30代女性と40代半ばの女性のデートにおける「世代間ギャップ」とは(写真:Fast&Slow/PIXTA)

結婚相談所の経営者として婚活現場の第一線に立つ筆者が、急激に変わっている日本の婚活事情について解説する本連載。今回はデートにおける女性側の「世代間ギャップ」について解説します。

年収3000万円の男性とのお見合いを拒否

コロナ禍で人と会うことが制限されている中、家族のよさや結婚が見直されるようになり、婚活する人の年齢層の幅が広がっています。新卒1年目の20代もたくさん参入していますし、50代、60代も増えました。


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世代によって価値観、結婚観が違うのは当然のことではありますが、意外なことに、世代としては近い30代女性と40代半ばの女性の間にも、はっきりとした世代間ギャップがあるように感じます。 30代前半の年収1200万円の女性、真由さん(仮名)。

先日、年収3000万円の30代男性とのお見合いをご提案しました。すると、「いえいえ、3000万円は私が稼ぐので、3000万円の男性は望んでいません」とやんわり断られました。

「お互い3000万円あったら、なおいいのでは?」「いや、3000万円稼ぐ男性は、家事をしてくれる女性がご希望かもしれません。私も家事をしてくれる男性のほうがいい。無職でもいいくらいです」と真由さん。

結婚相談所の会員で無職の男性はいません。それに無職では、いずれ子どもが生まれたとしても早々に職場復帰しなければなりません。「何があるかわからないから、せめて定職はあったほうがいいと思いますよ」とアドバイスし、2歳年下の年収400万円の男性とお見合い、交際することになりました。

スーパーの特売日を把握していて、その時にまとめて買い物に行くというしっかり者の男性です。 真由さんの世代は、職場では男女がフィフティーフィフティー。「女の子だから早く帰っていいよ」なんていうことはありません。男性と同じように働き、男性の部下もいる社会。母親もまだ50代で働いています。「女性だから男性に大事にされなければならない」「女性だから男性にご馳走してもらおう」という固定観念がありません。

条件は「大型犬が飼えるマンション暮らし」

対して、40代半ばの女性、恭子さん(仮名)。お母様は60代後半で高度経済成長期に生まれ、バブル時代をしっかり謳歌した世代です。そのため「ダイヤのエンゲージリングを買ってもらうなら、給料の3カ月分、200万円くらいが相場よね」と娘に昭和の結婚観を押しつけてきます。

実は、給料の3カ月分というエンゲージリングの相場は、ダイヤモンド会社の広告戦略から始まり、1987年に郷ひろみさんが元妻の二谷友里恵さんと結婚した際、「給料の3カ月分の指輪を贈った」と発言したことが決定打となって世間に広まったと言われています。

今の相場は1カ月〜1.5カ月分くらい。しかし、そのお母様は「1カラットなかったら指輪じゃない」「パパがこれだけ稼いでいたんだから、あなたの結婚相手だってこのくらい稼がないとおかしいでしょ」などと娘に吹き込む。 さらに困ったことに、この恭子さんは家の中で大型犬を飼っていて、結婚時にはその犬を連れて行くというのです。

室内で大型犬を飼うには、かなり広いリビングがないと難しい。どうしても犬を優先したいなら、郊外の戸建てという手もありますが、恭子さんは「戸建ては寒いから嫌」「都心のマンションじゃないと嫌」と譲りません。

条件を60代、70代の資産家まで広げればなんとかなるかもしれませんが、「年齢は5歳上まで」という条件も譲らない。犬を実家にまかせるという選択肢もありません。

恭子さん自身は年収800万円。「恭子さんと夫の収入を合わせて1600万円あればなんとかなるかもしれませんよ」とアドバイスしても、「それじゃあ何のために結婚するのかわからない」との返事。自分も協力して広いマンションを買うなり借りるなりしようという発想には至りません。自分の稼ぎは自分のもの。好きなように働いて、好きなことをしていたいようです。

恭子さんにとって結婚は「夫が面倒見てくれるもの」。その固定観念から抜け出せていないんです。そのため婚活は苦戦中。「恭子さんも生活費を10万円ぐらい入れてはどうですか」と少しずつ説得しながら婚活しています。

「デートで5000円取られた」と苦情

真剣交際に進んだものの、エンゲージリングの相場でモメて破談になった女性もいます。やはり40代半ばの女性でした。彼女は「200万円以上のエンゲージリングがほしい」と希望。お相手の男性は年収1500万円ありますが、堅実な方で「100万円くらいに抑えてほしい」と言う。結局、「ママに相談したら『そんなケチな男、ダメよ』と言うので」とお断りしました。

