堅実女子の悩みに、弁護士・柳原桑子先生がこたえる連載です。今回の相談者は、麻実さん(仮名・28歳・PR会社勤務)。

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年間数万円分のポイントゲットを上司に指摘された

「うちの会社は仕事の性質上、業務上必要なものを社員が立て替えて支払うことが多いのです。例えば、出先の手土産、撮影小物、打ち合わせのドリンク代など多岐にわたります。

出張も多く、ひとまず自分で立て替えて、後で精算しています。今回お伺いしたいのは、会社の経費で購入したもののポイントの所有権についてです。

問題は私の上司なのですが、この人が私のことをとても嫌っているんです。

新人の子がちょっとミスしただけで「なんでこんなことをするの?」と詰め寄り、「見落としてました」と言ったら、「なんで見落とすの?」などと終わりのない会話に持ち込まれ、その子が泣くまで詰めようとしていました。

そこで、私が「仕事しません?」と助け船を出したら、矛先が私に向きました。それから、いろいろ上げ足を取られ、そのたびに論破していたら、私が立て替えた経費について、ねちねち言われるようになりました。

それも論破したら、過去にさかのぼって私が購入した、営業車のガソリン、出張時の航空券、さらには会社の宴会時の建て替えの時にクレジットカードで支払った領収書を精査し始めたのです。

上司は「すごい額の経費ね。事前申請すれば現金支給されるのに。あえてあなた名義のカードを使っているって、ポイントを横領するため?」と言われてしまったのです。

私が得たポイントをお金で換算した場合、総額は、年間1万円分くらいになっていると考えられます。

世の中的に、コンプライアンス順守の時代になっていると思います。ポイントは法律的にどのような扱いになるのでしょうか」

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社内規定で所有権を判断する

会社のお金で購入して得られたポイントを、会社が社員に譲ることは自由です。それと同時に、会社側から“会社のものだ”と主張すれば、そうなるとも考えられます。

会社のポイントの処理については、会社によって扱いが異なります。経費は社用のクレジットカードで一括しているところもあるようです。

ですから、このケースの場合、そのポイントがあなたのものかどうかは、会社の方針によります。会社の方針がわからないならば、総務や経理などにルールを確認してその後の対策をとってみてはいかがでしょうか。

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後日談……結局、この件の場合、会社は「そこまで考えていなかった」という結果になり、ポイントは経費を立て替えた社員に譲渡するという方向で落ち着いたとのこと。

ただ、その直後に、別の社員が会社の経費立て替えをQRコード決済で行い、多額のポイント還元を意図的に行っていた事実が発覚。

それに対して、処分がされたわけではないですが、問題がないからといって、「経費立て替えで得をする」という行動は、その人の評価を下げてしまうことになりかねません。

社内における「不公平感」の解消と、経理処理の軽減を狙い、社用カード発行に踏み切る会社も多い。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/