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川原 礫原作による人気作『ソードアート・オンライン(以下、『SAO』)』シリーズ。その始まりの物語である〈アインクラッド〉編の軌跡を作者自ら新たに描き、完全新作アニメーションで映画化した『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』が10月30日に公開される。『SAO』の主人公・キリト(CV:松岡禎丞)とヒロインのアスナ(CV:戸松 遥)――二人の出会いの物語がアスナ視点で描かれる本作には、アスナの友人である新キャラクターのミト(CV:水瀬いのり)が登場。これまでとはまた違ったアングルから『SAO』シリーズの世界を体感できる今回の劇場版について、メインキャスト3名に話を聞いた。

新キャラクター・ミトがアスナ視点の“始まりの物語”にもたらしたもの



――まずは松岡さんと戸松さん、『SAO』シリーズの始まりの物語となる〈アインクラッド〉編のキリトとアスナを改めて演じたことについて、お気持ちはいかがでしたか?

松岡禎丞 (TVシリーズを演じた)当時のお芝居を今の僕が演じようとすると、全く違うものになってしまうのですが、当時の自分の演技をなかったことにはしたくなかったので、最初はどう演じればいいのかすごく悩みました。ですが、関係者の方に「当時のモノマネを求めてはいないし、今の松岡くんができることを出して」と仰っていただいたことで吹っ切ることができ、僕の中では当時の自分と今の自分の良いとこ取りをする形で演じさせていただきました。今回の劇場版には、TVシリーズの〈アインクラッド〉編でも描かれたシーンが出てくるのですが、僕が当時演じて「ここはこうしておけば良かったかな」と気になっていた箇所も、良い感じに演じることができたので、完成した映像を観たときは思わずガッツポーズしました(笑)。迫真のお芝居で塗り替えることができました。

戸松 遥 自分でハードル上げてるけど大丈夫?(笑)。

松岡 いや、今回に関しては自分に「グッジョブ!」と言いたいくらいの出来になっているので。

戸松 私も(アフレコにあたり)アスナの声の年齢感の参考としてTVシリーズのアニメを観返しはしましたが、それのモノマネになってしまうと違うかなと感じていたので、改めて演じ直す気持ちで、全部のセリフをイチから構築していきました。物語の時系列的にも、アスナ自身が『SAO』に関する経験値がリセットされたところからのスタートだったので、そこはある意味難しさでもあり、逆にありがたい部分でもあって。アスナとはもう10年近くの付き合いになりますけど、新しいアスナを演じる気持ちで臨めたのは新鮮でした。ただ、(TVシリーズと)同じセリフを演じるときは少し緊張しました。もしスタッフさんに「当時とまったく同じ感じで演じてください」と言われたらどうしよう?と思って(笑)。でも、今回はアスナ視点で物語が描かれているので、同じシーンやセリフでも見せ方や演出が変わっていますし、スタッフの皆さんも今の私が演じたらどうなるかを見てくださったので、その意味では同じセリフでも新しい気持ちで演じることができました。

――TVシリーズを踏まえたうえで、より力が入ったシーンやセリフはありましたか?

戸松 「たとえ怪物に負けて死んでも、このゲーム……この世界には負けたくない」という、アスナがそれまでの感情を捨てて気持ちを切り替えるシーンのセリフがあるのですが、このセリフはTVシリーズにもありましたし、さらに遡るとオーディションでも演じた、アスナにとってすごく大切なセリフなんです。このセリフを(オーディションから)10年近く経った今、もう一度演じるときには、すごく色々と思うものがありました。(アフレコの)ディレクションでも「このセリフはより緊張感をもって演じてほしい」とおっしゃっていただいて、アスナ的にも一人でやっていく覚悟を決めるセリフなので、ここは特に緊張感をもって演じました。



――水瀬さんは、これまでにも『SAO』シリーズのオーディションを受けた経験があるとのことですが、今回念願叶ってミト役で参加できたお気持ちはいかがでしたか?

