シンカリオンの世界に銀河鉄道999のメーテルがやってきた(©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所Z・TX ©松本零士・東映アニメーション)

3度目の『エヴァンゲリオン』シリーズとのコラボも記憶に新しい『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』が今度は『銀河鉄道999』のメーテルをレギュラーとして迎えるという新しい奇跡を起こしてくれた。

9月10日に放送されたエヴァとのコラボ回のエンディングに、演歌「津軽海峡・冬景色」をBGMとして現れた少女に「もしや?」と感じた人は少なくなかったはずだ。

その少女は面差しも衣装も、松本零士氏が描く銀河鉄道999のメーテルに酷似していた。その夜から「なぜシンカリオンZにメーテル?」とSNS を騒然とさせたまま、謎の少女の行方は杳として知れなくなっていた。しかし11月5日の放送で遠野の地にメーテルの影をちらほらと感じ始め、とうとう19日、謎の少女「月野メーテル」のベールがはがされる。

月野メーテルは「シンカリオンZ H5はやぶさ」の運転士という設定だ。なぜ、メーテルが登場するのか、その理由についてシンカリオンのプロデューサーであるジェイアール東日本企画コンテンツビジネス局の鈴木寿広氏と999の版権を管理する東映アニメーションの清水慎治顧問と版権事業本部の高橋陽史氏に話を聞いてみた。

メーテル初登場シーンの謎

まずはインパクトの強かったメーテル登場シーンについて鈴木氏に聞いてみた。なぜ竜飛岬で、なぜ津軽海峡・冬景色だったのか。

「なぜ津軽海峡・冬景色なのかといえば、メーテルはシンカリオンZ H5の運転士として北海道支部に所属しているため構成上、最初の登場予定地が函館だったのです。函館といえば青函トンネルなので「上野発の夜行列車」、そして『津軽海峡・冬景色』だったら「ごらんあれが竜飛岬、北のはずれと」というわけで竜飛岬にしよう……という連想ゲームで作ったシーンなのです」

さすがいつも通り、発想の連鎖を楽しんでいるシンカリオンZチームだ。

そしてやはり聞きたいのは銀河鉄道999のメーテルとコラボをすることになった経緯である。そこは清水氏が教えてくれた。

「実はうちの5歳になる孫が大の鉄道ファンでね、それをきっかけにシンカリオンを毎週欠かさず観るほどのファンになり、孫にたくさんのシンカリオングッズを買うことに……(笑)。劇場版『新幹線変形ロボシンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』も孫と一緒に映画を観に行って、すっかりシンカリオン熱が上がったところでね、見つけてしまったんですよ」


左から、ジェイアール東日本企画コンテンツビジネス局の鈴木寿広氏、東映アニメーションの清水慎治顧問、版権事業本部の高橋陽史氏(写真:尾形文繁)

何を見つけたのか。首をひねっていたら、高橋氏が「シンカリオンと銀河鉄道999がコラボしたグッズです」と答えを教えてくれた。なるほど、すでにグッズではコラボが実現していたのだ。

「すでにグッズで絡んでいるならいい形でご一緒できるんじゃないか」と清水氏が思っていた矢先、メーテルをシンカリオンの運転士としてアニメに登場させたいというオファーが来た、「これは運命だ」と清水氏は感じた。

その後はトントン拍子だった。シンカリオンZの世界に出演するメーテルなのだから、デザインも声優さんもこちらから口は出さず、すべて任せることにした。

そして、シンカリオンZチームから小さなメーテルのデザインが上がってきた。「かわいいなあとつい目尻を下げてしまいました」と清水氏が笑う。

月野メーテルの声優を務めたゆきのさつきさんもオリジナルを意識しないように演技してくれたそうだ。

松本零士の絵はこうだ、999の世界ではメーテルはこういう女性だ、ということに縛られることなく、シンカリオンZの世界で自由にメーテルを作れたことに鈴木氏は感謝しているという。

鉄郎とメーテルが結婚?

