オランダ・フローニンゲンやカナダ国立公園局などの考古学チームが、1000年前にあたる西暦1021年に北欧のヴァイキングがアメリカ大陸に入植した証拠を発見したと発表しました。この証拠は、ヨーロッパからアメリカ大陸へ渡った人類に関する歴史を塗り替える可能性があります。

Evidence for European presence in the Americas in ad 1021 | Nature

https://www.nature.com/articles/s41586-021-03972-8

Breakthrough Discovery Shows Vikings Were Active in North America 1,000 Years Ago

https://www.sciencealert.com/breakthrough-discovery-shows-vikings-were-active-in-north-america-1-000-years-ago

ヴァイキングによる入植はグリーンランドへのものが有名ですが、実際には北米の北東縁にまで及んだとされており、実際にカナダの東海岸に位置するニューファンドランド島からはコロンブスの上陸以前にヴァイキングが上陸を果たしていたことを示す痕跡が多数見つかっています。

バイキングの遺跡、カナダ東部の島で発見 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/040500122/

しかし、ニューファンドランド島にヴァイキングが残した痕跡はあくまで大まかな年代を示唆するのみで、「ヴァイキングが入植した正確な時期」の絞り込みは達成できていませんでした。今回新たにフローニンゲン大学が率いる考古学チームは、ニューファンドランド島北西部にあるヴァイキングの痕跡が多数残された遺跡であるランス・オ・メドーから出土した、当地の先住民族が用いなかった金属工具の痕がある木片に放射性炭素測定年代法を用い、西暦992年〜993年に発生した太陽嵐の影響によって世界規模で発生した「大気中放射性炭素濃度の上昇」を示す痕跡があることを突き止めました。

今回の発見があったランス・オ・メドーは以下の赤枠部分に位置しています。



放射性炭素測定年代法が用いられた木片が以下。



拡大した際に確認できる年輪はこんな感じ。



この大気中放射性炭素濃度の上昇を基準に換算すると、問題の木片のもととなった樹木が伐採されたのは「西暦1021年」とのこと。研究著者らはこの西暦1021年という具体的な年代がヨーロッパ人のアメリカ入植を示す具体的な基準点になると主張し、放射性炭素測定年代法における太陽嵐の痕跡が入植活動や文化交流の考古学的痕跡の正確な年代を特定する上で役立つ可能性があると語りました。