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たくましく落ち着いた走り

執筆:Vicky Parrott(ヴィッキー・パロット)翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
大きな変革期が訪れているが、まだ様々なサイズのスポーツカーが存在する。過剰なほどパワフルなものも。4.0LのV8ツインターボ・ガソリンエンジンを搭載したアウディA8も、そんなクルマに含まれるかもしれない。

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ちなみにアウディA8では、3.0LのV6ガソリンターボも選べるし、3.0Lディーゼルターボも選べる。プラグイン・ハイブリッド(PHEV)もある。


アウディA8 L 60 TFSI クワトロ(欧州仕様)

試乗したのは、純EVの方が既に多く売れているノルウェー。とはいえ、メルセデス・ベンツSクラスとBMW 7シリーズとの三つ巴の、V8エンジン競争はここでも繰り広げられている。

2017年に4代目が登場したA8は、モデル中期のリフレッシュとしてフェイスリフトを受けた。フロントグリルが大型化され、フロントバンパーの吸気口も広げられた点がわかりやすい変化。テールライトはOLEDの新デザインのものになっている。

トップグレードのフォアシュプルングでは、130万枚以上の小さなミラーが用いられた、デジタル・マトリックスLEDヘッドライトを採用。インフォテインメント・システムも、最新のソフトウエアへアップデートされている。

アウディA8に、たくましく落ち着いた走りを期待するなら、まさに正解。試乗車に搭載されていた4.0L V8ツインターボは最高出力459psを発揮するというが、英国市場ではS8にも搭載されるユニット。そこへ四輪駆動システムのクワトロが組まれている。

S8用の予測型エアサスのいい仕事

さらに英国仕様ではS8へ採用される、四輪操舵システムと、予測的に硬さが変化するプレディクティブ・エアサスペンションが試乗車には装備されていた。カメラ映像を解析して進行方向の路面状態を読み取り、最適な乗り心地に調整してくれるものだ。

速度抑止用のコブ、スピードバンプが近づけば柔らかくいなしてくれるし、コーナーではボディロールを抑えるように、アクティブ・アンチロールバーのような機能も果たす。前後方向の傾きも制御でき、ボディを水平に保ってくれる。


アウディA8 L 60 TFSI クワトロ(欧州仕様)

運転してみると、軽くないボディを支えるサスペンションは、良い仕事をしていた。だが、最新のSクラス並みの、感触が豊かで滑らかなステアリング・レスポンスまでは得られていないようだ。

もちろん、市街地の交差点でもペースの速いワインディングでも、自信を持って大型サルーンを操れる。感触は薄いものの、圧倒的な安定感も備えてはいる。

乗り心地も穏やか。路面のうねりや舗装の細かな乱れを通過しても、何事もなかったかのように車内は平穏。ドライブモードをダイナミックにした時の低速域では、流石に微妙な揺れは伝わってくるけれど。

このプレディクティブ・エアサスペンションを、英国ではアウディS8でしか選べないことが残念。通常のA8には、通常のアダプティブ・エアサスペンションが組まれる。期待通りの乗り心地にまでは至っていない、A8の弱点を解決できると思うのだが。

これ以上必要ないほど強力なV8ツインターボ

V8ツインターボ・エンジンは素晴らしい。S8では更にパワフルなチューニングが与えられるものの、A8 60の459ps以上が必要だというドライバーを、想像するのが難しい。

エグゾーストからは、V8エンジンらしいビートが心地よく響いてくる。平然と、強力な加速を与えてくれる。トランスミッションは8速AT。まったく変速を知覚できないほど滑らかに処理し、とても快適な加減速を叶えてくれる。


アウディA8 L 60 TFSI クワトロ(欧州仕様)

ただし、0-100km/h加速の時間はPHEV版のA8と同値。V6エンジンと電気モーターの組み合わせは、V8エンジンほど聴き応えのあるサウンドを聞かせてくれないものの、カンパニーカーとしては正しい選択だろう。

インテリアの変更は控えめ。インフォテインメント・システムには新しいソフトウェアがインストールされていても、Sクラスのように巨大なモニターがダッシュボードに広がっているわけではない。

とはいえ、2段重ねの中央のタッチモニターは、しっかりハイテク感を漂わせている。実際に触れてみると、操作性も良い。従来的なシフトレバーは、モニターへ触れる際に腕を支えるポイントにもなってくれる。

インターフェイスの配置やグラフィックは素晴らしく、レスポンスも速い。エアコンの操作パネルは、実際に押せるハードボタンほど直感的ではないものの、充分扱いやすい。ステアリングホイールには、ハードボタンがまだある。今となっては小さな喜びといえる。

世界の上位クラスに君臨する1台

試乗車はA8のLで、ロング・ホイールベース版。当然ながら、リアシート側の空間は広大だった。思う存分くつろげる。荷室容量も大きく、長距離旅行の沢山の荷物も問題なく積み込めるだろう。

登場から4年が経ち、フェイスリフトを受けたA8。最新のSクラスほど乗り心地に優れるわけではないし、運転のしやすさでも及ばないかもしれない。だが不足ないほど現代的で、価格もライバルモデルのなかでは安価な部類に入る。技術的な面白みもある。


アウディA8 L 60 TFSI クワトロ(欧州仕様)

伝統的なリムジンを必要としているなら、アウディA8は有力な選択肢のまま。世界の上位クラスに君臨するモデルであることは、スペック表の数字を見ずとも明らかだ。

アウディA8 L 60 TFSI クワトロ(欧州仕様)のスペック

価格:−
全長:5302mm
全幅:1945mm
全高:1485mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.5秒
燃費:9.2km/L
CO2排出量:246g/km
車両重量:2224kg
パワートレイン:V型8気筒3996ccツイン・ターボチャージャー+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:459ps/5500rpm
最大トルク:67.4kg-m/1850-4000rpm
ギアボックス:8速オートマティック