コロナ禍での食卓の変化をデータで解明します(写真:IYO/PIXTA)

新型コロナウイルスの影響は日常のあらゆる場面に表れていますが、その中で「食」も非常に大きなウエイトを占めるものとなっています。コロナ禍で私たちの食卓はどのように変化したのでしょうか。

今回は春夏シーズン(3〜8月)の夕食に着目し、通常の年(2019年以前)、コロナ流行直後の年(2020年)、直近年(2021年)の食の変化を「インテージ・キッチンダイアリー(京浜、京阪神、東海エリアの主家事担当女性を対象とした2人以上世帯約1260サンプルによる、生活者の調理・食卓の状況を捕捉するパネル調査)」から追ってみたいと思います。

家で夕食を食べる人が急増

はじめに夕食の内食率について見てみます。「内食率」とは、「内食」「外食」「旅行・外出などのため家で食事をしなかった」のうちの「内食」の割合のことで、「どれだけの割合を家で食べたのか」を示す指標となります。

図1は、3〜8月の各年の今から5年前(2016年)を100とした場合の指数として示したものです。2019年までの「コロナ以前」に相当する期間は横ばいで推移していますが、2020年は大幅アップしています。さらに2021年を見てみると、2020年とほぼ同水準で推移しました。


(外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

2020年はいわゆる「コロナショック」の時期にあたり、夕食内食率が劇的に高まるのも納得できますが、2021年も同水準であったことは少し意外な印象を受けるかもしれません。

実際に「行動自粛の緩み」などがさかんに報道されていたりもしましたが、「家で夕食をとる割合」という視点で見ると、「緩んだ」という傾向が顕著に表れていたわけではなかったことがわかります。この間、緊急事態宣言は継続して発令されており、それにともなって外食店の営業自粛・時短営業が続いたことから、うなずける結果であるように思われます。

内食率、すなわち「場」や「機会」としての夕食の大きさは、2020年も2021年もほぼ変わりませんでしたが、その中身はどうだったのでしょうか。メニューの「用意の仕方」の視点から見てみたいと思います。

インテージ・キッチンダイアリーでは、各メニューがどのように用意されたかがわかります。例えば、餃子を例に挙げると、具材(餡)から作って皮で包んだ場合を「手作り」、冷凍やチルドの餃子を焼いたりレンジで温めたりした場合を「加工食品利用」、前日残った餃子を温め直した場合を「残り物」、スーパーや外食店でできあいの餃子を持ち帰った場合を「総菜利用」、中華料理店の出前やフードデリバリーサービスを使った場合を「出前・宅配」などといったように区分しています。

ここでは、主食、汁物、おかず(主菜、副菜)の「手作り」「加工食品利用」「総菜利用」にフォーカスして見てみたいと思います。図2に、主食、汁物、おかず(主菜、副菜)の出現回数を、用意の仕方(手作り、加工食品、総菜利用)別に表しました。図1の内食率と同様、2016年を100とした指数で表しています。


2020年は手作りに若干復活の兆し

「手作り」は2019年まで年々減少していたところ、2020年に微増、2021年は減少、「加工食品利用」は右肩上がり、「総菜利用」は2020年に減少も2021年はアップ、というように、それぞれ異なる動きをしていることがわかりました。夕食の内食率については2020年と2021年に大きな差はありませんでしたが、夕食メニューの用意の仕方については大きな構造変化が起きていることが見てとれます。

「手作り」は、夕食で登場する主食、汁物、おかず(主菜、副菜)のうち、7割強を占めており、今も昔も「手作り」が夕食の食事作りのベースになっていることに変わりありません。

ところが近年は、「手作り離れ」や「食の外部化」が進んでいることもよく知られている事実です。少子高齢化や女性の社会進出、共働き世帯の増加など、複数の社会的要因が絡み合い、食事作りに対する時短志向・簡便意識が強まったことが一因と考えられるでしょう。こうした要因が、2017年以降の手作りの減少として表れてきているものと考えられます。

