唾石症の症状や原因、治療法とは?

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唾石症とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

監修医師:
小野寺 隆昭 医師(小野寺歯科医院)

【経歴】
平成19年東京歯科大学 卒業
平成20年東京歯科大学臨床研修医 終了
平成21年東京歯科大学歯科麻酔科 勤務
平成25年日本歯科麻酔学会認定医 取得
平成27年池田歯科西診療所 勤務
平成28年新浦安ブライト歯科 勤務

【所属学会】
日本歯周病学会
日本歯科麻酔学会
日本障害者歯科学会

唾石症とは

唾石症は唾液を作る「唾液腺」という組織、または唾液を口内に排出する管の中にできた石により、さまざまな症状があらわれる病気です。この石は「唾石」と呼ばれ、大きさは砂粒程度のものから数cmに及ぶものまであり、その形や硬さなども個々で異なります。
唾液腺は耳下腺・舌下腺・顎下腺の3つの大唾液腺と、無数に存在する小唾液腺がありますが、このうち主に唾石ができるのは顎下腺で、耳下腺や舌下腺に生じるのは稀です。また唾石の多くは片側に発生し、唾石が1つの場合もあれば複数存在することもあります。

どんな症状が現れるの?

食べ物を食べようとする際、あるいは何かを食べている最中に唾液腺の周囲に激しい痛みや腫れをともないます。これらの痛みや腫れは、食事後しばらくすると自然に消失するのが特徴です。
そのほかに、排出管(唾液が出る管)の周囲の炎症や発赤、また排出管の出口からの排膿(膿が出る)がみられることもあります。ただし唾石症では症状がまったくでないケースも多く、別の病気で撮影したレントゲンやCT検査などで偶然見つかることも少なくありません。

小野寺先生の解説

口の中を清潔に保つために、うがいをしましょう。
また、唾液の分泌を促進させる食べ物レモンや梅干しなどのすっぱいものや昆布や納豆は唾液の分泌が多くなり腫れや痛みが強くなるので、症状があるときには食べないように注意してください。

唾石症の原因は?

唾石症は40代から50代を中心に、男性がやや多く、また喫煙者に多くみられます。唾石は剥がれ落ちた上皮や他の異物、細菌などにカルシウムなどが沈着して生じると考えらえていますが、詳しい原因についてはいまだ不明な点も多いのが実状です。
唾液腺や排出管に唾石ができると唾液の流れが妨げられる(唾液が詰まる)ため、唾液腺の周囲に痛みや腫れなどが生じやすくなります。とくに食事中は通常時よりも唾液が多く分泌されるため、唾石症では食事中にこれらの症状があらわれるのが特徴です。

小野寺先生の解説

唾石症にならないための予防として歯磨きやうがいなどのオーラルケアはとても重要です。
また、義歯使用している方は細菌に汚染しやすいというので、丹念に清掃し、場合により入れ歯洗浄剤の使用をお勧めします。
唾石症は40~50代を中心にやや男性に多く喫煙者に多いです。喫煙,飲酒による唾液分泌量の増加が原因と言われています。

唾石症の検査方法・診断方法は?

唾石症が疑われるケースでは、まず医師または歯科医師が患部を直接指で触って唾石の存在を確認します。その後、レントゲンやCT検査で唾石の詳しい位置や大きさ、個数などを確認していきます。検査にかかる時間は15~20分程度です。

小野寺先生の解説

まずはかかりつけや近医の口腔外科を標榜している歯科や耳鼻咽喉科を受診ください。
唾石症の初期症状として、食事の際に痛みが出たり、あごの下や耳の下、舌の裏側が腫れたりすることがあります。
また義歯を装着すると痛み、装着する事が難しくなることがあります。

唾石症の治療方法

排出管の出口付近にある小さな唾石については、唾液腺のマッサージをおこないながら自然に排出するのを待ちます。
唾石が大きく、自然排出が見込めないケースについては外科手術が適用されます。排出管の出口付近に生じた唾石は局所麻酔をおこなったのち、口内を切開して唾石を取り出します。手術時間は20分程度で入院の必要はありません。治療期間は3週間ほどとなります。
手術後数時間で食事はできますが、手術当日の入浴は禁止、また術後数日は飲酒や運動を控えます。
排出管の奥深くや唾液腺内に生じた唾石については全身麻酔下にて唾液腺ごと取り出す場合あり、このようなケースでは入院が必要となります。手術時間は約1時間、治療期間の目安は術後約4週間です。術後10日ほどは飲酒や運動はできません。
なお近年は一部の大きな病院などで内視鏡による唾石の摘出手術をおこなっています。内視鏡手術はわずかな切開で唾石を摘出できるため身体的な負担が少なく、従来の手術に比べて入院期間や治るまでの期間が短縮できるというメリットがあります。
唾石の再発率は約3.4~9.2%、唾石の摘出後からの期間は2~20年といわれています。