水瀬いのり 過去にも何度かオーディションに呼んでいただいていて、まずそのこと自体が嬉しかったのですが、今回縁のあったミトは(『SAO』シリーズの)始まりの物語である〈アインクラッド〉編に関わるキャラクターということで、すごく報われたような気持ちになりました。ファンの皆さんにとっては一度体験したことのある時系列の物語に新しく加わった存在、新・旧のちょうど真ん中の要素を持つキャラクターなので、新しさもありつつ新しくない感じでいなくてはいけないことがすごく難しかったのですが、松岡さんや遥さん、音響監督さんをはじめとした『SAO』シリーズに長く携わっている皆さんのリードのもと、私も自信をもってミトというキャラクターに声をあてることができました。収録自体はスムーズに録り終えることができたのですが、すごく緊張していて、久しぶりに自分の手汗で台本がパリパリになってしまって(笑)。「私、まだこんなにドキドキできるんだな」と改めて感じられたのは、『SAO』だったからなのかもしれないです。

――TVシリーズには存在しなかった新キャラクターのミトが登場することで、松岡さんと戸松さんが感じたことは?

松岡 アスナとミトの現実世界での関係値もしっかりと描かれていますし、ミトという人間が加わることによって、物語にまた深みが出たと思います。あと、今まで慣れすぎて忘れていたのですが、改めてキリトとアスナが初めて対峙したときは、お互いの間にアクリル板かコンクリートの壁が挟まっているくらいの距離感があったことを如実に感じました(笑)。

戸松 今回は時系列的に一番過去のお話になっていて、アスナとしての『SAO』に関する知識や経験値、人との出会い、キリトとの関係も含めて全部がゼロのところから始まっているので、ミトが加わることによる変化というよりも、むしろ、ミトのおかげで今のアスナに繋がっていくところが描かれているように感じました。

――水瀬さんは今回『SAO』の世界に飛び込んでみていかがでしたか?

水瀬 改めて本作の「これは、ゲームであっても遊びではない」という世界観に、自分もミトというキャラクターと共に入ることができて、ゲームの中で自分の命が計りにかけられて、自分のアバターのHPが危険になれば現実世界の自分の命も危ないという緊迫感を感じることができました。そんな世界の中でも、ミトとアスナは現実世界での友人同士だからこそ、希望を見つけられている関係性がすごく大切に描かれていて。今回、遥さんのお声を聞いてお芝居をすることで、より一層ミトの存在意義を感じることができましたし、それと同時にミトにとってのアスナの大きさも体感できたので、アスナにとって始まりのきっかけになる新キャラクターを演じられたことの重みを感じるアフレコでした。

「懐かしさと新しさの融合」「成長」「これは、ゲームであっても遊びではない」



――皆さんが個人的に推したい、今作の見どころ・楽しみどころは?

松岡 今回はなんといってもアスナですね。例えば(TVシリーズで)キリトとクラインがイノシシ退治をしていた頃、アスナはどう過ごしていたのかを補完する内容になっていますし、〈マザーズ・ロザリオ〉編でも描かれていたアスナとお母さまとの関係性や家庭環境、アスナがなぜ「ソードアート・オンライン」を始めたのか、といった気になる部分にも手が届くものになっていて。きっとアスナという人間がより身近に感じられると思います。

――松岡さんがおっしゃる通り、今作はアスナの心情の変化や成長が丁寧に描かれていますね。

戸松 TVアニメでは「ソードアート・オンライン」の世界に閉じ込められてからのアスナしか描かれていなかったですが、今回の映画の特に前半部分では、“結城明日奈”としての彼女がたくさん描かれていて、プライベートのアスナの姿は私としてもすごく新鮮でした。一人の中学生の女の子としてのアスナが、普段、学校や家でどんなふうに過ごしているのか。そして、クラスメイトのミトとはどんな関係を築き上げていて、その二人が死と隣り合わせの〈アインクラッド〉に閉じ込められたときに、お互いの関係性がどう変わっていくのか。登場人物の関係性が前半と後半で大きく変化していくところも今作の見どころだと思います。特にミトは、ただゲームが上手くて強いだけではない、ある意味一番人間らしくて生々しい部分が描かれているので、多分映画を観た方も共感できるキャラクターだと思います。

――そんなミトを演じた水瀬さんが感じる本作の見どころは?

水瀬 私はすごく緩急があるところだと思います。自分が演じるミトにとっても、死と隣り合わせという現実は変えられないけど、でもそれを忘れてしまえるくらい楽しい時間もあって、そんなときに隣にいてくれるのがアスナで。自分がスキルアップして強くなる喜び、倒せなかった敵も倒せるようになる高揚感がある一方で、成長すればするほど敵も強くなるRPGの王道の展開に苦しめられることになって……私も感情を色んなところに引っ張られながらミトを演じていました。遥さんがお話してくださったように、ミトは本当に人間味に溢れた女の子なので、彼女の中で色んな感情が移ろいでいくんですけど、その辺りに関しては多分、視聴者の皆さんも色んな意見があるんじゃないかな?と思って、今はドキドキしています(笑)。でも、私も一人の女の子としての迷いや葛藤をなるべくリアルに演じたので、そこもぜひ注目して観ていただければと思います。



――最後に、今回の劇場版の魅力を一言で表すとしたら、どんな言葉になりますか?

