3年で婚約破棄と離婚を経験した39歳男性の苦悩
婚活で知り合った女性は結婚後、勝手に仕事を辞め、1日中ゲームをするように……(写真:Ushico/PIXTA)
ご縁あっての結婚だが、結婚がうまくいかず離婚にいたることもある。熟年離婚も増えているようだ。ただ、離婚したからといって、そのまま独身を通すのではなく、離婚経験者ほど再婚を希望する。これまでの会員を見ると、再婚希望者のほうが婚活で結婚していく確率が高い。それは、結婚へのステップを経験しているので、相手と出会ったときに道筋をつけやすいからだろう。
仲人として、婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、苦労や成功体験をリアルな声と共にお届けしていく連載。今回は、一度の婚約破棄、一度の離婚を経験した39歳男性が、再婚するために婚活をスタートさせた軌跡をつづる。結婚にとって大事なことは何なのかを一緒に考えてみたい。
キャリア志向の強い女性と婚約するも
入会面談にやってきたまさや(39歳、仮名)が開口一番、こんなことを言った。「つくづく“女運がないな“と思うんですよね。女運というか、僕は女性を見る目がないのかもしれない」
私大を卒業した後に大手企業に勤め、年収は800万。見た目も悪くない。何の苦労もなく結婚できそうなタイプなのだが、一度の婚約破棄と一度の離婚を経験しているという。
まさやはこれまでの経緯を語り出した。婚約破棄は35歳のとき。相手は、友達の紹介で付き合うようになったさとみ(30歳、仮名)だった。
「出会ってから1年くらい付き合っていたんですが、彼女が30を過ぎたときに、『そろそろ結婚を考えない?』と言い出したんですね。僕も35だったし、身を固めてもいいかなと思っていたので、双方の親に紹介したりしながら、結婚の準備を進めていったんです」
さとみは、国立大を卒業したキャリア志向の強い女性だったが、30歳という年齢に、その後の人生設計を考えたようだ。出産を視野に入れたら、ここで結婚して家庭の基盤を作っておいたほうが、キャリアアップが図れると思ったのだろう。
「彼女の大学は僕の大学よりレベルでいえば上。だからといって僕をバカにするようなところはなかったし、サバサバした性格で付き合いやすかった。何か言うとすぐに泣くような女性は苦手だったので。だけど、とにかく負けず嫌いで、仕事への向上心が人一倍強かった。『出産しても仕事は続けたい』と言っていました」
今は、共働きも当たり前の時代だ。“男は稼ぐ人、女は家を守る人”というのは、昭和の時代のこと。ダブルインカムで、家事や育児は分担してやっていくと考える人たちも多い。
「新居は、お互いに会社に行きやすい中間の地域を当たり始めました。残業などで帰宅が遅くなったときのことを考えて、駅近で、深夜までやっているスーパーがあるような場所を探しました」
婚約指輪も贈り、結婚式場を決めるためにホテルが開催するブライダルフェアに参加したりと、着々と準備が進んでいった。そんなとき、さとみの海外赴任の話が持ち上がった。
「キャリア志向がとにかく強かったから、『会社が与えてくれるこのチャンスを逃したくない』と言い出したんです。赴任は3年くらいになるとのことでした。最初は『入籍して、3年は別居婚をしたい』と。そうすると僕は38になっちゃう。けど、まあそれも仕方がないかな、と思っていたんです。ところが、正式に赴任を決めたら、『やっぱり3年離れて暮らすのは現実的ではないし、結婚はいったん白紙にしましょう』と言い出した」
結局、結婚より海外赴任を選んだ彼女
付き合っていた年数は1年。それより長い年数の別居婚は、まさやも不安だった。長期休暇に自分が遊びに行ったり、相手が帰国したりするにしても、3年という月日の間、心変わりをせずに夫婦でいられる自信もなかった。
「それに何より、海外赴任の話が持ち上がってからというもの、彼女の関心はそちらに向いてしまって、結婚への興味が薄れていくのを日に日に感じていたんです」
親にも相談した。昭和生まれの父親からは「彼女は家庭的なタイプではないから、結婚をしたとしても良い奥さん、良い母親にはならないんじゃないか」と、専業主婦だった母親からは、「今は女性も仕事をする時代だけれど、結婚したら仕事よりも家庭を優先させないと、子どもが産まれたときに子どもがかわいそうよ」と言われた。
結局、婚約は解消になった。結婚式場も新居も探している最中で、まだ決まっていないのが幸いだった。いろいろなことが白紙になっていくなか、さとみから『婚約指輪の代金を返金するので、口座番号を教えてほしい』という連絡が来た。
「まあ、金額も大きかったので返してもらえたのはよかったけれど、“立つ鳥跡を濁さず“というか、ずいぶんドライなんだなって。僕のことが好きだったのではなく、自分の人生設計のために、誰とでもいいから結婚をしたかったんじゃないか、と思ってしまいましたよ」
婚約を解消した後、まさやは結婚を特別焦る気持ちもなく、ゆるい婚活を始めた。気持ちのどこかで、結婚相手はすぐに見つかるだろうと高をくくっていたのだ。しかし、合コンに出たり、婚活パーティーに参加したりしたものの、なかなか結婚できる相手には巡り会えずにいた。
「連絡先を交換して、そこから一、二度会うんですが、その先が進まない。あっという間に2年が経って37になり、さすがに焦りが出てきた。子どもを授かるなら40前には結婚したい。そこで大手の結婚相談所に入ったんです」
年収も見た目も悪くない。結婚する条件は整っていたので、見合いは組めた。ただ、婚約破棄の苦い経験から、キャリア志向ではなく、結婚後に仕事を続けてもいいが、家庭を第一に考えてくれる相手を探そうと思っていた。
