日本大学医学部付属板橋病院の建て替え工事に関わる設計料が24億4000万円、医療機器のリース料が14億円だったから、概算で40億円ほどの実質経費が発生。これに乗じて、不当に加算した金額の合計がおよそ4億円だから、経費を10%嵩上げして懐に入れた計算だ。板橋病院の建て替え工事予算が概算で1000億円だから、10%嵩上げした100億円が関係者の間で山分けされる可能性すらあったのかも知れない。

【前回は】日大の背任問題で、東京地検特捜部が「王手」を指す日はいつになる? (上)

 日大の令和3年度予算では、国庫補助金収入として122億4391万円、地方公共団体補助金収入として71億373万円が計上されているため、年間の補助金(即ち税金)の約半分を関係者が寄ってたかって、食い潰したのかも知れないという悪夢のような話だ。

 27日、文部科学省が背任問題に鑑み、日大への21年度分の私学助成金の交付を保留する方針を決めたことと、日大に第三者組織を設けて件(くだん)の問題を調査するように要請したと伝えられているのは、至極妥当なことであるように見えるが、田中英寿理事長には痛くもかゆくもない。

 そう思わせるのは、アメフト部の危険タックル問題が注目を集めていた時期に組成された第三者委員会(弁護士で構成された)が、日大執行部の責任を「ガバナンスの機能不全を放置し、適切な危機対応をしなかった」と指摘。「理事長としての説明責任を果たしていない」と難じても、教職員が執行体制の刷新を求めても、全て聞き流して事態の鎮静化を待ち、田中理事長が公の場で説明することはなかったからだ。

 助成金の支払いをストップしたとしても、日大の財務に多少の計算違いが発生するだけで、田中氏個人には何の不都合もない。まともな組織であれば、助成金が停止されることは経営責任に直結するような重大な問題だが、今の日大に於いては理事長たる田中氏の意向が全てのようだから、組織が生まれ変わるキッカケにすらならないだろう。

 カルロス・ゴーン会長(当時)体制下の日産自動車も似たようなものだったが、思い余った一部の人達が窮余の一策を繰り出すという僅かな隙があった。カルロス・ゴーンの驕りを糺して取り除く方法は、他にはなかった。

 日大で執行部刷新の可能性があるとしたら、東京地検特捜部の捜査の手がどこまで伸びるかに尽きる。捜査の指揮を執っているのが、カルロス・ゴーン事件で主任検事を務めた気鋭の副部長であることにも因縁が感じられる。衆議院選挙後に政界の勢力図が改まった頃、ビッグニュースが駆け巡るかも知れない。