月野メーテルという名前に決まるまでも楽しい紆余曲折があった。

最初は星野メーテルという名前が案として上がっていたが「それじゃあ星野鉄郎と結婚したことになっちゃうよね」と清水氏は大笑い。そこで、清水氏が「北海道だから、富良野メーテルでよかったんじゃない?」と言えば、鈴木氏もこう答える。「本当は長万部メーテルという案もあった」。

もし長万部メーテルという名前だったら許可しましたか?と清水氏に聞いてみると「僕はOKだよ。でも松本零士先生はどうかな」と笑って答えてくれた。シンカリオンZのコラボの現場はいつも笑顔が絶えない。


月野メーテルが運転士となるシンカリオンZ H5はやぶさ(©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所Z・TX)

今後、月野メーテルはシンカリオンZ H5運転士として重要な役割を担うようになる。他アニメのキャラクターがレギュラーメンバーを務めるという、常識では考えられない発想について質問してみた。

まずはシンカリオンZ H5の運転士は女の子がいい、そこまでは決まっていたという。しかしコラボキャラでいくかどうかは決まっていなかった。でももしコラボできるなら……と、可能性としては難しさを感じながらも夢を広げていくうちにメーテルがいい、いやメーテルしかないという結論に至った。

「松本零士先生は親と子と孫3世代が楽しめるコンテンツを作りたいといつも言っています。こうして孫と楽しめるシンカリオンにメーテルを出してもらえることがありがたいです」と、清水氏は快諾した。

999には1000にならない未完の物語、つまり「永遠」という意味が込められている。このように新しい世代にメーテルが登場することで、メーテル、そして999は永遠に愛される存在となる。

シンカリオンのコラボを語るに当たって忘れてはならないのが、9月17日に放送された3回目のコラボ「出撃、シンカリオンZ500 TYPE EVA」である。

東映太秦映画村の巨大エヴァンゲリオン初号機が「鬼エヴァ」になって登場し、JR西日本の新幹線500 TYPE EVAと私鉄の名古屋鉄道のミュースカイがZ合体するというJRと私鉄のコラボも見られるこの回について、放送後だから語れる裏話を鈴木プロデューサーとエヴァンゲリオンのライセンスを管理するグラウンドワークスの神村靖宏代表に聞いてみた。


グラウンドワークスの神村靖宏代表(撮影:梅谷秀司)

今回、主人公のシンがエヴァの世界に入り込むキッカケになったのが、都市伝説として有名な「きさらぎ駅」。ネット掲示板の書き込みを発祥とするこの異界の駅は、浜松市の遠州鉄道に乗るうちにたどりつくとされている。

鈴木氏が言う。「一番苦労したのは主人公シンの移動でした。東映太秦映画村の初号機像から変身した鬼エヴァと戦うために京都に行ってもらわなければいけない。でも京都に行く理由がない」

ストーリー上で無理に京都へ行かせるより、シンの設定であるミステリー好きを生かし、異界のきさらぎ駅を経由させてはどうだろう。そこを入り口としてシンカリオンとエヴァンゲリオンの世界を繋げてしまえばすべてが自然だ、そう考えたという。

碇ゲンドウへのこだわり

幻のきさらぎ駅を探して遠州鉄道に乗り込んだシンたちはあやしい駅にたどりつく。それがきさらぎ駅だ。そしてきさらぎ駅に佇んでいた先客が、エヴァの重要キャラクターである碇ゲンドウである。


シンカリオンのキャラクターと碇ゲンドウのコラボ(©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所Z・TX ©カラー)

奇妙なことは続く。きさらぎ駅のホームにすべりこんできた列車は京都行きの嵐山線だった。「内装デザインは嵐山線を意識しました。ただ画としてのイメージはエヴァシリーズに登場する国電型半鋼製電車です。車窓から差し込む夕日の感じも再現しています」(鈴木氏)。

今回、シンカリオンシリーズ初登場となる碇ゲンドウについても聞いてみた。ゲンドウが相手にするのは、鈴木氏をして「決して後ろを向かない究極の前向きキャラ」といわしめる、あのシンである。

そこで鈴木氏に「普段シンジやレイのような気持ちを内に秘める子どもたちと触れ合っているゲンドウは、開けっぴろげなシンが相手だと困惑しませんか」といらぬ心配をぶつけてみたところ、「普段シンジに対するのと同じ態度でシンに接してもらっています。それが観ている方の違和感になるよう意図しています」と答えてくれた。

