(写真:資生堂CM「美しさとは、人のしあわせを願うこと。」より)

2月前期の作品別CM好感度ランキングを見ると、人気俳優の共演や大物アーティストの抜擢などキャスティングで話題性を高めたCMが目立った。総合1位に輝いたのはリクルート『タウンワーク』。

昨年の春にスタートした木村拓哉と芦田愛菜が本人を演じるシリーズの第2弾CMで、地下鉄のセットの前で木村が「タウンワークって何?」などと芦田に尋ねるコミカルな展開だ。9カ月ぶりのオンエアにもかかわらず、若年層や主婦のポイントを伸ばし、昨年4月後期調査以来の首位に返り咲いた。

資生堂の企業CMが約11年ぶりにトップ5入り

資生堂は創業150周年を記念した企業CMが好評で、同社のCMとして約11年ぶりにトップ5入りを果たした。「美しさとは、人のしあわせを願うこと。」をテーマに展開するもので、安藤サクラ、池田エライザ、石田ゆり子、小松菜奈、近藤華、長澤まさみ、広瀬すず、前田美波里ら人気女優8人が出演している。

BGMには1978年に『ベネフィーク グレイシィ』のCMソングとしてヒットした『君のひとみは10000ボルト』の中村佳穂によるカバー曲が使用され、同社が発信してきたメイクや価値観の歴史、過去のCMのオマージュなどを最新の映像技術で表現している。

60秒CMは1872年に創業した同社の店舗や東京・銀座の街並みを再現したモノクロ映像に始まり、丸まげを結った石田が着物姿で現れる。続けて『い・け・な・いルージュマジック 資生堂 ルア リップカラークリエイター』のCMをオマージュした場面には、1980年代の“太眉”メイクをした安藤がオープンカーに乗って登場。

その後もリモート面接に臨むリクルートスーツ姿の広瀬すず、昭和初期と現代の“ビューティーコンサルタント”に扮した小松、1928年開業のレストラン『資生堂パーラー』に心を躍らせる“モガファッション”の長澤、華やかなメイクや髪型でベネフィーク グレイシィのCMの世界観を再現した池田らが次々に映される。

1966年のサマー・キャンペーン広告「太陽に愛されよう」をモチーフにした場面には当時のキャンペーンモデルを務めていた前田自身が登場。白いターバンを風になびかせ、力強いアイメイクをした彼女が砂浜から起き上がる様子を生き生きと再現した。ラストは宇宙空間から青い惑星を眺める近藤を映し、未来においても同社が新しい“美”の形を追求していくことを印象づけた。

本作は成人女性を中心に好評価を獲得。モニターからは女優たちの美しさやCMソングに関するコメントのほか、150年という資生堂の歴史に思いをはせる感想や、「美しさとは、人のしあわせを願うこと。」というメッセージへの共感の声なども多く寄せられた。

なお、資生堂は初代社長の福原信三氏が1916年に立ち上げた、デザインや広告宣伝の企画担当を担う「意匠部」を出自としたクリエイティブ部門を今年1月1日に分社化し、資生堂クリエイティブ株式会社を設立した。

米津玄師の新曲を使用した『PlayStation』CM

続けて紹介したいのは、1月24日にオンエアを開始したソニー・インタラクティブエンタテインメント『PlayStation』の新CM。米津玄師の新曲『POP SONG』のミュージックビデオを使用した作品で、17位にランクインした。

CMは大勢の兵士が整然と並んでいる場面に始まる。そのうちのひとりが突然体を震わせると、黒い羽根や青いタイツを身に着けた“悪魔”のような姿の米津に変身する。続けてPlayStation5のコントローラー「DualSense」を手にした米津が周囲の兵士たちを翻弄するかのように導き、巨大な城門の外へ連れ出す様子を壮大なスケールで表現した。「遊びのない世界なんて。」のコピーをはじめ、「♪1 2 3 で愛を込めて もう一生遊ぼうぜ」といった歌詞を重ねるなど、ゲームの世界と親和性の高いクリエーティブが印象的だ。

米津は楽曲制作に加え、変身というアイデアからキャラクターデザイン、コンセプトの企画にも携わったという。また本作は米津のヒット曲『感電』のミュージックビデオも手掛けた奥山雄太氏(SIX)、同じく数々のミュージックビデオやCMを手掛ける児玉裕一氏がそれぞれクリエイティブディレクターと演出を担当するなど、最前線で活躍するクリエイターがタッグを組んだことでも注目を集めている。

支持層を見ると、若年女性や男子中高生を中心に好スコアをマーク。CM好感要因では「出演者」をはじめ「音楽・サウンド」「映像・画像」でポイントを伸ばしており、米津の起用やクオリティーの高い映像表現が多くの視聴者の心を捉えたようだ。

本作はコミュニケーション手法も特徴的で、1月22日に投稿されたPlayStationの公式Twitterなどでの米津のCM出演に関するツイートを皮切りに、多彩なプロモーションを実施した。初代PlayStation、PlayStation2の発売日(1994年12月3日、平成12年3月4日)に関連した「1・2・3」の数字が並んだ今年“1月23日”午前0時には、PlayStation5とPlayStation4を起動したユーザーへ1日先行でCMの視聴が可能となる「123アーリーアクセス」をランダムで配信。

当たりの人はCMをリンク先から楽しめるという仕掛けで、アーティストの新曲がPlayStationのプラットフォーム上で解禁されるのは国内では初の試みだという。このほかSHIBUYA109のシリンダー広告といったさまざまな施策を展開し、ゲームファンのみならず多方面から話題を集めている。

ブーム再燃の『マツケンサンバ供戮梁悗┣里鮖藩

21位には松屋フーズ『松屋』のCMが入った。松平健が金色の着物姿で出演するシリーズの第2弾で、引き続き『マツケンサンバ供戮梁悗┣痢悒泪張戰鵐汽鵐弌戮BGMに使用している。

CMの冒頭では『デロリアン・DMC-12』を思わせるスポーツカーが夜道を疾走し、その車の助手席でスマホを操作する松平が描かれる。松屋の弁当予約サイトが表示されたスマホ画面をタップする手元に「操作がカンタン!」のテロップがかかると、場面が転換。松屋の店舗の前に止まり、跳ね上げ式の“ガルウィングドア”を開けた車の正面で、松平が両手を広げて「それがマツベンネット」とポーズを決める。

ラストは松平が商品を店員から受け取る姿や「待たずにテイクアウト!」の文字を重ねた『牛めし』のシズルカットなどを映し、松屋の弁当予約サイト『松弁ネット』の利便性を印象づけた。

本作は30代の男性をはじめ、成人層から高く評価された。『マツケンサンバ供戮箴省燭里らびやかな衣装に関する感想が多かったほか、サウンドや映像表現にインパクトを感じたという声も目立った。また「年末からブーム再来のマツケンが低姿勢でお会計をしている姿が面白かった」「マツケンサンバにマツベンとかけて、宣伝文句が頭に残る」など、さまざまなコメントが寄せられた。

『マツケンサンバ供戮最初にヒットしたのは20年ほど前だが、昨年夏には東京2020大会の開閉会式に関連してSNSなどを中心にブームが再燃。昨年末には松平が17年ぶりに『NHK紅白歌合戦』に出場し、大勢のダンサーを従えた華やかなパフォーマンスが大きな反響を呼んだことも記憶に新しい。注目度が高まる中、第3弾CMはどのようなクリエーティブで視聴者を楽しませてくれるのだろうか。


(関根 心太郎 : CM総合研究所 代表)