超レアモデルのランボルギーニ・シアン5台が揃い踏み!ド迫力のコラボレーションに眼福
世界限定わずかに63台。追加で発表されたロードスター19台を入れても82台。シアンと名乗るランボルギーニは世界で最大82人だけに乗ることが許された超レアモデルである。そんな貴重なシアンがなんと5台も一堂に会すると聞いて、見るチャンスをみすみす逃すスーパーカー好きはこの世にいまい。
【画像】超貴重なランボルギーニ・シアンが5台も集結!それぞれの個性あふれる内外装(写真32点)
「西川さん、某月某日、ランボルギーニ大阪のファクトリーにシアンが5台集まりますから、来てくださいね」。ランボルギーニ・クラブ・ジャパンの板倉会長からそう誘われ、もちろん万難を排して向かうことに。
5/63。それはつまりランボルギーニ大阪が関西で売ったシアンの数、というわけで、世界にディーラーの数が約170(つまり全てのディーラーには行き渡らない!)あることを考えると、驚異的な数である。関西には熱狂的なランボルギーニファンが多いというわけか(確かに肌感覚としては多いかも)。
実をいうと大阪ファクトリーに伺うのは今回が初めて。大きくて立派な工場だとは聞いていたが、想像以上だった。高速インターを降りてすぐ、アクセス至便な場所にある正式名「ランボルギーニ大阪サービスセンター」はアジア最大級で、3階建てのショールームも併設されている。圧巻は整備ブースで、横一列になんと11ベイ&10リフトが並ぶ。国産車のメンテ工場ではない。ランボルギーニ専用工場だ。当然、普段からランボルギーニばかりがずらりと並ぶわけで、もうその光景だけで眼福というものだろう。
ところが、だ。取材当日にはなんと5台のシアンがこのファクトリーの半分を占有していたのだから、もうたまらない。白ベースが2台に、紫、青、黄、ああ、これで白の一台が赤だったら秘密戦隊「ランボルシアンジャー」だったのに・・・。それはともかく。
いずれも個性的な5台である。黄色い個体は実は最もスタンダードな仕様のシアンで、白いストライプと文字は後からオーナーがデザインしてデコレートしたものだ。
紫と青の個体は配色やストライプの入れ方がとてもよく似ており、まるで姉妹だ。特にディアブロイオタのパープルカラーで仕上げられた個体には紫のカラーカーボンまで使用されていた。
リアフェンダーが黒く見える個体も面白い。黒いパートは全てビジブルカーボン仕上げ。シアンの外板パネルは全てカーボンだが、だからと言ってクリアを吹いてカーボン地を見せることは簡単ではない。目を合わせる必要があるし、なんと言ってもカーボンの柄は”焼き上がるまでわからない”のだ。より慎重なハンドレイアップ作業が要求されるため、当然ながらビジブルカーボン仕様は高価だ。
そしてもう一台の白ベースがチーフデザイナー、ミッティア・ボルカートもお勧めのグラデーションカラーを使った個体で、板倉会長のオーダー車両だ。シアンは全ての個体が異なるコンフィグレーションで仕上げられており、一台として同じ組み合わせの個体がない。だからこうして5台が揃っても、一台一台に個性があって見飽きるということがないのだった。
5台のシアン集合、奇跡のコラボレーションを”拝んだ”あとにサプライズが待っていた。板倉会長から「高速をひとっ走りしてみはったらどうです?」、とシアン試乗の許可が出た。会長の気持ちが変わらないうちに、と、グラデーションカラーのシアンに乗り込む。
先にざっとシアンの概要を復習しておこう。2019年の秋に登場したアヴェンタドールベースの限定モデルである。正式名は「シアンFKP37」。シアン発表の直前に亡くなった”フェルディナント・カール・ピエヒ”に敬意を評して急遽、そう名付けられた。37はピエヒの誕生年を表す。どうしてランボルギーニがピエヒを追悼するのか。ランボルギーニの今の隆盛は98年のアウディによる買収があってこそ。その立役者こそピエヒであり、また彼の理解があって初めてガヤルドやアヴェンタドール、ウラカンといった大ヒット作が生まれた。特に10気筒エンジンはピエヒの遺産というべき存在だ。
