UoC UNIVERSITY of CREATIVITY 共同編集長の近藤ヒデノリ(Hide)と平井美紗(Misa)がお届けするInterFMの番組「UoC Mandala Radio」。クリエイターに“ワクワクする社会創造の「種」を聞く”というテーマで、毎回さまざまな領域で社会創造をおこなっているゲストを招き、未来に向けた創造やアクションについて語らいます。1月26日(水)の放送では、ミュージシャンの大沢伸一さんをお迎えしました。


(左から)Hide、大沢伸一さん、Misa


音楽家、DJ、プロデューサー、選曲家として、国内外のさまざまなアーティストをプロデュース・リミックス。広告音楽、空間音楽、サウンドトラックの制作や、アナログレコードにフォーカスしたミュージックバーをプロデュースするなど、活動は多岐に渡ります。

◆最新アルバムでは“コロナ禍で感じた思い”が投影

Hide:大沢さんには、UoCの「CREATIVITY FUTURE FORUM 2021」でお世話になりました。あのときは大沢さんの音楽活動以外の、環境に関するいろんな活動についてお訊きしました。今回は2月9日(水)にリリースされるMONDO GROSSOのニューアルバム『BIG WORLD』についてもたっぷりお話しいただきたいです。

大沢:ありがとうございます。

Hide:まずは2021年を振り返りながら、2022年に向けて考えていることと、アルバムに込めた思いを教えていただけますか。

大沢:この2年間って世界が同じような状況に置かれた、おそらくは歴史的にもそう多くない出来事だったと思うんですよね。近代社会になってからだと、これが初めてじゃないでしょうか。生活が不自由になったり、人によっては病気になったりいろんなことがあったと思うんです。

みんなにとって、考える時間が生じたんじゃないかなとも思っているのですが、“考えない”を選択した人もいるんですよね。ショックというか、驚きました。降って湧いた惨事ではあるけど、いい方向に考えられるきっかけだと思っていたんです。それって僕の幻想だったりするのかなと感じてしまいましたね。

Hide:その思いが今回のアルバムにも反映されているのでしょうか?

大沢:そうですね。たとえば今の状況も、物理的に奪われてしまったことっていろいろありますよね。ラジオの収録はアクリル板で仕切られているし、挨拶としてハグができる間柄だったとしても、それができなくなってしまっている。その背景には、精神的に奪われてしまたものも大きいんじゃないかなと感じています。

そういうことを僕の音楽で気付いてもらおうだなんて、厚かましい思いは持っていません。(アルバムは)アート表現の1つとして、僕がこのターム(期間)で思ったことを綴っているだけです。あくまでも、受け取り方は(聴く側の)自由なので。どう感じてもらってもいいと思っています。

◆アルバムタイトルの誕生エピソード

Hide:『BIG WORLD』というタイトルに込めた思いをお聞かせいただけますか?

大沢:前段として、説明しておかないといけないことがあります。僕およびMONDO GROSSOは、すごくコンセプチュアルにできているものだと感じていらっしゃる方が多いと思うんですけど、実はすごく行き当たりばったりというか。いい言い方をするならば、その場その場で起きる偶発性を活かしたプロジェクトなんですね。

Hide:そうなんですね。

大沢:『BIG WORLD』というタイトルに関しても、「何か作ってやろう」という思いは一切ないんです。僕のパートナーでもあるRHYME(ライム)にこのアルバム制作に参加してもらったんですが、書き下ろしてもらった歌詞のなかに「BIG WORLD」があったんですよ。「MONDO GROSSOはイタリア語でBIG WORLDって意味でしょう? こんなタイトルの曲があっても別にいいんじゃないの?」みたいな感じで、さらっとできた曲なんです(笑)。

Hide:ほうほう。

大沢:自分の周りの小さなことから、世の中を揺るがすようなことまで世界では起こっているっていうことを、彼女なりに綴った曲です。なるほどねと感じましたし、「だったら、それをアルバムのタイトルにしてもいいじゃん」っていう、それぐらいの軽い気持ちでした。「大きな世界」と定義したなか、みなさんでいろんな解釈をしていただけたら嬉しいです。

◆“直感”を重視して多様なアーティストに声をかけた

Misa:今回のアルバムではさまざまなボーカリストが選ばれていますが、どういった観点からお選びになられたのでしょうか?

