この記事をまとめると

■世界一過酷なサーキットとされるニュルブルクリンクでは常に「最速」が競われている

■ポルシェ vs AMG、ルノー vs ホンダの最速の称号をかけた戦いが熾烈だ

■ラップタイムの優劣よりも「ニュルで鍛えられた」という事実に価値を見出したい

さまざまな分野で「最速」が争われているニュルのタイムアタック

 それは昨2021年6月14日のことだった。世界でもっとも過酷なサーキットであることから、「グリーン・ヘル(緑の地獄)」とも呼ばれる、ドイツのニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(北コース)で、ポルシェの911GT2RSが、ニュルブルクリンク・スペシャリストともいえるマンタイレーシングと共同開発した「マンタイ・パフォーマンスキット」を装着したモデルで、6分38秒835というラップタイムを記録。

 これは改修後のグランドスタンド前のショートストレート部分を除いた20.6kmコースで記録されたもので、それまでの記録はメルセデス・AMGブラックシリーズによる6分43秒616というものだった。

 もちろんリヤに搭載されるエンジンは最高出力が700馬力にも達し、サスペンションやブレーキ、そして剛性を担うボディーなど、911GT2RSにはそれ自身スーパースポーツとしてのハイエンドを極めるに相応しいスペックが与えられているのだから、本来ならばノーマルの状態でラップタイムに挑戦してほしかったというポルシェのファンも多いことだろう。

ときにはライバルからの抗議があることも!

 時に、ニュルブルクリンクでのラップタイム更新は思わぬ論戦を呼ぶこともある。たとえば2008年にR35型GT-Rが7分29秒3という当時の市販車最速タイムを記録した時、ポルシェはセミスリックタイヤの装着を疑い日産へと抗議。結局、この抗議が認められることはなく、R35型GT-Rは見事に市販車最速車となったわけだが、同じようなことは現在でも繰り返されているようだ。

 とりわけ最近話題になるのは、FF車最速のタイトルをかけて、ホンダ・シビックタイプRと、ルノー・メガーヌRSトロフィーRによる頂上対決だろうか。モデルチェンジサイクルが微妙にずれているため、同時期に両車がタイムアタックを行う機会を目にすることはないが、最新のシビックタイプRが記録した7分43秒80は確かに驚異的な速さだ。なにしろそれはミッドシップのポルシェ718ボクスターSにさえ、1秒以内の標的に捉えるほどの数字なのだから。

 ルノーからはもちろん、このラップタイムにはさまざまな疑問点が指摘されている。まずはそのタイヤがプロダクションモデルとは異なるセミスリックともいえるブランドであったこと。さらに、軽量化のためにディスプレイやオーディオシステム、リヤシートなどが取りはずされ、その重量減をロールケージの装着で相殺したことなどが代表的なところだ。

 このルノーの抗議は認められることはなかったのだが、今度はルノーが四輪操舵とデュアルクラッチを取り外して130kgの軽量化を施したメガーヌRSトロフィーRで7分40秒100を記録してFF車最速を奪い返している。もはや何でもありになりつつある。

 ニュルブルクリンクは、自動車メーカーによるさまざまなテストや、そしてラップタイムアタックの聖地ともいえる場所。我々はラップタイムそのものよりも、そこで鍛えられたという事実を、より価値あるものとして考えるべきではないだろうか。