今回の「女のもやもやセラピー」のテーマは、「おばさん」です。なぜ、私たちは「おばさん」と言う言葉で自分が言われることに、もやもやした気持ちになってしまうのでしょう。

「おばさん」とは、「お嬢さん」とか「おばあさん」といった言葉と同じく、その年代の女性をさす言葉なわけですが、「お嬢さん、お逃げなさい」と森のくまさんに言われたシーンも、「おばあさんは川へ洗濯に行きました」というナレーションのシーンも、容易にそこにいる人物の風貌をイメージできるのに比べ、「おばさん」は妙にあいまいです。

30代〜50代の女性はみんな「おばさん」のラインに入る!?

「叔母さん」は、自分の親の姉や妹ですが、物心がようやくついたころ、当然のように近くにいるその人物を、私たちは「あまりよく知らないうんと年上の人」という程度の認識しかできません。そのため、親でも先生でもお友達のお母さんでもない人は、全部そのカテゴリーに入ってしまう、というか入れざるを得ない、という状況が生まれます。

そして、その年齢幅は30代〜50代くらいまでと幅広い。親の結婚が早かったり、姉妹の年がうんと離れていたりすれば、10代、20代の「叔母さん」がいた人もいるでしょう。幼少期に培われたその前提は、大人になっても続きます。しかも、本物の「叔母さん」は自分の年齢に比例して年齢があがっていきますがら、もはや無限大。それによって「おばさん」層はぐっと厚くなってしまうのです。つまり、名前の知らない30代〜50代、それ以上の方々も、呼び方は「おばさん」しかないのです。

そう考えれば、「おばさん」なんてなんのことはない、単なる呼称なのですが、私たちは、見ず知らずの人から街で「おばさん」と声を掛けられることも、誰かに密かに「おばさん」と思われることもなぜか苦手。それはなぜなんでしょうか。

「おばさん」の4文字に込められた呪い

なぜ私たちは「おばさん」と定義づけられることを拒むのでしょう。それは、「おばさん」が「老けている」認定だと感じてしまうからです。「おばあさん」より若い、だからアリ!ではなく、「お嬢さん」より老けている、だからナシ!と考えてしまうんですね。だからといってお嬢さんと呼ばれたい、思われたいという人は少数派だと思うのですが、とにかく、あいまいで、しかも長い「おばさん」と呼ばれる期間をスキップしたい、という欲求は断ち切りがたい。

今回登場する佐々木美穂さん(仮名 44歳/派遣)にも、そんな気持ちがあったそうです。

「もともと、年下の男性との恋愛のほうが心地いいタイプで、歴代の彼氏は全員年下です。今も、20代や30代の男性と話しているほうが快適。性別問わず、若い子たちと一緒にいるほうが、自分が“そっち側”でいられるという満足感もあるんですよ。自分の年齢が上がっても、“好き”と思えるのがそのくらいの年の人ばかりだったので、付き合う相手との年の差はどんどん大きくなるばかりだったんです。

でも、最近、未来ある男性の時間を搾取しているような、なんだか申し訳ない気がしてきてしまって。一緒にいても、周囲の目も気になるんですよね。レストランですれ違ったカップルが、私のことを“お母さんなのかな? ホストと客?”とかって話しているのが聞こえてきたときはショックでしたね。私、彼氏といるのに、人からは年の離れた“おばさん”に見えるんだなって(笑)。

それがイヤなら同世代と恋愛すれば、っていう話なんですが、周りの同世代男性はほぼ既婚者だし、わずかばかりの独身に至っては、失礼な話ですが年相応に老けていて、身につまされちゃうんですよ。自分もこの世代なんだーって。しかも、彼らもあわよくば20代とかと付き合いたいって思っているのがわかるので…。彼らからしても、同世代の“おばさん”は問題外なんですよね。

それで、勇気を出して、マッチングアプリで15歳年上の人とマッチして、会うことにしたんです」

10歳年上の男性なら、40代も「お嬢さん」扱いしてもらえる…?

「だって、60歳といえば、シニア世代。そういう相手なら、私も“若い”っていうカテゴリーにいれてもらえそうじゃないですか。若い子より人生経験もありますし(笑)。

当日は、髪もサロンでトリートメントとブローしてもらって、小顔マッサージでたるみもとってもらって、自己ベストで臨みました。指定された場所がスペインバルだったんで、そこに“ちょうどいい”服とメイクも選んだし、正直、実年齢より5〜6歳は若く仕上がったと思うんです。

差し向かいで座ったとき、相手の首のシワや、顔の肌のハリのなさは年相応で、“やっぱり、30代の男性とは違うよなぁ”とは思ってしまいましたけど、私に向ける笑顔が多かったし、気に入ってくれているのだと思いました。共通の話題はゼロでしたが、お互いコミュニケーションスキルがあるから、会話もきちんと弾ませられます。自慢話もネガティブ話もないし、質問攻めにもしてこないし、説教してくるわけでもない。何度かマッチングアプリで男性と会いましたけど、これまでになく好感がもてる方だったんです。

人を好きになるときの、ぱぁっと花開くような感覚はなかったですが、私としては、かわいがってくれるなら、飲み友達くらいにはなってもいいかも、っていう気持ちだったんです」

しかし、佐々木さんの思惑は一瞬にして崩れ去りました。

後編に続きます。

「鏡よ鏡、私は…おばさん?」

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