唾石症の予防方法

唾石症については確立された予防法などがありません。ただ小さな唾石は唾液の分泌を盛んにすることで排出できることから、普段の食事ではよく噛むことを意識して唾液の分泌をうながすことが予防につながると考えられます。
また唾液腺周囲(上の奥歯の辺り・顎の骨の内側・顎の真下)のマッサージも、唾液の分泌をうながすうえでは効果的です。

小野寺先生の解説

唾液線マッサージを行うと、口周りの筋肉の緊張が解けて口が開きやすくなります。これにより唾液腺が活発になると、唾液の詰まりの緩和が期待できます。特に「ストレスや疲労を感じたとき」にだけ唾液腺の詰まりが生じる場合は、マッサージで改善されやすいです。
しかし、唾液線に痛みがある場合は、マッサージをする事で痛みなどの症状が強くなる可能性がありますので注意が必要です。
【唾液の分泌を促す方法】
1. よく噛んで食べましょう
噛むことが刺激となって唾液の分泌が促されます。ゆっくりよく噛んで食事を楽しみましょう。ガムや歯ごたえのあるものを噛むことも刺激になります。
2. リラックスして規則正しい生活を過ごしましょう
唾液の分泌は、自律神経(交感神経、副交感神経) によって調節されています。リラックスした状態ではサラサラ唾液が多く分泌され、口の中がうるおいます。ストレスを感じたり緊張した状態ではネバネバ唾液になります。
食事や寝る時間がバラバラで、自律神経のバランスが崩れると、唾液の分泌に影響します。規則正しいリズムで生活することが大切です。

もしかして唾石症?初期症状・気になる症状を解説

ここでは唾石症の初期症状や、唾石症の疑いのある症状、病院へ行くべき目安や対処法などを解説します。

あご、首付近に痛みがある

唾石症による痛みは、何か食べようとした時、あるいは食べている時にあらわれ、しばらくすると自然に消失するのが特徴です。
唾石症の多くはあごの下にある顎下腺や排出管に生じるため、あごや首付近にこのような痛みが繰り返しおこる場合は、唾石症の可能性が高くなります。

小野寺先生の解説

食べ物を食べようとしたり、あるいは食べている最中に、唾液腺のある顎(あご)の下(顎下部)が腫れて激しい痛みが起こる場合は、すぐにかかりつけの耳鼻咽喉科または歯科へ受診してください。
食べ物を食べる事で唾液の分泌が促されて痛みが生じるので、痛みがある場合は1回食事をやめましょう。

口が乾きやすい

唾石により唾液の分泌が妨げられると、唾液の量が相対的に少なくなる可能性はあります。ただ唾液腺は大小あわせて複数存在するため、唾石症で口が乾きやすくなるのは非常に稀なケースといえます。
また口が乾く症状は他の疾患や薬の副作用などでもよくみられるため、その症状のみで唾石症と判断するのは難しいでしょう。

小野寺先生の解説

口の中が乾燥していると自覚している場合や、食べ物や刺激物を食べても唾液が出てこない場合はかかりつけの耳鼻咽喉科または歯科へ受診してください。
よく噛んで食べる、デンタルリンスや保湿剤を使用する、水分を多めにとることなどを意識するようにしましょう。また、内服薬を変更・調整するなどの対応が必要になる場合もあります。

唾石症についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「唾石症」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

唾石症の予防に梅干しやレモンは有用ですか?

小野寺先生

普段から唾液の分泌の促進を意識していることで、唾石症の予防が可能です。 唾液の分泌を促す食品として、梅干しやレモンを食べると良いと言われています。

唾石症を放置するとどうなりますか?自然に治ることはありますか?

小野寺先生

唾石が小さい場合などは自然排出され治癒する事があります。
痛みなどの症状が続く場合は、我慢せず病院へ行くことをおすすめします。

ストレスが原因で発症する可能性はありますか?

小野寺先生

あります。唾液の分泌は、自律神経(交感神経、副交感神経) によって調節されています。ストレスを感じたり緊張した状態ではネバネバ唾液になり、唾石が出来やすくなります。

まとめ

唾石症は主に食事中に痛みや腫れが唾液腺の周囲に生じ、しばらくするとその症状が自然に治る特徴的な症状をもつ病気です。
唾石の大きさや生じる部位によっては外科手術が必要なケースもあるため、もしこのような症状が繰り返される場合は、お近くの歯科または口腔外科、耳鼻科を受診しましょう。

唾石症と関連する病気

「唾石症」と関連する、似ている病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

歯科の病気

ドライマウス

シェーグレン症候群

化膿性唾液腺炎

流行性耳下腺炎

唾液腺腫瘍

唾石症と関連する症状

「唾石症」と関連している5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについては詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

口が乾く

口臭

虫歯

歯周病

根尖性歯周炎

【参考文献】

■順天堂大学医学部付属順天堂病院唾石症

■滋賀医科大学唾石症

■日本口腔外科学会唾液腺の疾患

■鹿児島大学大学院医歯学総合研究科唾液管内視鏡について

■大阪大学歯学雑誌短期間に再発し巨大化した顎下腺唾石症の1例

■汐田総合病院やってみよう!唾液腺マッサージ

■老木医院唾石症の手術

■ばば耳鼻科クリニック唾石症