大沢:繰り返しにはなってしまうんですけども、あまりコンセプチュアルに考えていないんですよ。パッと浮かんだ人にコンタクトを取ってみたり、「そういえば僕に興味があるって言っていたな」って人に声をかけてみたりしました。

いろんなご縁があり、著名なアーティストがたくさん参加する形にはなったんですけども、そこがポイントではなくて。「思いついた」「名前が出てきた」みたいな“直感”を重視しました。直感は僕だけではなくて、スタッフから出てきたものも採用しています。

Hide:満島ひかりさん、田島貴男さん(Original Love)、中島美嘉さん、中納良恵さん(EGO-WRAPPIN')といった方々と縁を感じて「一緒にアルバムを作りたい」と思われたわけですね。

◆作曲スタイルが変わった転機

Hide:「コンセプチュアルじゃない」と何度かおっしゃっていますけども、それって本当の意味で“人間”らしい感じがします。頭だけじゃなくて、自分のいろんな感覚を大事にしているのかなと思いました。

大沢:そうですね。デビューして20何年と経っているのですが、音楽の作り方というものをガラッと変えた時期があるんですよ。そこからの方向性は同じですね。自分の頭のなかに鳴っている音楽を再現するってことは、自身のアートを表現する上ですごく邪魔だと感じてしまったんです。

なぜかと言うのは、英語で言ったほうがわかりやすい気がします。「sense」と「taste」。日本人って、持ち味がいいことを「センスがいい」って言いますけども、本当の意味でセンスがいいのは「感じる力が高いこと」を指すんですよ。そう考えると、自分の頭のなかの音楽を出すことはtasteになるんですよね。

Hide:なるほど。

大沢:感性で音楽を作るっていうのは、目の前で鳴っている音や音にもなっていない断片に対して「どれを抽出するか」を考えることだと、自分なりに結論付けました。世界には膨大に音楽があるのに、そのなかで自分の蓄積したものだけで表現しようというのは“稚拙”だなと僕は思っちゃったんですよ。そう考えてからは曲の作り方が大幅に変わり、クリエイションが自由になりましたね。

◆人と人を繋げることに尽力したい

Misa:大沢さんにとって、ワクワクする社会創造のタネって何ですか?

大沢:非常に難しい問題ですが、「人と人を繋げること」ですかね。それはこの2年で意外とやってきたようには思います。自分の音楽活動とは全然違うところで思いついたことを実現するために、いろんなところに行って、いろんな人と話して、いろんな人を紹介しました。それが今、一番ワクワクしますね。

Hide:アルバム自体も人と人を繋いだ作品になっていますもんね。

大沢:まさに! 今まで音楽でやってきたことを違う活動でやり始めた感じはありますね。

Hide:面白い。下手に人に合わせるぐらいなら、群れないほうがいいですよね。

大沢:はい。僕にとって群れるっていうのは、妄信的に調子だけを合わせているイメージがあるんですよ。それよりかは、「一緒にいるけれど、ずっと一緒にいるわけじゃない」のような形がいいというか。

個々がちゃんと“自分”を持っていて、そのなかで「ここは一緒にやろうぜ」と声をかけるのが、僕が今やりたいことです。その実現のためには、人と人を繋ぐことってすごく有効なのかなって思いますね。

次回2月2日(水)は、まもなく、募集開始となるUoC第2期ゼミについて、担当ディレクター・プロデューサーと一緒に紹介していきます。お楽しみに!

番組でお届けしたトークは音声サービス「AuDee」 https://audee.jp/program/show/100000316と「Spotify」 https://open.spotify.com/show/6biaO40gUuf4gbI2QhdTsL?si=C2-xOifkQz230V6X514UlAでも配信中。

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聴取期限 2022年2月3日(木)AM 4:59 まで

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<番組概要>
番組名:UoC Mandala Radio
放送日時:毎週水曜23:00-23:30
パーソナリティ:近藤ヒデノリ(Hide)、平井美紗(Misa)
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/mandala