私は手術を繰り返し受けましたが、退院して1ヶ月経たずに術前に近い症状に戻ったこともあります。今では、人の顔は、「のっぺらぼう」にしか見えず、街中の光景は薄靄がかかって見え、下り階段は段差が見えない為にグレーの板が続いているようにしか見えません。そこで、私は、出来る事をしようと思うようになりました。撮れない間は写真展を見て、安定する毎に作品を撮る。そんな生活を繰り返しています。不思議な事に自分の現状を受け入れられるようになってからはコンテストでの入賞も叶うようになりました。悟平さんは自分の病気を“ギフト“と表現していますが、私にとっては緑内障が正にギフトだったのです。

見えなくなり続ける日々の中で、カメラを携えて撮影に出歩くようになり、その試行錯誤の中でたどり着いたのが「見えない自分の視界を表現すること」です。1800年代末に流行したモノクル(片眼鏡)をヒントに、視界がぼやけ、幻視も見えてしまう私の視界を表現するために、多重露光と長時間露光を基本とし、複数枚の画像を重ね作品とするファインアートという世界にたどり着きました。初めての個展を開催するにあたり、立ち直る契機をくれた西川悟平氏への感謝を込めて、彼のコンサートやリハーサル中に撮影させて頂いたポートレート作品も別室にて展示します。どうか楽しんでもらえれば幸いです。

【豊吉 雅昭(Masaaki Toyoyoshi)氏の略歴】
1975年 埼玉出身。
1997年 論文「robotとHot Sauceを用いた個人Home Page環境管理」をIPSJに発表。
同年 東京国際大学 商学部卒業後、日本システム技術株式会社に勤務。
    ショッピングモールの販売管理システムやDWHシステム開発などに携わる。
2002年 日本野球機構のプロ野球公式データベースシステム開発を担当。
    同時期に緑内障に罹患し退職。
2010年 写真家 所幸則氏に師事。
2015年〜2021年 緑内障の進行により4回手術を受ける。
2016年 緑内障による視野欠損をテーマとした作品「MONOCLE VISION」に取り組む。
2021年 緑内障は年々進行し、現在は左眼の視野の大半と右目の視野の3割程度を喪失。
一般社団法人緑内障フレンドネットワーク正会員。プラクティカルフォト7期生。オンライン写真教室toru-asobの水先案内人の一人。
Masaki Toyoyoshi - Fine Art Photography HP : https://toyokiti.com

《取材受けた記事》
2018年03月 ノバルティス疾患啓発記事
https://www.novartis.co.jp/stories/education-awareness/patiet-glaucoma?f

《TV出演》
2020年08月 緑内障患者/写真家としてNHK Eテレの番組に出演

《受賞歴》
2017年01月 埼玉県流域下水道50周年記念コンテスト入選及び人気投票賞
2018年02月 日本アート教育振興会フォトレビアワード2017下半期入賞
2019年07月 飾りたいと思う写真展『アートの競演 2019涼月』G.I.P Tokyo賞受賞
2019年11月 日本アート教育振興会主催「art photo展2019」Best Photographer賞受賞
2020年09月 飾りたいと思う写真展『アートの競演 2020長月』M84賞受賞
2021年10月 Honorable Mention at Professional IPA (Fine Art Category)

《展示歴》
2012年12月 第7回コスモス展『vol.7』ギャラリーコスモス(東京・目黒)
2013年11月 所幸則写真展『アインシュタインロマン』Gallery Conceal(東京・渋谷)
2017年11月 所幸則C.p.f.写真展『進化evolution2017』Gallery Conceal(東京・渋谷)
2018年07月 写真展『アートの競演 2018観月』Art Gallery M84(東京・銀座)
2019年01月 写真展『アートの競演 2019寒月』Art Gallery M84(東京・銀座)
2019年04月 所幸則C.p.f.写真展『進化evolution2019』Gallery Conceal(東京・渋谷)