UoC UNIVERSITY of CREATIVITY 共同編集長の近藤ヒデノリ(Hide)と平井美紗(Misa)がお届けするInterFMの番組「UoC Mandala Radio」。クリエイターに“ワクワクする社会創造の「種」を聞く”というテーマで、毎回さまざまな領域で社会創造をおこなっているゲストを招き、未来に向けた創造やアクションについて語らいます。12月22日(水)の放送では、アブストラクトエンジン代表の齋藤精一さんをお迎えしました。

(左から)Hide、齋藤精一さん(PC画面)、Misa


株式会社アブストラクトエンジン(旧:ライゾマティクス)の代表である齋藤精一さんは、メディアアートやインタラクティブな広告、エンターテインメント、建築、都市開発などで活躍。ミュージシャンたちの近未来的なライブ演出でも知られるほか、ドバイ万博のクリエイティブ・アドバイザーやグッドデザイン賞の副委員長を務めています。

◆ドバイ万博のクリエイティブ・アドバイザーを担当

Hide:ドバイ万博は2021年10月1日(金)から2022年の3月31日(木)まで開催されているんですよね。齋藤さんは、ドバイ万博の日本館で全体的なアドバイザーをされています。今狙っていることや、その先に見る大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)の話も聞きたいですね。

齋藤:僕自身、万博に関わったのはミラノ万博(2015年ミラノ国際博覧会)からなんですね。当時、僕は日本館の「LIVE PERFORMANCE THEATER(ライブパフォーマンスシアター)」のクリエイティブ・ディレクターを担当させていただきました。今回のドバイ万博は、具体化検討ワーキンググループの委員から立ち会っています。

国は国でデザインのことを勉強して頑張られているんですけども、やっぱりデザインやクリエイティブなことってなかなか評価できないじゃないですか。何が美しいとか、どういったデザインの人たちと一緒に取り組むべきなのかとかがわからないと。それで、「外部からデザインを見るチームを作ろう」という話になって、僕と株式会社POOL代表の小西利行さんが日本館のクリエイティブ・アドバイザーに選ばれました。

日本館は建築家の永山祐子さんがデザインしまして、日本の「麻の葉文様」と「アラベスク」を組み合わせた格子となっています。まるでシルクロードで繋がっているかのようでして、日本的な解釈もできるし、ドバイ的、中東的な解釈もできます。

Hide:すごく華やかなデザインですよね。その上、環境的機能も持っていて評価されるのもわかるなと思いました。

齋藤:(開催には)いろんな調整があって、すごく苦労しましたね。本来であれば2020年10月からの開催だったのですが、コロナ禍の影響で1年延期になってしまって。しかも、僕はまだ現地に一回も行けていないんですよ(笑)。

Hide:そうなんですか!? そうか、コロナ禍で行けない状況なんですね。

齋藤:3月までは開催されているので、そこまでには行けるといいなと思っています。クリエイティブ・アドバイザーとしてリモートで確認しながら、ロゴやコンテンツの話などをクリエイターの方々と協業しながら作っていきました。それが世界的にも評価され始めて、マストビジットのナンバーワンになりました。

ですが、まだ万博のなかでゴールドを貰えていないので、そこが獲れるといいなと思っております。一連の取り組み、建築、ファッションだったり、日本のデザインがやってきていることって、世界でも評価ができるものなんですよね。大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」なので、いろんな分野のデザインの方々が関わって作っていけるといいですよね。

◆大阪・関西万博開催にあたって望むことは?

齋藤:「Where ideas meet アイディアの出会い」が、ドバイ万博日本館のテーマになっています。最近の万博って、フェスティバル的なものになっているなと感じていて。それぞれの国がどれだけすごいかっていうことを伝えていくのは、それはそれですごく大事なことだと思うんです。

ただ、万博というものはもっと世界課題を考える、あるいは解決するアクションを起こしていく場所にしていかなきゃいけないと思うんですね。日本はいろんな国と関係を持ちながら発展している国だと思うし、課題先進国として、自国の問題の解決策をできるだけ多くの人たちにシェアしていく時代にあるんじゃないのかなと感じていますので、“アイディアの出会い”というものをテーマとして取り入れました。

大阪・関西万博って、関西が付いているのがけっこうミソで。夢洲(ゆめしま)の155ヘクタールのなかでパビリオンが建っていくんですけども、プラスアルファで周りの関西広域、あるいは日本全体で実際にソリューション(解決策)が実装されている場所を見に行くような万博になるんじゃないかなと思っています。

