前DeNA監督のアレックス・ラミレス氏【写真:荒川祐史】

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DeNA監督時代に芽生えた編成トップへの思い

 選手としてNPB通算2000安打を達成し外国人初の名球会入り、DeNA監督として5年で3度のAクラスに導いたアレックス・ラミレス氏が次に見据えるのは――。「Full-Count」のインタビューに応じ、NPB球団でゼネラルマネジャー(GM)に就任するという野望を明かした。

「GMになって、いいチームを作るという目標を持っています。GMはチームを作り替えることができる。例えば少し苦戦していたチームがGMによって再建できた、上昇できたというのは凄く魅力的なことだと思っています。僕の大きな夢として、NPBチームのどこかでGMをやりたいですね」

 初めて気持ちが芽生えたのはDeNAの監督時代。チーム編成の権限を持つGMという立場に「自分の決断でより良いチームを作れる。いつかやってみたい」と思うようになった。5年間の監督業を全うし「家族と過ごす時間をつくりたい」と昨年は野球界を離れたが「自分はやはり野球人。機会があるのであれば野球界に戻りたい気持ちがある」と情熱は失っていない。

「僕はメジャーリーグにもいたのでコネクションがあって、スカウトやGMも何人も知っている。日本とアメリカと南米のことをよく分かっているのは、プラスに働くと思います」

 事実、選手を見る目は確かであり、活躍するための助言も的確だ。入団テストを経てDeNAに入団したネフタリ・ソトは1年目から2年連続本塁打王に輝いた。元々力があっても異国で活躍できない助っ人も多いが、エドウィン・エスコバーはDeNA移籍後に花開き、タイラー・オースティンも1年目から結果を残している。野手には打撃練習後、欠かさず声を掛けてアドバイスを送るのは毎日の光景だった。

「自分自身が外国人選手として多くのことを経験したので、どういう選手が適正能力が高いのか、日本で活躍できるかという見る目、接し方はよく分かっています。ただ国籍関係なく、僕は日本で活躍したので日本人選手のことも凄く分かります」

 2020年には、控え選手だった佐野恵太を主将に抜擢。能力を信じて4番起用を続けると、この年106試合に出場して打率.328で首位打者、20本塁打69打点、ベストナインに輝くなど大ブレークした。

夢への一歩「アジアンブリーズ」GM就任

「GMになりたいという目標があったらそれに向けて準備したり計画を立てたり、夢に向かって動くのは人間みんなすること」というラミレス氏はこの度「アジアンブリーズ」のGMに就任した。

「アジアンブリーズ」はNPBを戦力外になった選手や、独立リーグで機会に恵まれなかった選手らに、世界中でプレーするチャンスを与える団体。日本では1度戦力外となるとプレー機会に恵まれないことも多いため「埋もれている才能をアメリカや世界各国に紹介する団体です」と説明する。

「MLB球団とマイナー契約してそこからメジャーに挑戦したり、ラテンアメリカもメキシコ、プエルトリコ、ベネズエラなどリーグがある。もちろんアジアやヨーロッパのリーグでもプレーするチャンスを与える。世界中に野球のリーグはあるんです。逆に海外の選手を日本に紹介するというのもやっていきたい」

 夢への第1歩、まずは「アジアンブリーズ」で“ラミレスGM”が誕生した。これまで日本で成功する夢、そして日本で監督を務める夢を叶えてきた男は、やはりポジティブだった。

「僕がもし外国人野手を連れてくる権限があるのであれば、1軍でプレーさえすれば25〜30本打つのは保証できる。プラスとマイナスな部分は数字を見たりしてすぐ分かるので、そこはかなり自信を持っています。もしGMになれたら、ファンは“ラミちゃんだったら何かしてくれるんじゃないか”と期待してくれると思う。何かいい部分をお見せしたり、決断する準備はもうできています」

 いつの日か、NPB球団に“ラミレスGM”は誕生するのだろうか。もし実現すれば、どんなチームを作り上げるのだろうか。ファンはきっと、その日を楽しみに待っている。(町田利衣 / Rie Machida)