グランマ・モーゼス(モーゼスおばあさん)の愛称で、アメリカでは誰でも知っている! と、いうほど親しまれている、国民的な画家・アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス。

なにが凄いって、70代までは、つつましく生きてきた無名の一農婦です。5人の子供を育て上げ、手のリウマチが悪化して、得意だった刺繍(刺繍絵)が難しくなったため、刺繍針を絵筆に持ちかえて本格的に絵を描き始めたのは、70代になってから。そして、80歳の時にNYで初個展を開催することになり、101歳で亡くなるまで、描き続けた人物です。

東京・世田谷の砧公園内にある「世田谷美術館」では、このモーゼスおばあさんの生誕160年を機に、生誕160年記念「グランマ・モーゼス展−素敵な100年人生」を開催しています。

同展では、絵を描き始めた最初の頃の作品から、100歳で描いた絶筆までの代表作を一挙に展示。絵画だけでなく絵を描く前に作っていた刺繍絵や、絵を描いていたデスクや愛用品・資料などの展示も含めた約130点を展示。

鑑賞しているうちに、当時の農家の生活や収穫の楽しみ・苦労なども垣間見ることができ、心がほっこりと温まってきます。

人生100年時代!スタートするのに遅すぎることはない!

ニューヨーク州北部の農婦であった、グランマ・モーゼス。12歳から奉公に出て27歳で結婚、5人の子供を育てながら働き、67歳で夫を亡くします。

70代になり、リウマチで手の自由が利かなくなり刺繍がうまくできなくなった時は、きっとショックだったはず。なのに、70代半ばに絵筆をとってからは、畑、牧場で働く農民や田園風景など日常の延長上のシーンを題材に、生き生きとした絵を次々と描いていきます。

本格的に筆を握る前の作品、刺繍絵も素敵です。刺繍絵は娘に頼まれて作り始めました。今回は、「海辺のコテージ」など刺繍絵も数点展示されています。

「海辺のコテージ」1941年。個人蔵(ギャラリー・セント・エティエンヌ、ニューヨーク寄託)。© 2022, Grandma Moses Properties Co., NY

「村の結婚式」1951年。ベニントン美術館蔵。© 2022, Grandma Moses Properties Co., NY

夏に咲く花々、田園風景、晴れの結婚式、そして、身の回りの風景……。恋人たちの語らいや、農婦たちのおしゃべり・愚痴までも聞こえてきそうな、当時の生活の一部を切り取った、絵画の数々。

「アップル・バター作り」1947年。個人蔵(ギャラリー・セント・エティエンヌ、ニューヨーク寄託)。© 2022, Grandma Moses Properties Co., NY

当時は、ろうそくや保存食などできる限り自給自足が基本。グランマ・モーゼスも自家製の「アップル・バター」や、「ポテトチップス」を売って生計を助けました。

絵を描き始めてから数年後、1人のコレクターの目に留まり、NYで個展を開いたのが80歳の時。それがきっかけとなり、有名画家となっていきました。101歳で亡くなるまでに、なんと1500点の作品を世に送り出しました。

やりたいことがあるけれど、今一歩、踏み出せずにいる人の背中を押してくれる作品に触れることができます。

鑑賞した後は絵画を感じさせるフルコースランチを堪能!

作品鑑賞をした後にはさらなるお楽しみが。美術館内のレストラン「ル・ジャルダン」では、期間中、グランマ・モーゼスの絵画や食材にちなんだ、「世田谷美術館 グランマ・モーゼス展 コラボメニュー」コースランチ(4500円)を堪能できます。

アミューズは「アップルバター」を使った「ポテトチップス」。グランマ・モーゼスの生きた時代に思いを馳せながらメニューを味わっていきましょう!

コースより、アミューズ「ポテトチップス」。

オードブルに続き、スープは「ニューイングランド風クラムチャウダー」。さらには魚料理・肉料理と続くフルコースです。

コースより魚料理「鱈のヴィエノワ―ズ」。

コースよりデザート「ジョニーケーキとインディアンプリン」。

アメリカを代表するジョニーケーキ(コーンブレッド)と、感謝祭の定番インディアンプリンの組み合わせ。「アップルバター」も使われている素朴なおいしさ。

レストランの窓からは砧公園の自然も眺められ、東京にいながら、旅した気分にも浸れます。

そして、ミュージアムショップで、お土産に「アップルバター」を買って帰りましょう! 

「アップルバター」1300円。

【DATA】
「グランマ・モーゼス展」
開催期間:開催中〜2022年2月27日
世田谷美術館
東京都世田谷区砧公園1-2
ハローダイヤル 050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日:毎週月曜
https://www.grandma-moses.jp/

※ル・ジャルダンの営業時間・予約などは(TEL:03-3415-6415)まで問い合わせを。

取材・文/はまだふくこ