クロエ・ジャオ監督が手がけたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新作『エターナルズ』。世界中で大ヒットを記録しているが中東のサウジアラビア、カタール、クウェート、バーレーンでは上映が禁止されている。雑誌『ハリウッドリポーター』が入手した関係者の証言によると同性愛者のキャラクターが登場すること、同性カップルのキスシーンなどが含まれていることが大きな理由だという。これらの国々では同性愛は違法。これまでもLGBTQsに関連するテーマや描写を含む作品は上映禁止になったり該当するシーンがカットされたりしてきた。検閲機関は『エターナルズ』もキスシーンなどを削除して公開する予定だったが制作したマーベルスタジオは削除の要求を拒否。そのため公開そのものが中止になった。

このことについてメインキャストの1人、アンジェリーナ・ジョリーがコメントした。オーストラリアのニュースサイト「News.com」のインタビューで「観客に対して申し訳ない」「削除を拒否したマーベルを誇りに思う」と語った。この作品にはMCU初となる同性愛者のスーパーヒーロー、ファストスが登場する。彼は現代の世界では同性の夫ベン(ハーズ・スレイマン)と息子のジャック(イーサイ・ダニエル・クロス)と暮らしている。アンジーは「ファストスの家族、彼らの関係や彼らの愛が備えた美しさを見ようとしない人が今の世界にまだいることが理解できない」「この作品に対して誰かがどんなに怒っても、それによって脅かされたとしてもそれは認められないし評価できない。それは無知だ」と厳しく批判している。

ジャオ監督は作品に登場する同性カップルの親密なシーンについて雑誌『バラエティ』にこう語っている。「こういった場面に真実さを見出せることが大切だと思う。そうすれば観客は無理強いされていると思うことなく彼らに共感できる。それが一番重要なこと。同性愛者であろうと異性愛者であろうと、実際に彼らに心を寄せることが大切だ」。この作品をきっかけにこれからMCUがLGBTQsをどう描いていくのかさらに注目が集まっている。