こうした動きの中、2020年は手作りに若干復活の兆しが見られました。コロナ禍で外出できず潤沢な「おうち時間」があったため、せめて家で食事作りを楽しみたいという思いが芽生えたり、いつもより1品多く少し手の込んだものを作ったりする意識が背景にあったのではないでしょうか。

また在宅勤務中の家族や休校中の子どもたちが食事作りを手伝うようなシーンもあったかもしれません。2020年春ごろにはスーパーの店頭で品薄になった商品カテゴリーもいくつかありましたが、これはこうした家庭での手作り需要の高まりに追いついていなかったことが背景にあったものと考えられます。

では、直近2021年の手作りはどうなったかというと、2020年と比べて大幅ダウンだったばかりでなく、その前年2019年の水準も下回る結果となり、2016年以降の6年間で最低レベルとなりました。「手作り離れ」が再び加速し始めた様子が見てとれます。

2021年を見ると、手作りから離れた分が加工食品と総菜にシフトしていることがわかります。ところが加工食品、総菜ともに「食の外部化」という意味合いでは同じ位置づけにあるにもかかわらず、両者の動きは少し異なっていることがわかりました。

まず総菜の動きを見てみると、2020年に大きく減少している点が特徴的です。単純に、手作りが増えた分、総菜が減ったというとらえ方もできますが、それだと加工食品も減っていてもよさそうですが、そうはなっていません。

買い物行動の変化が総菜の向かい風に

2020年に総菜だけが減った要因の1つは、買い物に出かける機会が制限されたことが大きかったようです。

この時期は、感染リスクを抑えるために買い物の頻度を少なくしてまとめ買いを増やしたり、ネットスーパーを活用し始めたりと、買い物行動自体を変化させた世帯が多かったものと想像されます。総菜は基本的には「その日に食べるもの」にしか対応できないので、こうした買い物行動の変化が、総菜にとって向かい風になったとみられます。

さらに、コストの問題も考えられそうです。総菜は、手作りに比べるとどうしても割高になりがちです。夕食に参加する家族が少ない場合は、コストより簡便性のメリットを感じやすいですが、参加する家族が多くなってくると、コスト的な負担感が大きいと感じられたのではないでしょうか。

次に加工食品ですが、コロナ以前からアップトレンドが続いていたところに、2020年のコロナ禍で利用が一気に拡大し、2021年はそこからさらに伸びが見られました。

近年、加工食品は、日々の食事作りをサポートするアイテムとして次第に我々の食生活に浸透しつつありました。こうした素地があったところに、コロナ禍で内食を増やさざるをえなくなったことが重なり、加工食品の利便性や簡便性、保存のしやすさなどが再評価されたということでしょう。

その結果、加工食品利用がより一層拡大・定着したのが2021年の伸びにつながったと見ることができそうです。加工食品の中でも、とくに冷凍素材や調理済み冷凍食品の伸びが大きい傾向が見られました。

2021年は再び「手作り離れ」が加速

2020年は夕食の手作りが増え、食の外部化の動きは一時的にストップしたように見えました。ところが2021年の動きを見ると、手作り離れは再び加速し始め、加工食品や総菜への流出が続いています。コロナ禍とは別の動きとして、生活者が食事作りに対して外部の力を借りる流れは、今後ますます強まっていくように思います。

そうしたニーズに対し、メーカーや小売りをはじめとした食をめぐるプレーヤーが、今後適切なソリューションをいかに適切なタイミングで提案できるかがポイントとなってきそうです。

一方で、「夕食はもはや手作りをするのが当たり前ではない世の中」になっていくと仮定したとき、「だとしたら、今後手作りに対してどこにより重きを置くのか」という視点で、生活者理解を一歩深める必要がありそうです。生活者に手作りを促すためにはどういったコミュニケーションが必要になるでしょうか。

例えば、手作りには、コスト面だけでなく、健康やおいしさといった機能面、満足感や達成感といったマインド面にいたるまで多くの利点があります。今後こうした訴求強化がより重要になってきそうです。