アヴェンタドールのカーボンモノコックをベースに改良を加え、12気筒エンジンとISRミッションとの間に25kWの電気モーターを挟み込み、大容量のスーパーキャパシタでそれを駆動するというマイルドなハイブリッドシステムを搭載した。エンジン単体もチタンインテークバルブを採用するなど進化しており最高出力は785psまで高められている。
スタイリングはミッティア・ボルカート率いるチェントロ・スティーレ作。ミッティアにとってはポルシェから”異動”して初のオールニューデザインである。のちにシアンベースの新型カウンタックも登場するわけだが、実はこのシアンこそカウンタックをモチーフにした現代解釈版だった。
果たしてシアンの乗り味は「アヴェンタドールの完成形」というべきものだった。電気モーターは低速域での走行をカバーするほか、実はISRミッションのシフトアップ時におけるトルク落ちも埋めるようブーストされる。それゆえ、ハーフスロットルでのオートマチック加速では驚くほどスムースに変速するのだ。
それだけじゃない。マニュアル操作で変速してもシフトアップ時にはっきりと力が加わるため、ギアをあげると同時に前のめりに加速する。この感覚はこれまでのアヴェンタドールにはなかったもので、シアンのパワートレーンに特有の加速フィールだと言っていい。
はっきりいって、700馬力の初期型アヴェンタドールだろうが770馬力の限定車SVJだろうが、パワフルさはほとんど同じにしか感じられない(とはいえ最後の最後、超高回転域での伸びと力強さが違うのだけれども)。けれどもシアンの場合、日本の制限速度内では電気モーターのブーストによる恩恵を受けることができるため、普段乗りの環境(要するに100km/hまで)ではっきりとレスポンスよく加速し、実際に速いと感じることができる。そこから上は純粋にエンジンの出番で、モーターはでしゃばることができないため、他のアヴェンタドールと印象は変わらないかもしれない。要するに低中速域での加速がシアンの方がベラボーに速かった、いうわけで、スーパーキャパシタと電気モーターによるアシストは極めて大きな現世利益があるのだった。
文:西川 淳 写真:タナカヒデヒロ Words: Jun NISHIKAWA Photography: Hidehiro TANAKA
【画像】超貴重なランボルギーニ・シアンが5台も集結!それぞれの個性あふれる内外装(写真32点)
5/63。それはつまりランボルギーニ大阪が関西で売ったシアンの数、というわけで、世界にディーラーの数が約170(つまり全てのディーラーには行き渡らない!)あることを考えると、驚異的な数である。関西には熱狂的なランボルギーニファンが多いというわけか(確かに肌感覚としては多いかも)。
実をいうと大阪ファクトリーに伺うのは今回が初めて。大きくて立派な工場だとは聞いていたが、想像以上だった。高速インターを降りてすぐ、アクセス至便な場所にある正式名「ランボルギーニ大阪サービスセンター」はアジア最大級で、3階建てのショールームも併設されている。圧巻は整備ブースで、横一列になんと11ベイ&10リフトが並ぶ。国産車のメンテ工場ではない。ランボルギーニ専用工場だ。当然、普段からランボルギーニばかりがずらりと並ぶわけで、もうその光景だけで眼福というものだろう。
ところが、だ。取材当日にはなんと5台のシアンがこのファクトリーの半分を占有していたのだから、もうたまらない。白ベースが2台に、紫、青、黄、ああ、これで白の一台が赤だったら秘密戦隊「ランボルシアンジャー」だったのに・・・。それはともかく。
いずれも個性的な5台である。黄色い個体は実は最もスタンダードな仕様のシアンで、白いストライプと文字は後からオーナーがデザインしてデコレートしたものだ。
紫と青の個体は配色やストライプの入れ方がとてもよく似ており、まるで姉妹だ。特にディアブロイオタのパープルカラーで仕上げられた個体には紫のカラーカーボンまで使用されていた。
