間となりそうです!