キーボードをうまく使うと、時間を大幅に短縮できます(写真:MediaFOTO/PIXTA)

忙しいビジネスパーソンにとって、資料を作成する時間は極力短縮したいもの。パワポのスライドをSNSにアップロードし、そのわかりやすさと面白さから話題になっている“パワポ芸人”豊間根青地氏が、作業効率を大幅に向上させる技を紹介する。

※本稿は豊間根氏の新著『秒で伝わるパワポ術 仕事でもSNSでも<いいね>がもらえるスライド作成のコツ』を一部抜粋・再構成したものです。

前回:伝わるパワポ作るなら実は「地味な色使うべき」訳
前々回:「要するに」を使うとパワポ資料が劇的改善する訳

最も重要な考え方は「サボる」ということ

スライド作成を語るうえで避けては通れない、とても重要なポイントがあります。それは「いかに速くスライドを作るか」ということです。

ビジネスパーソンというのは忙しい生き物です。いくらいいスライドが作りたいと言っても、それに何時間も何日もかけていては本末転倒です。時間をかけずに作れてこその「いいスライド」ではないでしょうか。ここからは、いかに時間をかけずにスライドを作るかについて述べていきます。

スライドを手早く作るために最も重要な考え方。それは「サボる」ということです。サボるというと、やるべきことをやっていないようで何だか嫌な感じの響きですが、本記事ではみなさんに「作業時間を短縮すること」をあまり難しく考えず気軽に捉えていただきたく、あえてこの言葉を使っています。やらなくてもいいことはしないのが吉。積極的にサボっていきましょう。

まず、ショートカットキーでサボりましょう。みなさんはスライドを作るとき、ショートカットキーを使っていますか。私は日々これでもかというほどに使いまくっていますが、あまり使わないという方も多いでしょう。

パワポに限った話ではありませんが、ショートカットキーを使わない方にはショートカットキーのことを「意識が高い人が使うもの」として捉えている方が多いように感じます。

しかし私はむしろその逆で、「面倒くさがりが使う機能」だと思っています。なぜなら、マウスを使う操作はとても「面倒」なものだからです。

例えば、「名前を付けて保存」はキーボードを使えば「指を動かす→F12を押す」の2ステップで終わりますが、マウスを使うと「カーソルを動かす→『ファイル』をクリックする→カーソルを動かす→『名前を付けて保存』をクリックする」の4ステップかかります。マウスを使うと手順が増えて面倒なことがわかるでしょう。

「ショートカットキーを覚えるのが大変だから、私はマウスを使う」と言う方もいるでしょう。好みは人それぞれなので否定はしませんが、私はそれでもショートカットキーを使いこなすことをおすすめします。

パワーポイントは万人に使いやすいように設計されているので、どこにどんな機能が入っているか書いてあります。そのため、マウスを使って順番に特定の箇所をクリックしていけば、誰でも簡単にお目当ての機能にたどりつくことができます。

大きな図書館で、棚に書いてあるジャンルを見ながら借りたい本を探すようなイメージです。目で確認しながら、非常に直感的に操作することができます。

一方でキーは、じっと眺めても何の機能が使えるかはわかりません。F12キーには、残念ながら「名前を付けて保存」とは書いてありませんよね。しかし、たった一度覚えてしまえば一瞬で操作が終わるようになります。

図書館で例えれば、特定の合言葉を唱えるとお目当ての本が一瞬で手元に飛んでくるようなもの。いちいち広い館内を歩き回る必要はありません。キーボードは、言わば「直感的な操作を犠牲にして時間を取るツール」なのです。

合言葉を覚える手間を惜しむか、今後もずっと広い館内を歩き回るか。どちらを選ぶかはあなたの自由ですが、私は合言葉を覚えることを全力でおすすめします。本が手元に飛んできたら楽しそうですしね。

「Ctrl」と「Shift」を使いこなす

ここでは「Ctrl」と「Shift」をご紹介します。みなさん、CtrlとShiftを使っていますか。「Ctrl + C」や「Ctrl + Z」は使っているけれど、CtrlとかShiftにキー単体の機能なんかあるの?……そんなふうに思う方も少なくないのではないでしょうか。

いわゆるショートカットキーではありませんが、パワポを操るうえでこの2つのキーは大変に便利です。ぜひこの機会に使いこなせるようになってみてください。

最初に覚えていただきたいのは、「Ctrl + ドラッグ&ドロップ」による「コピー」です。


(画像:筆者作成)