婚活にはありがちだが、自分がいいと思った相手からは振られ、ちょっと違うなと思った相手からは積極的にこられる。振ったり振られたりが続き、あっという間に1年が経っていた。そして出会ったのが、さゆり(36歳、仮名)だった。小さな会社で事務をしている、おとなしくて地味なタイプの女性だった。
「『相談所を成婚退会したら、すぐに入籍したい』と言うんです。お互い地方出身者で一人暮らしだったし、家は早く1つにしたほうがよいと僕も思いました。コロナ禍で結婚式ができる状況ではなかったから、両家の顔合わせだけ終え、ひとまず入籍をしたんです」
「そうしたら、入籍した翌週に彼女が仕事を辞めてきた。どうも職場の人間関係がうまくいっていなかったようで。仕事を辞めたかったから、入籍を急いだみたいなんですよね」
入籍した翌週に勝手に仕事を辞めた
相談もなく仕事を辞めてしまったことに、まさやは少しムカッときた。
「『別にさゆりちゃんの稼ぎをあてにしているわけではないけど、夫婦になったんだから、辞める前に一言相談があってもよかったんじゃない?』と言うと、『別に専業主婦をしたいわけじゃないし、住む場所が決まったら、そこから通えるところで仕事を探すよ』とのことでした」
そして、新居を決めて引っ越しをしたのだが、さゆりはいっこうに仕事を探す気配がなかった。
まさやが会社に出かけていくと、1日中部屋でゲームをやっていた。昼は惣菜パンやカップ麺を食べているのが、ゴミ箱を見るとわかった。夕食もご飯を炊いて味噌汁は作るが、スーパーの惣菜が2、3品並ぶだけ。
そして、夜の夫婦生活もまったくなかった。
相談所を成婚退会した後、キスはしたものの、その先のことをしようとすると、かたくなに拒否された。最初は「結婚するまでは、そういうことはしたくない」と言っていたのだが、結婚後は「今日は体調が悪い」、「疲れている」と、体に触れることさえ拒むようになった。最初は一緒だった寝室も、2カ月経ったころには別々の部屋で寝るようになっていた。
「結婚生活は、描いていたものとは別ものでした。仕事で疲れて帰ってきたら、食事がスーパーの惣菜で、妻の体には指一本触れさせてもらえない。食事を終えたら、自分で風呂にお湯を溜めて入る。これじゃあ、独身のときとまったく変わらない。それどころか、家賃、高熱費、食費を考えたら、1人増えている分、出費も増えている。すごくストレスを感じるようになりました」
結局、入籍から3カ月で、まさやから離婚話を持ち出した。最初さゆりは「離婚はしない」の一点張りだったが、さゆりの親にすべてを話したところ、親がまさや側についてくれてさゆりを説得し、入籍から4カ月弱で別居、その2カ月後には離婚となった。
ここまで話すと、まさやは私に言った。
「キャリア志向が強くて、家庭より仕事を優先させた婚約者のことがあったので、仕事をそんなに重要視していない女性を選んだ。ところが、仕事はしたくない、家のこともしたくないという女性だった。自分の人を見る目のなさが招いたことなんでしょうけど、結婚って本当に難しいですよね」
ただ、40歳を目前にして、結婚を諦めたくないという。できることなら、子どもを授かって、休みの日には家族で買い物に行ったり、長期休暇には旅行やキャンプに出かけたりしたいそうだ。
そこで、私はまさやに言った。
「結婚相談所に登録しているのは、そもそも結婚したい人たち。目的は同じなので、フィーリングがあえば、出会って数カ月で結婚が決まってしまう。その短い期間にお相手の人柄を見極めることが大切なんですよ」
結婚相談所の場合、あらかじめプロフィールが公開されている。年齢、学歴、年収、住んでいる地域、勤め先の地域、家族構成、初婚か再婚かなどの情報は、最初にわかる。生活圏内の出会いでは時間をかけて知っていく情報が、プロフィールでわかるのだ。
条件はわかっても人柄まではわからない
一方で、生活圏内の出会いと決定的に違うのは、人柄がわかっていないことだ。
「結婚相談所での交際には、仮交際と真剣交際がありますよね。お見合い後に入る仮交際の時期は何人とお付き合いしてもいいし、新たなお見合いをしてもいい。ここは人柄を見る期間と考えたらいいんですよ。そこから、お一人と真剣交際に入ったら、徹底的に結婚に向けて、考え方をすり合わせていくんです」
このすり合わせが大事なのだ。結婚後の仕事はどうするか。今は結婚後も仕事を続けたいという女性は多い。そうだとしたら、通勤がお互いの負担にならない場所に、新居を構える。1カ月いくらで家計を回していくのか。そのためにはお互いに毎月いくら負担したらいいのかを話し合って決める。
子どもはいつごろ授かるかの計画も立てる。40、50代の婚活者の場合は親も高齢になっているので、親の老後をどうするか、これは大まかでいいので話をしておく。
「真剣交際に入ったときのすり合わせが十分じゃないと、お付き合いしている期間が短いだけに、結婚生活に入ったときに、“こんなはずじゃなかった“となるんですよ」
歳を重ねるほどに、人は頑固になっていく。それは、積んできた経験から自分のルールやライフスタイルを作り上げてしまうからだ。結婚後、相手にそのルールやライフスタイルを押し付けると、それが仲違いの元となる。
それまで違った環境で生活し、親からの育てられ方も、積んできた経験も違うのだから、考え方や価値観がぴったりと合う人など、この世に存在しないと思ったほうがいい。だからこそ話し合いが大事だし、最終的には相手を思いやる気持ちと歩み寄りが大事なのだ。
失敗は糧になる。再婚でまさやには幸せな家庭を築いてほしいと願っている。