この記事をまとめると

ポルシェは成功者の証とされることが多い

■スポーツカーでありながら実用性が高い点がその理由のひとつとして考えられる

■SUVのカイエンの登場で新たなユーザー層を獲得した

スポーツカーでありながら実用性が高い

 ポルシェはなぜモテるのか。いまや成功者の証として選ばれることも多く、自動車雑誌で特集を組めばハズレなしと言われるほど支持者も多いこのドイツのブランドの人気の理由はなんなのか。

 僕もモータージャーナリストのはしくれなので、たまにポルシェに乗ることはあるが、欲しいと思ったことはない。そんな輩にポルシェを語る資格はないと思う人がいるかもしれないが、逆に業界内にも多いポルシェ好きの人たちより、冷静に見ることはできると自負している。

 しかもかつて弟がタイプ930の911SCに乗っていたし、カー・マガジンというヒストリックカーを扱う雑誌の編集部にいたので、空冷911については2リッターのSやカレラRS2.7を含めて場数は踏んでいて、オーナーの声も弟などを通して耳に入ってくる環境にあった。

 そのなかで今でも記憶に残っている言葉は、「ポルシェは腹が出ていても乗れる」というもの。カイエンが出る前の話だが、他のスポーツカーはフェラーリにしてもロータスにしてもペッタンコで、プックリ体型の人は乗り降りに苦労するが、ポルシェなら大丈夫というわけ。

 スポーツカーとしては実用性が高いことを的確に表現したエピソードだ。それならメルセデス・ベンツSクラスに乗ればいいじゃんと思うかもしれないけれど、オジサンになってもカッコよく見られたいというのは多くの人が抱く願望。一定以上の所得を持つ人にとって、ポルシェはその願望を楽に叶える存在だったのだ。

カイエンはさらにユーザーを増やした

 カイエンが登場したことでその敷居はさらに低くなったわけだが、カイエンはさらに新しいユーザーも取り込んだ。スポーツカーには興味がないけれど金銭的には余裕があるファミリーたちだ。その時の話で印象的だったのは、彼らにとってポルシェとは911のことではなくカイエンを指すということ。

 理由はこちらもカッコよさ。たしかにカイエンやマカンは数あるSUVの中では顔つきが飛び抜けてスポーティだ。911顔とSUVボディをドッキングさせたスタイリングは、当初は奇妙にも感じたけれど、結果的には大当たりだった。

 2つのエピソードに共通するのは、カッコいいのに使いやすいということ。まずスポーツカーの911でこの相反する条件を両立させ、SUVが注目されるといち早くカイエンで回答を出した。多くの人がクルマに求める二大要素を高次元で両立しているからこそ、定番商品として君臨し続けていられるのだろう。