新型コロナウイルスの感染拡大によって経済的・社会的不平等が拡大していることが以前から指摘されています。そんな中、著名な経済学者のトマ・ピケティ氏が設立した世界不平等研究所が世界の不平等が深刻な領域に達していることを示すレポートを2021年12月7日に公開しました。

The World InequalityReport 2022 presents the most up-to-date & complete data on inequality worldwide:

https://wir2022.wid.world/

World Inequality Report 2022

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World Inequality Report 2022 - WID - World Inequality Database

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世界不平等研究所が公開したレポートによると、世界全体の資産の76%は上位10%の人々によるもので、上位1%の人々だけで世界全体の38%の富を支配しているとのこと。一方で下位50%の人々の資産を全て合計しても全世界の資産の2%にしかなりません。



保有資産上位0.01%の富裕層52万人(青)と個人資産が10億ドル(約1100億円)以上の超富裕層数千人(赤)の資産が世界全体の資産に占める割合の推移を示したグラフが以下。富裕層の資産が世界全体に占める割合は1995年には7%でしたが2021年には11%に達しており、超富裕層の資産が占める割合も2021年には過去最高の3.5%に達しています。



以下の図は「収入上位10%の人々と下位50%の人々の収入差」に応じて各国を塗り分けたものです。図を確認すると、ヨーロッパの国々やオーストラリアなどでは収入差が5〜12倍に収まっているものの、南アメリカ・アフリカ・中東などの地域では収入差が19〜140倍に達していることが分かります。



レポートの筆頭著者であるルーカス・チャンセル氏は「新型コロナウイルスの感染拡大は、非常に裕福な人々とそうでない人々との間の不平等を悪化させました。先進国では政府の介入によって貧困の大幅な深刻化が防がれましたが、貧しい国ではそうではありませんでした。これは、貧困との闘いにおける社会的国家の重要性を示しています」と述べ、不平等の是正には国家の介入が必要であることを強調しています。

なお、レポートを作成した世界不平等研究所の設立者であるピケティ氏は、自身の著書「21世紀の資本」の中で世界の経済的格差について論じており、格差是正のために累進課税としての富裕税の世界的な導入を提案しています。

21世紀の資本 | トマ・ピケティ, 山形浩生, 守岡桜, 森本正史 | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon

富裕層に対する世界的な課税が必要になる理由としては、多額の資産を保有する富裕層が税率の低いタックスヘイブンと呼ばれる地域を利用して税金の支払いから逃れている現状が挙げられます。このタックスヘイブンを利用する企業や個人に関する情報の一部が「パナマ文書」や「パンドラ文書」として公開されており、以下の記事ではそれらの情報を閲覧する方法を解説しています。

「パナマ文書」のデータベースがついに公開、誰でもカンタンに検索する方法はコレ - GIGAZINE