みなさん、こんにちは!ファイナンシャルプランナーの高山一恵です。今年も残すところ3ヶ月をきりましたね。私は今年の分のふるさと納税をやっていないので、そろそろ考えなくてはと思っていますが、最近、iDeCoをやっている方からよく質問されるのが、「iDeCoとふるさと納税を併用すると、ふるさと納税の控除額上限が少なくなってしまうのでやらない方が良いのかどうか」というもの。

そこで、今回はiDeCoとふるさと納税を併用した場合、控除額上限や節税の金額などにどのような影響があるのかお話します。

ふるさと納税の概要をおさらい

まずは、ふるさと納税の概要からおさらいしていきましょう。ふるさと納税は、納税という言葉のイメージから税金を納めるイメージがありますが、実際には、ふるさと納税を使って、選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)をすることです。多くの自治体では、感謝の気持ちとして、寄付した額に応じたお礼の品を用意しています。

また、お礼の品をもらえるだけでなく、寄付した金額のうち2,000円を超える金額については、所得税、住民税などから控除して(差し引いて)もらえるのもふるさと納税の魅力です。

例えば、1万円寄付した場合、所得税、住民税合わせて合計で8,000円が控除されます。つまり、実質2,000円の負担で税金が控除され、しかも、返礼品ももらえるというわけです。
※ワンストップ特例の場合には、全額住民税が控除される

ただし、2,000円を超えた金額について、無制限に「控除」してもらえるのかというと、そうではありません。その人の「控除額上限」を超えて寄付すると、超えた分は自己負担になってしまうのです。「控除額上限」とは、自己負担額の2,000円を除いた全額が控除されるふるさと納税額をいいます。この「控除額上限」は、その人の「年収」や「家族構成」などによって異なります。

ふるさと納税の控除額上限の目安は、総務省のページを参考にしてくださいね。

「iDeCo」と「ふるさと納税」を併用すると控除額上限は減る

そもそもふるさと納税の控除額上限は、税込の年収から給与所得控除や様々な所得控除を差し引いた「課税所得」を基準に計算されています。

なぜiDeCoとふるさと納税を併用するのをためらう人が多いのかというと、iDeCoは掛金の全額が所得控除になりますから、ふるさと納税をしている人がiDeCoを併用したら課税所得が減ることになり、その結果、ふるさと納税の控除額上限は減ってしまうからです。

iDeCoの節税の仕組みは、以前のコラム「コロナ禍だからこそお金を少しでも増やしたい!月1万円から始められる積立投資術」で紹介しているので、そちらを確認してくださいね。

では、iDeCoとふるさと納税を併用したら、ふるさと納税の控除額上限はどれくらい減るのでしょうか?

下記の条件の年収300万円の人を例に見てみましょう。

・独身
・会社員(給与収入のみ)
・扶養家族なし
・社会保険料は年収の15%
・所得控除は基礎控除、社会保険料控除のみ
・企業年金がない会社に勤務
・iDeCoには掛金の上限金額まで加入(毎月2万3,000円、年間27万6,000円)

上記の場合のふるさと納税の控除額上限は、

iDeCoに未加入の場合は、2万8,000円
iDeCoに加入した場合は、2万1,000円

つまり、iDeCoに加入することで、ふるさと納税の控除額上限は7,000円減ってしまうことになります。

「iDeCo」と「ふるさと納税」を併用しても全体では節税効果がある

「ふるさと納税の控除額上限が減ってしまうなら、やっぱりiDeCoと併用しない方が良さそう…」と思う方も多いと思いますが、本当にそうなのか、上記の年収300万円のケースで見てみましょう。

ふるさと納税のみを行った場合の節税額

この場合の控除上限額は2万8,000円ですから、
節税額は、2万8,000円(控除上限額)―2,000円(実質の自己負担額)=2万6,000円

ふるさと納税で節税できる金額は2万6,000円となります。

ふるさと納税とiDeCoを併用した場合の節税額

・ふるさと納税の節税額

この場合のふるさと納税の控除上限額は2万1,000円ですから、
節税額は、2万1,000円(控除上限額)―2,000円(実質の自己負担額)=1万9,000円

ふるさと納税で節税できる金額は1万9,000円となります。

・iDeCoの節税額

iDeCoの節税額は、iDeCoの年間掛金の金額×(所得税率+住民税率)で求めることができますから

27万6,000円(2万3000円×12ヶ月)×所得税率5%=1万3,800円
27万6,000円(2万3000円×12ヶ月)×住民税率10%=2万7,600円
合計の節税金額=4万1,400円

ふるさと納税の節税金額と合計すると、6万400円となります。

つまり、ふるさと納税のみの場合の節税金額は2万6,000円、ふるさと納税とiDeCoを併用した場合の節税金額は、6万400円となり、併用した場合の方が3万4,400円多く節税できることになります。

ふるさと納税とiDeCoを併用した方が、全体的には、節税効果が高いということですね。ふるさと納税とiDeCoに限らず、こういった制度では併用した方が全体的に節税できるというケースが少なくないので、目先の損得に振り回されずに全体で考えるようにしましょう。

目先の損得に振り回されないようにしましょう!

■プロフィール

マネーの賢人 高山一惠

ファイナンシャル・プランナー(CFP)/(株)Money&You取締役。2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後、株式会社Money&Youの取締役へ就任。お金の総合相談サイト『FP Cafe』や女性向けマネーメディア「Mocha」を運営。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書は『はじめての資産運用』(宝島社)、『やってみたらこんなにおトク!税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『つみたてNISAでお金は勝手に増えていく!』(河出書房新社)、『パートナーに左右されない自分軸足マネープラン』(日本法令)など多数。株式会社Money&You:https://moneyandyou.jp/ FP Cafe:https://fpcafe.jp/ Mocha:https://fpcafe.jp/mocha   マネラジ。:https://fpcafe.jp/mocha/features/radio     Money&You TV:https://fpcafe.jp/mocha/features/mytv