この記事をまとめると

■毎冬、各地で大雪による通行止めや立ち往生が発生している

■巻き込まれた場合、EVはとくに危険なイメージがある

■しかしむしろEVの方がリスクは少ないといえる

日産リーフe+なら60時間ヒーターを使い続けることができる

 毎年冬になると大雪による通行止めや立ち往生のニュースが流れてくる。2020年の12月には関越道で大雪の影響で2000台以上が立ち往生し、52時間も身動きがとれないこともあった。

 こうした雪による立ち往生に巻き込まれたとき、EVはガソリン車やディーゼル車よりハイリスクといわれることがあるがなぜだろう。

 ひとつには、EVやHEVに搭載されているリチウムイオン電池やニッケル水素電池の使用温度範囲が0〜45℃程度に定められていて、氷点下になると20%ほどバッテリーの性能が落ちるといわれているため(走行距離での比較)。

 スマホのバッテリーも寒さには弱いし、ガソリン車の始動用バッテリーも極寒になると化学反応が鈍くなり、性能低下するため、エンジンがかかりにくくなることを経験上知っているので、EVも寒さには弱いというイメージがあるからだ。

 もうひとつはヒーターの問題。ガソリン車などはエンジンの排熱を暖房に利用することが出来るが、EVの場合、再利用する熱源がないので、暖房のために電力を使う必要がある。

 したがって雪で立ち往生すると、暖房の使用=電力消費になり、その電気を使い果たすと暖がとれなくなって凍死や低体温症の心配が……。

 しかし、最新のEVはヒートポンプ方式の暖房になっているので、電費は大幅に改善されている。

 JAFが日産のリーフを使って行なったテストでは、バッテリー残量70%からスタートし、外気温−8.1℃で、オートエアコンは25℃に設定したところ、おおむね10時間弱で残量10%になったとのこと。

 これは外気温とヒーターの設定温度が33.1℃とかなりシビアなコンディションなので、もっと設定温度を下げて、外気温との差を18℃ぐらいにすれば、消費電力は800W〜1kWで済むはず。

 日産リーフe+ならバッテリー容量は62kWhもあるので、満充電ならヒーターを入れっぱなしでも60時間、バッテリー残量が半分でも30時間はヒーターを使い続けることが出来る。

 2021年に北見工業大学が日産リーフ(2017年式 総電力量40kWh)で行なった大雪で立ち往生した状態を想定した実験では、96%充電からスタートし、暖房の設定温度を18℃にした場合、10時間後でもバッテリーの残量は41%あった。

バッテリー残量さえあればEVの方がリスクは少ない

 ちなみにガソリン車では、エンジンを止めたままではヒーターを使うことは出来ない。ヒーターを使うのにはエンジンをアイドリングで回し続ける必要があり、アイドリング時の燃料消費量は、乗用車で1時間当たり0.8〜1リットルぐらいといわれている。

 ということは、60リットルが満タンのクルマで最長60時間、ガソリンの残量が半分の状態で立ち往生に巻き込まれたら30時間しかアイドリングを保てないので、暖房を使い続ける時間でいえばEV(ヒートポンプ式)もガソリン車もほぼ条件は同じと考えていいだろう。

 そのうえでEVなら、シートヒーターやハンドルヒーターがあるので、暖房の代わりにこれらを使う、あるいはシートヒーターを併用することで暖房の設定温度を低く抑えることができれば、電費はさらに抑えることが可能。

 ヒートシーターだけなら100Wぐらいしか使わないので、バッテリー残量が30kWhだとしても300時間、ハンドルヒーター、その他と合せ200W消費しても、150時間は耐えられる!

 さらにいえば、ガソリン車の場合、大雪で閉じ込められると、マフラーの出口が雪で塞がり、エンジンをかけたままだと一酸化炭素中毒になる恐れがあるが(これが一番怖い)、EVはそのリスクがないので、むしろ安全度はガソリン車より上だともいえる。

 問題があるとすれば、立ち往生が長時間続き、バッテリーが電欠したとき。ガソリン車ならガス欠になったとしても、携行缶などで即座に給油することが出来るが、電欠したEVはレッカーで充電設備のあるところまで牽引してもらわなければならないからだ……。

 一方で、NEXCO中日本がこの冬NEXCO中日本が、「EV車に向けた可搬式充電器(28台)や電気自動車用急速充電車(1台)を配備」することを発表。

 大雪による滞留が発生した際の備えとして、ガソリン車への燃料補給に加え、EV車への充電対応などの強化もはじめている。

 というわけで、バッテリー残量さえきちんとあれば、EVでも大雪による立ち往生時のリスクがガソリン車に劣ることはなく、むしろアドバンテージがあるぐらいだが、動力源を問わずそもそも大雪で閉じ込められないのが一番の上策。

 気象情報や道路状況の収集を怠らず、大雪が予想されるときは高速道路や山道を通らないことを大前提にしよう。