家づくりで後悔しないために知っておきたい3つのポイントを紹介(写真:EKAKI/PIXTA)

多くの人にとって、一生に一度のライフイベントである「家づくり」。理想の家を建てたいと、注文住宅に憧れる人もいるでしょう。しかし実際に注文住宅を建てた人の中には、「思っていたのと違う」「こんなはずでは……」と後悔する人がたくさんいて、SNSは悔恨のつぶやきで溢れています。

『後悔しない家づくりのすべて』(サンクチュアリ出版)の著者で、一級建築士YouTuberのげげさんが、40代夫婦が建てた新築一軒家を大解剖。後悔しがちな点を指摘し、よりよい家をつくるためのポイントを解説します。

和室を「なんとなく」つくってはいけない

私はこれまでたくさんの「家づくりを終えた人々」からヒアリングをしてきましたが、そこで挙がってくる「後悔ポイント」の中には、共通項がいくつかありました。

今回は、とある一軒の家を例にとり、「後悔しやすい3つのポイント」を示していきたいと思います。なお、「これから家を建てる人のためになるなら……」と、この企画を快くお受けいただき、忌憚のない話を聞かせてくれたご夫婦に、感謝いたします。


居住者の実際の設計図。一般的な間取り、サイズで一見住みやすそうに見えるが実際は……?(画像:サンクチュアリ出版提供)

さて、間取りを見てまず目が行ったのは、1階の西にある和室です。3畳ほどの広さで畳敷きですが、「このスペースをなぜつくったのか」と聞いたところ「なんとなく畳のスペースがほしかったし、仕切れば客間として使えると考えた」とのお答えでした。そうして「なんとなくつくる」というのが、実は後に後悔を生むことが多いです。

このご夫婦の家では、畳が汚れぬようマットを敷いた上、お子さんの荷物起きになっているとのことでしたが、和室である必要性は低く、「フローリングのほうがよかった」と感じているそうです。

また「客間に使いたい」というのは、和室をつくる動機としてよく挙がるものですが、果たして家にゲストが泊まりに来る頻度はどれくらいなのか。ちなみにこのご家庭では、「両親が年に一度来るか来ないか、くらい」とのことでした。

ゲストルームを設えるには、当然お金がかかります。例えばゲスト用に6畳の部屋をつくるなら、予算は平均200万円ほどでしょう。その部屋を、年に数回しか使わないなら、1泊のコストは一体いくらになるか……。近くのホテルをとったほうが、あきらかに安上がりです。


「なんとなくつくった」という畳スペース。現状汚れないようにマットをしいてキッズスペースにしていて、和室である必要性は低い。「フローリングにして置き畳を買えばよかった」と感じているそう(画像:サンクチュアリ出版提供)

実際に、客間がほぼ物置きになっている家は、多いと感じます。たまにしか来ないゲストにお金をかけるより、そこで暮らす家族にとって居心地のよい空間をつくるほうに、予算を回したいところです。

後悔者続出!「開かずのバルコニー」

続いてのチェックポイントは、寝室の横にあるバルコニーです。寝室を見ると、ベッドを2つ並べるにはややこじんまりした造りで、その分バルコニーにスペースが割かれているように見えます。なぜこのような間取りを選んだか聞くと「布団を干すスペースとしてバルコニーがいると思った」とのことでした。

バルコニーは、多くの人が「あって当たり前」と考えて、なんとなく設置してしまいがちですが、果たして本当に必要でしょうか。「布団を干す」という点でいうと、例えば庭に干す、浴室や脱衣所に室内干しできるスペースを設ける、布団乾燥機を購入する、2階の窓の外に「布団干しバー」をつけるなど、バルコニーがなくともできることです。


まさにほぼ出たことのないという開かずのバルコニー。なんとなくつけてしまう設備の最たるもの(画像:サンクチュアリ出版提供)

ちなみに、「バルコニーでバーベキューをしたい」という施主の方もよくいますが、床を傷め、防水機能を低下させる原因となる可能性があるので、バルコニーでのバーベキューはおすすめしません(防水仕様によります)。

バルコニーのような屋外の設備は劣化が早く、メンテナンスコストもかかりがちで、排水溝などの掃除もしなければならず、維持にけっこう手間がかかるものです。

構造的にも、このご夫婦の家のように下階の部屋の屋根を兼ねているケースだと、外に面した部分の面積が大きくなるので断熱性能が下がり、劣化により防水性能が落ちて雨漏りをするリスクも高くなります。

近年は、花粉症やPM2.5の影響から外に干さない人も増えており、結果的にほぼ使用されない「開かずのバルコニー」が続出しています。デメリットを上回る明確な目的がないまま、なんとなくバルコニーをつくるのはやめたほうがいいでしょう。

「窓」は建物の構造的な弱点でもある

最後は「窓」について考えていきたいと思います。

「自然の光がよく入る明るい家」に憧れる人は多く、設計においても「窓を多くしたい」という要望をよく受けます。このご夫婦の家でも、南側を中心に窓はいくつも設けられており、光がたくさん入る設計となっています。

ただ、窓というのは「建物の弱点」であり、数を設けるほどデメリットが浮かび上がってきます。

窓を設置するのは、「その分、壁をなくす」ということに他なりません。その結果、まず断熱性能が低下します。いくら性能のいい窓でも、壁には断熱性が劣り、どうしても「窓辺が寒い、暑い」という状態になります。その他に、耐震性やメンテナンス性、コストといった点でも、壁に分があります。


ここで窓の本来の役割を考えてみると「自然の光を取り入れる」「景色を眺める」「出入りする」「通風をうながす」の4つになるかと思います。そこに窓が必要かどうか迷ったときは、この4つの役割を思い出せば、窓の取捨選択がしやすくなるはずです。窓は、必要最小限の数を、適切な場所に計画すべき、というのが私の基本的な考え方です。

このご夫婦の家でいうと、寝室にある窓は、冬に寒くなりやすく、しかも隣の家の外壁が迫っているため一度も開けていないとのことでした。こうした「開かずの窓」は、計画段階で可能な限り減らさねばなりません。

また、南側の大きな窓は「自然の光を取り入れる」という目的を叶えるもので、とてもいい位置に配置されていますが、ひとつだけ残念なのは、庇(ひさし)がないことです。


寝室東側の窓。隣家の外壁が迫り、採光も難しい。引っ越して以来一度も開けたことがないそう(写真:サンクチュアリ出版提供)

吹き抜けの2階部分にも窓がありますが、やはり庇がありません。冬には光がよく入ることで暖房効果を得られますが、その分夏にはかなり室内の温度が上がりやすく、それが光熱費に跳ね返ってきます。もし庇さえついていたなら、夏の冷房負荷をだいぶ抑えられるはずです(後付けできる製品もあります)。

このように、「和室」「バルコニー」「窓」の3つは、家づくりで後悔しやすい代表的なポイントです。間取りを決める際には、ぜひ慎重に検討してほしいと思います。