デート代を絶対に出さない女性もいます。結婚相談所では、1回目のデート代は男性が出しますが、2回目以降はお2人にお任せすることになっています。2回目のデートの食事で、その女性は払うつもりはなかったけれど、形式的に「いくらですか」と聞いたら、2人で1万3000円。男性から「僕が8000円出すから、君は5000円ね」と言われて悔しかったそうです。

あとから私に「デートで5000円取られた」「あの男性、最悪だわ」と文句を言っていました。「そんなふうに言うなら、最初から『ごちそうさまでした』と言えばよかったのでは?」と言うと、それはできないそうです。要は「図々しい」と思われたくないけれど払いたくないんですね。

別の女性は、5回目のデートで男性がお酒をかなり飲んで酔っぱらってしまい、仕方がないから2万円を支払ったそうです。すぐに私に電話をしてきて「これまでは全部おごってもらっていたのに、今回は2万円、私が立て替えました。相手の相談所に連絡して2万円の返金を依頼してもらえませんか?」と言う。

「もともとデート代をすべて男性が出すというルールはないですよ」と言うと、「私のほうが若いし、男がごちそうするのが当たり前ですよね」と主張。結局、そのデートを限りに女性は振られてしまいました。もしかしたら男性は最初から「これでおしまい。最後くらい払ってもらおう」と思って、気が済むまでお酒を飲んだのかもしれません。

やはり40代半ばの女性、玲子さん(仮名)。5歳ほど年上の男性と映画を見に行きました。「何を観るかはおまかせします」と玲子さんから言ったのですが、男性が選んだ映画がつまらなかったそうです。彼自身も期待はずれだったようで、まだエンドロールが流れている暗いうちに「もう出よう」と、席を立って行ってしまいました。

その時「暗いし、私はヒールを履いているのに気を遣ってくれなかった」「そもそも選んだ映画がひどい」と、デートに後に私に文句を言う。自分が「おまかせする」と言った手前、本人には何も言えずに私に愚痴を言うわけです。 その後、蕎麦を食べに行ったそうなのですが、そこでも彼女が望むようにことが進まなかったようで、「私がエスコートをする必要はない」「蕎麦にもコシがなかった」と愚痴のオンパレード。

10年前とはアドバイスも変わっている

デート代は割り勘か、男性が出すのが当たり前か。30代の女性の多くは割り勘を当然と考えています。場合によっては、「今日は私のほうがいっぱい食べたから」と自分が多めに払ったり、おごったりすることもある。

今の30代バリキャリは、今後40代、50代と「もっと年収を上げていくんだ」という自信があります。男性から見ると、そんな姿はとても尊敬できる存在です。 しかし、40代半ばになると人によって意識が別れるようです。親の影響もあるでしょうし、本人もチヤホヤされた20代をそのまま引きずっているのかもしれません。確かに彼女たちが20代の頃は、男性の意識も違いました。

私も10年ほど前までは男性に対して「女性をお姫様扱いしてください」とアドバイスしていました。しかし、社会状況や経済状況が変われば、男女の関係性もそれぞれの価値観も変わります。

単に「遊び」が目的であれば、まだチヤホヤしてくれる男性はいるかもしれませんが、結婚となると今の男性の目はシビアです。一緒に稼いでくれるのか、生活能力があるのか、自分が仕事でうまくいかない時にサポートしてくれるのか……。一生その人と添い遂げるための判断をします。 40代半ばの「お姫様きどり」の女性と会った男性に言わせると、「結婚後の生活費の話になるとまるで話にならない」「お金の話になると、高い要求をしてきてしんどい」「友だちとして遊ぶのはいいけれど、結婚したときのイメージがわかない」と言います。共に生きる感じがしないので不安になるようです。

相談所を複数はしごする人も

こうした女性たちに、「逆にあなたは男性に何をしてあげられるのですか?」と問うと、みなさん「私のほうが少し若い」などと言います。確かに若い女性を好む男性がいることは事実ですが、そういう男性は、20代の女性を求めます。

生活費を全面的に出してもらう代わりに、割り切って家事に徹するのかと思えば、家事は「分担してほしい」「ある程度はやってもいいけど……」という人が多い。 このようなタイプの女性は、やはり婚活で苦戦します。結婚相談所が2カ所目、3カ所目という人も少なくありません。「前の相談所のアドバイザーからは『そんなにきれいなのに、なぜ結婚できないのかしら』と言われた」と、結婚できない原因に正面から向き合おうとしません。

「条件のレベルを下げないと結婚できませんよ」と厳しく指摘した相談所に対しては「あの相談所は意地悪」とまったく取り合わない。 こうしたタイプは「自分は稼いでいる」と自信を持っていますが、1000万円、1500万円と稼ぎながらさらに上を目指そうと努力し続けている30代女性からすると、年収だけでなく意識の高さも到底及びません。10歳も違わない両者ですが、ここで大きな意識の差が生じているのです。