DV問題の"後進国"日本。支援には、官民の協力が必要不可欠だ。(イメージ写真:吉川忠行)

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DV被害者は女性だけと思いがちだが、男性の被害も報告されている。内閣府の調査によると、男性で配偶者から被害を受けたことがあると答えたのは17.4%、その中で「何度もある」は2.6%だった。

 ある専門家は、男性が受ける暴力についてこう語る。「“男性は強くなければいけない”という社会的な通念から、被害を言い出せない人も多いのではないか。数字上では圧倒的に女性の被害者のほうが多いが、じっと妻の暴力に耐えなければいけないなど、男性の被害者のほうが問題は深刻かもしれない」。

 また、男性が受ける被害として最近注目されているのが、職場の上司が、部下に身体的・精神的暴力を加える「パワーハラスメント」。この場合も加害者が女性だと、「恥ずかしくて誰にも相談できない」と泣き寝入りする男性が多いという。職場で暴力を受けた被害者は、家庭で加害者になることも。このように、暴力が暴力を生むケースが少なからずあるようだ。

進まない支援 DV問題の今後

 男女平等参画への取り組みを行う東京都の施設「東京ウィメンズプラザ」(東京都渋谷区)には、年間約1万5000件の相談が寄せられるが、そのうち約5000件がDV問題に関するものだ。同施設では、女性のための電話相談や配偶者暴力への対応を行うなど、01年のDV防止法の成立を機に、行政支援は進みつつある。

 しかし、それでもまだDV問題に対する行政の歩みは遅い。特に、法律で保護の対象となっている被害者と比べ、加害者の更正に向けての取り組みに対する行政の後押しは弱い。6月に行われた内閣府の「加害者更正」に関する検討会も、実質的な議論に及ばないまま、次回の検討会の日程は未定だ。

 DV支援を行う関係者の口からは、加害者更正に向け「法律の整備が急務だ」という声が多く聞かれたが、現状からは「日本ではあと、10−20年かかるだろう」と見通しは暗い。

被害は十人十色 官民が手を携えた支援を

 「DV支援には、被害者へのきめ細かい対応や“体温をともなう支援”が大事。身近な人に傷つけられた被害者には、理解して支えてくれるような支援が必要」と話すのは、DV支援のボランティア活動をとりまとめる東京ボランティア・市民活動センターの担当者。

 しかし、一方で行政の支援は一律のものになってしまいがちだという指摘もある。行政側の担当者は「DV被害は十人十色。一律にルールを決めて支援すればいいという問題ではない」と話し、「ルール」は必要だが民間でなければできないようなきめ細やかな支援も必要だという考えを示している。「被害者に寄り添うようなきめ細かい支援を行うには、官民の協力が必要不可欠」とする視点は欠かせない。

 行政と民間の連携が欠かせないDV支援だが、いまだに多くの加害者・被害者が「家庭内の問題」として当事者意識を持たない現状がある。また、メディアがこの問題について取り上げにくいのも一因だ。被害者のプライバシーや加害者からの圧力といった問題は、関係者の口を重くさせる。

 DVが米国で重大犯罪として扱われているのは、暴力の連鎖、子ども達への影響など、社会に与える衝撃が計り知れないからだ。DV問題を、「家庭内の問題」としてとらえてきた"後進国"日本では、DV問題の広がりによって大きなひずみが生まれつつある。【了】

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