私はスライドを作るとき、いわゆるコピー&ペースト(Ctrl + C → Ctrl + V)をそれほど使いません。オブジェクト(図形やテキストボックスのこと)を複製するときは、Ctrlを押しながらドラッグ&ドロップをします。

これの何がいいかと言うと、普通にコピペするのと違って直接複製先の場所へ移動できるので、少々手間が減るのです。

「なんだ、そんなことか……」と思うなかれ。作業効率アップをするためには、「ちりも積もれば山となる」の精神が大事。小さな時間短縮を積み重ねていきましょう。

次に、Shiftを押しながらオブジェクトをドラッグすると、「まっすぐ移動」ができます。普通にドラッグするとオブジェクトは上下左右に自由自在に動いてしまいますが、Shiftを押すことで真上や真下に直線的に動かすことができるのです。


(画像:筆者作成)

そして、この2つを組み合わせると「まっすぐコピー」になります。


(画像:筆者作成)

スライド上でオブジェクトを複製するときは、上下または左右にビシッと揃った形でコピーしたいことが多いはずです。「まっすぐコピー」なら、最初からオブジェクトがまっすぐ複製されるので後からビシッと揃える手間が省けます。神を細部に宿らせやすいショートカットキーと言えるでしょう(ドロップと同時にキーから手を離すのではなく、キーを押したままでオブジェクトをドロップするように注意してください)。

よくあるマトリックスの作り方

例えばこんな感じのよくあるマトリックスを作るときは、


(画像:筆者作成)

まず、行を増やすために下方向にまっすぐコピー。


(画像:筆者作成)

次に、Shiftを押しながら2つの図形をクリックすることで同時に選択し、今後は右方向にまっすぐコピー。


(画像:筆者作成)

同じことをもう一度右方向に繰り返し。


(画像:筆者作成)

Shiftを押しながら右上の2つをクリックして同時に選択し、上側にまっすぐコピー。


(画像:筆者作成)

最後の真ん中の図形の書式を変えて白くすれば、マトリックスの完成です。


(画像:筆者作成)

以上のような手順を踏むと、最初から間違いなくキレイにそろったものを作ることができます。本を読んでいるだけでは、きっとこのまっすぐコピーの便利さはわかってもらえません。ぜひ手元にPCを開き、実際に試しながら読み進めてみてください。

また、CtrlとShiftの便利さはまっすぐコピーだけではありません。Ctrlの「基準点を中心にする」という機能も押さえておきましょう。

普通、オブジェクトのサイズを変えるとカーソルで引っ張っている点の対角にあたる点が基準点になります。引っ張った頂点だけが伸びて、反対側の頂点は固定されているようなイメージです。


(画像:筆者作成)

しかし、Ctrlを押しながらサイズを変えると、基準点が図形の中心になります。これの何がうれしいかというと、たとえばスライドの中心に配置した図形のサイズを変えたいときに、右下を引っ張って大きくして、少し右下に移動してしまうので位置を戻して……という手間がなくなるのです。


(画像:筆者作成)

Shiftに関しても、「まっすぐ移動」以外に便利な使い方があります。図形を回転させるときも、Shiftを押しながら回転させると15°、30°、45°、60°……といった具合に、ちょうどいい角度でピシッと止まってくれます。

また、オブジェクトを挿入する際、Shiftを押しながら挿入するとタテヨコ比が1:1の図形を挿入できます。これは、円を挿入するときに特に役立ちます。円は、少しでも歪んでいると一気にカッコ悪くなるため、必ずShiftを押しながらタテヨコ比が1:1の正円を挿入するようにしましょう。

挿入したオブジェクトのサイズ変更でもShiftが活躍

新しく挿入するときだけでなく、すでに挿入してあるオブジェクトのサイズを変えるときもShiftが活躍します。Shiftを押しながらサイズを変更すると、タテヨコ比を固定したままで拡大縮小することができます。


先述の円はもちろんのこと、アイコンや写真、画像として挿入されている文字も、絶対にタテヨコ比を変えてはいけません。

人間の目というのは不思議に敏感なもので、絵や文字のタテヨコ比がちょっとでも変わっているとなんとなく違和感を覚えるからです。

また、線を扱うときも同様です。パワポに線を挿入するとき、まっすぐキレイな線を描きたいのにうまくいかない……そう思ったことはないですか。Shiftを押しながら挿入してみましょう。

タテヨコにまっすぐ伸びるキレイな線を挿入することができます。線を伸ばしたり縮めたりするときも同様です。

以上のように、CtrlとShiftは非常に便利なキーです。この2つのキーをいつでも使えるようにしておきましょう。