気になる個人タイトルの行方は? 最大の見所はかつてないハイレベルな「セ・リーグ新人王」

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 終盤までもつれた今季のプロ野球も、ようやくセ、パの優勝チームが出そろった。セ・リーグはヤクルト、パ・リーグはオリックス。ともに前年は最下位に沈み、下馬評を覆しての優勝とも言える。レギュラーシーズン閉幕が見えたことで、今季の各タイトルを占ってみたい。

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 まずはMVP。これはセ・リーグならヤクルト・村上宗隆、パ・リーグはオリックス・山本由伸と両リーグともに一択だろう。

 村上は全試合4番に座り、10月29日現在で打率・283、39本塁打、112打点という数字を残した。チームはあと2試合を残している。本塁打は巨人・岡本和真と並びリーグトップ。打点はその岡本に1点差の2位だ。ともに数字を伸ばし、単独の打撃2冠の可能性も残す。

 山本は26試合で18勝5敗、防御率1・39。防御率、最多勝、最高勝率(・783)、最多奪三振(206)、最多完封(4)の投手5冠を確定させている。沢村賞にも文句なしの選出となるだろう。

 新人王は、パ・リーグはオリックス・宮城大弥が頭一つ抜けた。23試合で13勝4敗、防御率2・51。勝利数、防御率、勝率(・765)は山本に次ぐリーグ2位だ。日本ハム・伊藤大海は22試合で9勝9敗、防御率2・98。あと1試合の登板を予定し、2桁10勝には可能性を残すが、ほぼ全ての数字が宮城に比べ劣る。序盤好調だった楽天・早川隆久は24試合で9勝7敗、防御率3・86。中盤以降失速し、全日程を終えて137回2/3と規定投球回に届かなかった。

 セ・リーグは大混戦だ。DeNA・牧秀悟は打率・314、22本塁打、71打点。4番を任された終盤、さらにバットが凄味を増した。新人の打率3割は23年ぶりで、3割20本は4人目。153安打は1958年の巨人・長嶋茂雄に並び新人歴代5位とした。

 対抗馬は広島のクローザー・栗林良吏。51試合で0勝1敗35セーブ、防御率0・72とこちらもほぼ完璧な数字を残した。7月14日の中日戦から歴代3位の18試合連続セーブを記録した。夏の東京五輪での2勝3セーブは参考外の記録のはずだが、投票する記者たちの記憶には残った。

 パの早川同様、中盤から急失速したのが阪神・佐藤輝明。結局打率・238、24本塁打、64打点でリーグワーストの173三振を喫した。同僚の中野拓夢は打率・273、1本塁打、36打点で、タイトルを決定的にしている30盗塁。例年なら新人王にも十分な活躍だったが、牧と栗林の数字の前には劣る。

 ヤクルト・奥川恭伸は17試合で9勝4敗、防御率3・35。終盤は優勝したヤクルトで最も安定感のある先発投手だったが、シーズン通して中10日前後のゆったりした起用が影響した。投球回は102で、規定投球回には遠く及ばない。

 MVPと新人王は運動記者クラブ所属で5年以上取材経験のある記者投票によって決まる。投票はまもなく始まり、日本シリーズ前に締め切られるため、基本的にポストシーズンでの活躍は加味されない。最大の見所はかつてないハイレベルな有資格者がそろったセ・リーグ新人王。牧と栗林の一騎打ちなのか、阪神勢の関西びいきな組織票は再びみられるのか。発表されるNPBアワーズは12月15日を予定している。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]