2021年の渋谷。ルーズソックスの女子高生はいなかった。校則で禁止されている高校も

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 1990年代、時代の主役は女子高生だった。新しいトレンドを次々につくり、多くのギャル文化を生み出した。それから20余年。見かけなくなったものも多く、その行方を追った。

【画像】2018年に公開された映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』のインスタグラムより

ルーズソックスブームが再燃

「ルーズソックスが欲しい、と高校2年の娘に言われて懐かしい気持ちになりました」

 都内に住む40代女性は娘を通して自身のコギャル時代を懐かしく思い返している。

 1990年代、空前の“コギャル”ブームが沸き起こった。安室奈美恵のファッションをまねる「アムラー」や、顔を黒く塗る「ガングロ」などのギャル文化が次々に生まれ、時代の主役は女子高生に。

 今、そのブームに再燃の兆しが見えているという。

「ルーズソックスが再び売れているんです。ファッションは20年周期で流行が回っているといわれているので、1990年代のブームが再燃するのは珍しい現象ではないのですが、コギャルのアイコンだったルーズソックスが再び流行するとは」(109ショップ店員)

 12月から『PLAZA』(元ソニプラ)で『E.G.スミス』のルーズソックスの復刻販売が決定。「当時の売れ筋である34センチ、75センチを展開します」(PLAZA広報)

 ルーズソックス再燃の一方で、消えてしまったギャルアイテムは数知れず。あのころのコギャルを沸かせたアイテムは今どうなっているのか。

 現在40代の元ギャル500人に聞いた「ギャルアイテムと聞いて思い浮かぶものは?」上位5品のその後を追った──。

ギャルアイテムと聞いて思い浮かぶもの
1位 ブランドショッパー(115票)
2位 折りたたみミラー(102票)
3位 Tikkyのシャープペンシル(81票)
4位 トロール人形(54票)
5位 他校のスクールバッグ(47票)

1位 ギャルブランドのショッパー

「ラブボ(ラブボート)のショッパーを擦り切れるまで使ってた(笑)」(44歳)、「109に行くときは安いものを数回に分けて買って、ショッパーを複数ゲットしていました」(45歳)

 消えたギャルアイテムと聞いて圧倒的1位を獲得したのが、ブランドショッパー。

 ショッパーとは洋服など、商品を購入したときにもらえるお店の袋のこと。

 1990年代当時、『me Jane(ミー ジェーン)』、『LOVE BOAT(ラブ ボート)』、『CECIL McBEE(セシルマクビー)』、『ALBA ROSA(アルバ ローザ)』などのショッパーをバッグとして擦り切れるまで使っていたコギャルたち。ギャルブランドのショッパーを持つことがステータスでもあったのだ。

 あのショッパーは今どうなっているのだろうか。

「ショッパー自体は消滅したのですが、メルカリやラクマなどのフリマアプリで1枚当たり300円前後で取引されています。『ミージェーン』のショッパーは2000円で取引されるなどいまだに根強い人気を見せています。

 2018年に公開された映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』で広瀬すずらが1990年代のギャルに扮(ふん)し、ショッパーを使用したこともあり、ここ2、3年でじわじわとまた人気を集めているようです」(元ギャル雑誌編集)

 一方で、ブランド自体が終了を迎えたものも多い。

 渋谷のギャルカルチャーを支えた『ラブボート』は、2014年8月にブランドを終了。しかし今年10月『しまむら』のヤングカジュアル専門店『アベイル』で扱うブランド『シュリーブ』とのコラボレーションにより復活。『セシルマクビー』も昨年、全43店が閉店したが今年8月、オンラインストアで再始動を発表。ギャルブランド復活の兆しで再びショッパー文化がくる!?

