この10月は、アップルがオンラインイヴェントで発表した新型「MacBook Pro」に多くの関心が集まった。同社は2016年以降、MacBookシリーズの薄型化や高速化、外見の洗練を大義名分に、HDMIポートやSDカードスロット、HDMIポートなど、ありとあらゆる外部接続用ポートを排除してきた。結果、数個のUSB-Cポートだけが残され、多くのユーザーが変換アダプターという足かせを強いられることになった。

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今回、MacBook Proの全面刷新によって使い勝手の悪かったタッチインターフェイス「Touch Bar」が廃止され、デザイン性の犠牲になってきたさまざまな外部接続用ポートが復活した。HDMIポートと3カ所の「Thunderbolt 4」ポートを合わせて最大4台の外部ディスプレイを接続できるほか、高インピーダンスのヘッドフォンにも対応したヘッドフォンジャックが追加された。さらに、マグネットで充電ケーブルをつなぐ「MagSafe」やSDカードスロットも戻ってきた。

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これまで自社製品の見た目ばかりに気を遣ってきたアップルが、実用性の追求へと舵を切った意味は大きい。こうした方針転換の背景には、新型コロナウイルスによる感染症の大流行によって急増した在宅労働者たちが募らせてきたポート不足に対する不満があると考えられる。外部ディスプレイなどを接続するためにわざわざ変換アダプターを用意しなければならないばかりか、不具合が起きた際に問題がケーブルにあるのかアダプターにあるのか特定することもままならない状況だったからだ。

アップルはワイヤレスヘッドフォンの本格的な普及を待たずにiPhoneからヘッドフォンジャックを廃止するなど、常に未来を見据えた大胆な賭けで人気を勝ちとってきた。反面、そのヴィジョンが先行しすぎるあまり、いつの間にか人々の生活から標準規格という安心までも排除してしまっていたのではないだろうか。奇しくもパンデミックをきっかけに現実に目を向けたことで、同社は消費者の信頼をつなぎとめたと言える。

ポストコロナ社会でリモートワークは続けるべきか

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延によって人々の日常が一変し、まもなく2年が経過しようとしている。日本をはじめ多くの国で感染の波が穏やかになっていくなか、いまポストコロナ社会における働き方に関心が寄せられている。リモートワークという新たな慣習は継続すべきかどうか。その答えを出すには在宅勤務の利点だけでなく、リモートワークによって生じる孤独という課題に社会全体が向き合う必要がある。

この21年は「大退職時代」という言葉が生まれるほど、パンデミックを機に退職を考えた人や、実行に移した人が多かったという。そして実際に仕事を辞めた人の多くが、その瞬間をリモートワークのまま迎えている。かつての世界のように送別の乾杯はなく、上司や同僚と最後の言葉を交わす機会すらない。顔を合わせるのは業務用のPCを回収しに訪ねてくる宅配業者のみ。メールやチャットといった社内のコミュニケーションツールから締め出されたとき、改めて真の孤独を噛みしめるのだ。

その変化を独りで受け止めることが意外に辛いことを、パンデミックは教えてくれたのかもしれない。なにより仕事と私生活の境界が薄れたことで、それまでの仕事を辞めることと新しい仕事に就くという異なるふたつのプロセスが曖昧になってきている。退職という人生におけるひとつの節目を実感とともに噛みしめることなく、転職という次の扉を同じ空間で開くことに慣れていない人は多い。リモートワークは、人間が孤独に対して脆弱であるという事実を浮き彫りにしたのだ。

一方、ポストコロナ社会への移行と同時に、一度去った元の職場に戻ってくる「ブーメラン社員」も急増するだろうと専門家は指摘する。隣の芝生が実は青くなかったと気づく人や、パンデミックを経て古巣の労働条件が改善された人。出戻りの理由は人によって異なれど、共通しているのは旅立つことでしか味わえない郷愁の念と、新天地で待ち受ける心の迷いなのだろう。しかし、かつての居場所に舞い戻ることが必ずしも幸福につながるとは限らない現実を、孤独と向き合う術を心得ている人間ならすでに知っているだろう。

ここからは、10月に「WIRED.jp」で公開された編集記事を中心に、最も読まれた10本を紹介する。

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アップルが発表した新型「MacBook Pro」は、さまざまな外部接続用のポートが“復活”したことで周辺機器を接続しやすくなった。デザイン面で大きな変化ではないが、アップルが実用性の高さを重視したことに大きな意味がある。>>記事全文を読む

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