Hide:なるほど。

齋藤:要は、アイディアが社会にどう実装されてきたのかを見てもらえるような万博。なんだったら、それらを何かしらの方法で持って帰ってもらう。そうなれば、のちのちの日本産業への実装に繋がっていくかもしれないですよね。そういう万博にできたらいいなと思っております。

◆これまでの積み重ねが今の自分を形成している

Misa:私からすると、齋藤さんは“クリエイターの指揮者”だと思っていて、私はグラフィックデザインを学んできて、広告の仕事をやっているんですが、齋藤さんも広告代理店で働いていた経歴があって、どんどん形を変えてきて今の姿があると思うんですけども、どういう動機で変化したのかが気になっています。

齋藤:なるほど。実はですね、やっていること自体は以前から変わっていなくって。広告代理店でクリエイティブをやっていましたけども、広告はまだ作っていますしね。広告代理店時代は全然考えていなかったんですけど、あるタイミングから「そもそもで、広告をする商品自体がよくないんじゃないか」ってことを言い始めたんですね。

Hide:はい。

齋藤:じゃあ、次は「何が悪いのか」って話になるじゃないですか。それで「社内ブランディングがよくない」ということになるわけですが、「法律や条例によって作りたいものが作れない」という問題に直面するんですよ。そこから「法律や条例は何故変えられないんだ」って思うようになったんですね。

どんどん原因を探っていった結果、今にたどり着いたわけで。やっていることは昔から変わっていないですね。なので、今でも現場に行って設営もしていますし、多くの人に知ってもらうような広告や映像を作るようにしています。結果論として、守備範囲が広くなったって感じですね。

◆2021年のグッドデザイン賞を振り返る

Hide:いろんなジャンルのクリエイティブな人だったり、デザイナーをしっかり繋げたり評価する意味で、グッドデザイン賞の副委員長をやられていると思うんですね。齋藤さんが感じた2021年の潮流とか、総評はいかがでしたか?

齋藤:近年のグッドデザイン賞の傾向として、モノだけのデザインだけじゃなく、取り組みだとかプロセスのデザインがすごく大きく入って来たなと感じています。デザインって小さいものを大きく、いろんな人に知ってもらう機会なんですよね。もしくは、自分が作ったものをできるだけ多くの人たちに使ってもらって、よりよい社会を作っていく。すべてのものづくりに携わっている人はそう思っている気がします。

今年に出てきた作品、取り組みやデザインも含めてなんですけど、すごく小さな問題を自分たちで解決するアクションを起こしていったっていうのが大きいかなと感じています。たとえば、震災が起きてお風呂がなくなり、自分の家を建て直す際に銭湯を新設して皆さんに入ってもらうようにした熊本の「神水(くわみず)公衆浴場」とか。

Hide:ありましたね。

齋藤:あとは、大賞を受賞した「分身ロボットカフェDAWN」という取り組みもです。あれって2014年あたりからやられているんですよ。

Hide:吉藤オリィさんがプロデュースしたものですね。

齋藤:そうですね。寝たきりの障害を持った人でも、遠隔操作デバイスである分身ロボット「OriHime」を介して働くことができる取り組みです。これってマーケットの規模で考えると小さいんですが、自分たちの力で資金も集めて、いろんな人と協議を重ねながら実装していったんですよ。そういった、“デザインのタネ”みたいなものがたくさん出てきた年だったかなと思います。

Hide:僕は今回、「東京2020パラリンピック」で、すごく意義を感じたんですね。ダイバーシティというか、今まで社会的に見えなかった人、弱い立場の人たちがもっと活躍できるようなものを意識したと思っていて。今年のグッドデザイン賞はそことも呼応していたのかなと感じました。

齋藤:僕もすごく呼応していたなと思います。

次回12月29日(水)のゲストは、NHKエンタープライズのエグゼクティブ・プロデューサー、堅達京子(げんだつ・きょうこ)さんをお迎えします。

番組でお届けしたトークは音声サービス「AuDee」 https://audee.jp/program/show/100000316と「Spotify」 https://open.spotify.com/show/6biaO40gUuf4gbI2QhdTsL?si=C2-xOifkQz230V6X514UlAでも配信中。

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聴取期限 2021年12月30日(木)AM 4:59 まで

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<番組概要>
番組名:UoC Mandala Radio
放送日時:毎週水曜23:00-23:30
パーソナリティ:近藤ヒデノリ(Hide)、平井美紗(Misa)
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/mandala