2位 LOVE BOATの鏡

「プリクラをびっしり貼って友人の多さをアピールしていた」(43歳)、「Tシャツか何かのノベルティーだった限定色のゼブラ柄がどうしても欲しくて並んだ記憶が」(45歳)

 1人1個は持っていた『LOVE BOAT(ラブボート)』の折りたたみスタンドミラー。

「ラブボのロゴ入りミラーが大人気でした。ミラーを開くとプリクラをびっしり貼ってオリジナリティーをアピールしたものです。使いすぎてスタンドのネジ部分がバカになって、ちゃんと立たないのはデフォルト(笑)」

 振り返るのは当時のコギャルで、ギャル雑誌編集者の神戸ゆうさん。

「ラブボは1994年デビューのブランドで、ミラー人気のピークは1990年代後半ですね。2000年代に入ると徐々に勢いが衰えてきて、ラブボミラーの生産数も少なくなっていったようです。それでもギャルにミラーは必須アイテムでしたので、『moussy(マウジー)』の板チョコレート型ミラーなどが流行(はや)りました。女子高生もスマホを持つようになってからはミラー文化自体が消滅しましたね」

3位 Tikkyのシャープペンシル

「カラーが豊富で友達とそれぞれカラーを決めておそろいで使ってました。私はSMAPの木村拓哉さんのファンだったのでメンバーカラーのレッドを使ってた」(43歳)

 ギャル文化発信地109の地下2階に店を構えていた『SONY PLAZA(通称:ソニプラ。現在は『PLAZA』)』。ソニプラ文具はギャルたちの必須アイテムだった。その中でもその使いやすさや見た目のシンプルさから全国的に人気を拡大したのが『Tikky(ティッキー)』のシャープペンシル。色も豊富で友人同士カラーがかぶらないというのも魅力だった。

「現在はティッキーシリーズは展開していません。2017年にネオンカラーバージョンを販売しそれが最後となっています」(PLAZA広報)

 Tikkyシリーズは4年前、平成後期まで生き残っていた。

4位 トロール人形

「カバンにつけて毎日人形の髪をなでてました」(45歳)、「願いが叶(かな)うって信じていて恋愛トロールをつけていたら彼氏ができた」(42歳)

 4位にランクインしたのはトロール人形。「トロール」とはノルウェーの民話に登場する妖精で、そのトロールをもとにキャラクター化された商品がアメリカ製の「トロール人形」。その毒々しい蛍光色の髪をなでながら願い事を唱えると叶うといわれ、1990年代に女子中高生の間で大ブレイク。サブバッグやポケベル、ケータイにトロール人形が揺れていた。いつの間にか見なくなったけれど──。

「トロール人形は1960年代にヨーロッパやアメリカで一大ブームを巻き起こしたおもちゃでした。日本でのブームは1990年代で、2000年代に入るころには身につけるというブームは終焉(しゅうえん)を迎ていたようです。色黒ギャルとトロール人形の蛍光色の髪色がマッチしたものでした。

 トロールは2013年に映画化されプチ再ブームがきました。最近だとEXITの兼近さんがトロール人形のような姿をインスタにアップして話題に、と再びブームになる可能性を秘めているように思いますね」(前出・神戸さん)

5位 他校のスクールバッグ

「彼氏の高校がおしゃれで有名な男子校だったので、そこの生徒と付き合っているのが自慢だった」(40歳)

 今では理解不能だが、他校とカバンを交換するのが流行っていた1990年代。中でも彼氏と交換するのがステータスだったとか。前出の神戸さんは、

「スクールバッグがブランド力を持ち始めたのは、ギャル雑誌で特集を組んでから。1996年ごろ人気読者モデルの子たちが彼氏とスクールバッグを交換しているのを紹介してから火がつきました。特に関東の人気男子高校のサブバッグは人気で、サブバッグ狩りなども行われていたといいます」

 中でも1990年代は男子校だった昭和第一高校(東京都)や法政第二高校(神奈川県)などが人気だった。

 だが、過熱したがゆえ、スクールバッグ交換禁止の学校も増え、徐々にその流行り自体が消滅していったようだ。

 元ギャルたちは今どのような生活を送っているのか。

「主婦やってる人が大半だと思います。ただ彼女たちのパワーはすごい。彼女たちは若さに価値があることを存分に知っているので、子どもにもその価値観を受け継がせる人が多い。その娘たちが今女子中高生になっている。再びギャルブームがくるのは必然かもしれませんね」(神戸さん)

初出:週刊女性2021年11月30日・12月7日合併号/Web版は「fumufumu news」に掲載