リアフェンダーが黒く見える個体も面白い。黒いパートは全てビジブルカーボン仕上げ。シアンの外板パネルは全てカーボンだが、だからと言ってクリアを吹いてカーボン地を見せることは簡単ではない。目を合わせる必要があるし、なんと言ってもカーボンの柄は”焼き上がるまでわからない”のだ。より慎重なハンドレイアップ作業が要求されるため、当然ながらビジブルカーボン仕様は高価だ。
そしてもう一台の白ベースがチーフデザイナー、ミッティア・ボルカートもお勧めのグラデーションカラーを使った個体で、板倉会長のオーダー車両だ。シアンは全ての個体が異なるコンフィグレーションで仕上げられており、一台として同じ組み合わせの個体がない。だからこうして5台が揃っても、一台一台に個性があって見飽きるということがないのだった。
5台のシアン集合、奇跡のコラボレーションを”拝んだ”あとにサプライズが待っていた。板倉会長から「高速をひとっ走りしてみはったらどうです?」、とシアン試乗の許可が出た。会長の気持ちが変わらないうちに、と、グラデーションカラーのシアンに乗り込む。
先にざっとシアンの概要を復習しておこう。2019年の秋に登場したアヴェンタドールベースの限定モデルである。正式名は「シアンFKP37」。シアン発表の直前に亡くなった”フェルディナント・カール・ピエヒ”に敬意を評して急遽、そう名付けられた。37はピエヒの誕生年を表す。どうしてランボルギーニがピエヒを追悼するのか。ランボルギーニの今の隆盛は98年のアウディによる買収があってこそ。その立役者こそピエヒであり、また彼の理解があって初めてガヤルドやアヴェンタドール、ウラカンといった大ヒット作が生まれた。特に10気筒エンジンはピエヒの遺産というべき存在だ。
アヴェンタドールのカーボンモノコックをベースに改良を加え、12気筒エンジンとISRミッションとの間に25kWの電気モーターを挟み込み、大容量のスーパーキャパシタでそれを駆動するというマイルドなハイブリッドシステムを搭載した。エンジン単体もチタンインテークバルブを採用するなど進化しており最高出力は785psまで高められている。
スタイリングはミッティア・ボルカート率いるチェントロ・スティーレ作。ミッティアにとってはポルシェから”異動”して初のオールニューデザインである。のちにシアンベースの新型カウンタックも登場するわけだが、実はこのシアンこそカウンタックをモチーフにした現代解釈版だった。
果たしてシアンの乗り味は「アヴェンタドールの完成形」というべきものだった。電気モーターは低速域での走行をカバーするほか、実はISRミッションのシフトアップ時におけるトルク落ちも埋めるようブーストされる。それゆえ、ハーフスロットルでのオートマチック加速では驚くほどスムースに変速するのだ。
それだけじゃない。マニュアル操作で変速してもシフトアップ時にはっきりと力が加わるため、ギアをあげると同時に前のめりに加速する。この感覚はこれまでのアヴェンタドールにはなかったもので、シアンのパワートレーンに特有の加速フィールだと言っていい。
はっきりいって、700馬力の初期型アヴェンタドールだろうが770馬力の限定車SVJだろうが、パワフルさはほとんど同じにしか感じられない(とはいえ最後の最後、超高回転域での伸びと力強さが違うのだけれども)。けれどもシアンの場合、日本の制限速度内では電気モーターのブーストによる恩恵を受けることができるため、普段乗りの環境(要するに100km/hまで)ではっきりとレスポンスよく加速し、実際に速いと感じることができる。そこから上は純粋にエンジンの出番で、モーターはでしゃばることができないため、他のアヴェンタドールと印象は変わらないかもしれない。要するに低中速域での加速がシアンの方がベラボーに速かった、いうわけで、スーパーキャパシタと電気モーターによるアシストは極めて大きな現世利益があるのだった。
文:西川 淳 写真:タナカヒデヒロ Words: Jun NISHIKAWA Photography: Hidehiro TANAKA