実際、放送を見るとさすがのゲンドウもいつも通りとはいかなかったようで、時折ニヤリとするなど、表情が豊かなように感じた。

「でも、ゲンドウは多少ブレさせてもビクともしないキャラクターなんです」

神村氏と鈴木氏が声をそろえる。

「(ゲンドウの声を演じる)立木文彦さんの声が入れば、キャラクターが少々突飛なことをしてもゲンドウになります」

聞けば、碇ゲンドウはさまざまなコラボ事案にコメディリリーフとして登場することが多いそうだ。「カミソリのCMではヒゲを剃ったりもしていましたよね」と笑う鈴木氏に、「そう!でも立木さんの声には力があるからヒゲを剃ってニッカリ笑ってもゲンドウのキャラは崩れないんです」と神村氏も笑って返す。

「ただ、ひとつだけシナリオを読んで修正してもらった箇所がありました」と神村氏が教えてくれた。

「ゲンドウが京都大学に在籍していたという設定と京都にいることを関連づけたシーンがあったのですが、それは少し掘り下げすぎかな、と」

エヴァファンが慣れ親しんだ有名なフレーズを出すのは、皆で楽しさを共有できる。しかしレアなネタを入れると観る人を選んでしまう。せっかく子どもたちが観ているシンカリオンに登場するのだから、わかりやすい楽しさにしたかったという。

初号機がビーストモードに

そのお陰かゲンドウの「でなければ大宮に帰れ」や、レイとアスカによる「あやなみ線……」「あんた、バカ?」というやり取り、ロンギヌスの槍と分岐器を由来とした「ブンキヌスの槍」など、作中に登場したキーワードが、放送当日のSNSを賑わせていた。


エヴァ初号機のビーストモード(©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所Z・TX ©カラー)

驚いたのは、エヴァンゲリオン初号機が見たことのない姿をしていたことだ。シンカリオンの世界の中で鬼エヴァに変身したとはいえ、姿形が変わってしまっているというのは自由すぎやしないのだろうか。

しかも初号機のビーストモードだという。エヴァンゲリオン初号機のビーストモード初登場が他アニメであるというのは許されることなのか。

疑問を投げかけてみると、ごく普通に許可をいただけたという。となると気になるのは、どのような過程を経てエヴァ初号機のビーストモードのデザインが決まったのか、である。

「顔やシルエットなどの初号機らしさを残してほしいというオーダーをいただいたので、その点を留意したデザインになっています」

エヴァンゲリオンのデザインを他アニメであるシンカリオンのチームがデザインする。メーテルと同様に懐の深い話である。

シンカリオンが不思議なところは、ファン層が重なる子ども向けアニメではなく、銀河鉄道999、エヴァンゲリオン、ゴジラと、歴史ある大作とコラボを重ねていくところだ。


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「まず事情や都合が子どもたちに見えないコラボにしたいのです。そして我々親世代が慣れ親しんできたアニメとコラボすることによって、親子の会話につながることを狙っています」と鈴木氏はいう。

エヴァンゲリオンと繰り返しコラボをし、メーテルをレギュラーの座に置く。コラボキャラクターを一過性のものとして消費せず、尊敬の念を持って大先輩キャラクターと競演しているシンカリオンチームの信念がうかがえる。

「そんな大先輩の方々がシンカリオンの世界に歩み寄ってくれるのが本当に光栄です」という鈴木氏に、その理由はどこにあるのか聞いてみた。

「それはシンカリオンの力……と言えたらいいのですが、僕は新幹線の力だと思っています。新幹線の魅力が道を拓いてくれているのだと」

新幹線は特別な存在

清水氏が話をつないでくれた。「新幹線はやっぱり特別です。先日、久しぶりに関西への出張があって東京駅から新幹線に乗ったのですが、座席に座った瞬間、胸がジーンと熱くなってしまいました」


リニア・鉄道館が気になる碇ゲンドウ。やっぱり新幹線は特別です(©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所Z・TX ©カラー)

新幹線にはちょうどいい異世界感がある。日常の中での非日常のような異世界感が、ファンタジーの世界にはよく似合う。

お互いに存在を認め合い、感謝し、そして相乗効果に確かな感触を感じる。これこそが幸せなコラボではないだろうか。

そんな幸せな感覚をまとっているシンカリオンだからこそ、皆から愛されるのだろう。これからも親世代をニヤリとさせるコラボで、名作のアニメキャラを子どもたちに伝えてくれるハブステーションであってほしいと願うのである。