松岡 やはり「これは、ゲームであっても遊びではない」ですね。この言葉が『SAO』のすべての始まりですし、今回の劇場版は、〈アインクラッド〉には死というものが隣にあることを如実に感じられる、身の毛もよだつほど怖いシーンがあるので。そのなかであの世界を楽しんでいるキリトは、もちろん死を恐れていないわけではないのですが、改めて考えるとすごいですよね(笑)。ともかく、いつ誰が命を落とすかわからない緊迫感や、映画館で観たときに思わず目をつむってしまうようなシーンもあるので、僕は「これは、ゲームであっても遊びではない」です。

戸松 私は「懐かしさと新しさの融合」ですね。アスナ視点になることで、〈アインクラッド〉編のこれまで見えなかった別の一面が見えたりしますし、今回はミトとアスナの二人が〈アインクラッド〉でどういう物語を築き上げていくか、という新しい要素も加わっていて。でも、TVシリーズと繋がるシーンやセリフもありますし、TVシリーズの登場人物たちが別のアングルや演出で出てきたりするのも面白いポイントになっていて、ミトをはじめとした新しい要素と、今までのシリーズとの繋がりが絶妙なバランスで融合されている作品だと感じています。

水瀬 私は「成長」です。自分が成長しなくては死んでしまう危機的状況のなかで、物理的に戦闘力を磨く成長や、生きるためには強くないといけないという心の成長、登場人物の数だけそれぞれの成長ドラマが描かれている作品だと思うので。アスナをはじめ、ミト、キリトが選ぶ選択肢が大きな分岐に繋がるので、それぞれの成長と葛藤を観てほしいですし、どのキャラクターに感情移入するかは視聴者の皆さんの心にゆだねられていると思うので、ぜひ「自分だったら?」みたいなことも考えながら観ていただきたいです。

PHOTOGRAPHY BY 堀内彩香

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

【ギャラリー】







●配信情報

「ソードアート・オンライン」シリーズ

劇伴楽曲のストリーミング配信中!

・ソードアート・オンライン ミュージックコレクション

・劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール- Original Soundtrack

●作品情報

『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』

<INTRODUCTION>

第15 回電撃小説大賞<大賞>を受賞した川原礫氏による小説『ソードアート・オンライン』シリーズ(「電撃文庫」刊)。 次世代VRMMORPG《ソードアート・オンライン》を舞台に繰り広げられる主人公・キリトの活躍を描いた物語は、

2009年4月の原作小説第1巻発売以来高い人気を誇り、 2021年現在、 全世界での累計発行部数は2,600万部を突破。 TVアニメは2012年に第1期が放送され、 現在までに4シリーズ(全97話※1)が放送されている他、ゲーム、 コミカライズなど、 幅広いメディアミックス展開がなされている。

2017年には『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』が公開。 興行収入25億円を突破する大ヒットを記録した。

『ソードアート・オンライン プログレッシブ』は、 《SAO》物語のすべての始まり、 アインクラッド第一層からの軌跡を、 深く掘り下げながら詳細に描く作者自身によるリブート・シリーズ。

原作者・川原礫がアスナ視点で描く新たな《アインクラッド》編を、 完全新作アニメーションで映画化。

これは、 ゲームであっても遊びではない――。

ゲームオーバーは現実の死に直結する。 全ての原点であるデスゲーム『ソードアート・オンライン』が、 劇場のスクリーンで新たに幕を開ける。

※1総集編および、 「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」を除く

<STORY>

これは、 《閃光》と《黒の剣士》が、 その名で呼ばれる前の物語――

あの日、 《ナーヴギア》を偶然被ってしまった《結城明日奈》は、 本来ネットゲームとは無縁に生きる中学三年生の少女だった。

2022年11月6日、 世界初のVRMMORPG《ソードアート・オンライン》が始動した。

ところが、 ログインの熱狂冷めやらぬプレイヤーたちが、 突如ゲームマスターによってログアウトの手段を奪われ、 ゲームの世界に閉じ込められてしまう。 ゲームマスターは告げた。

《これはゲームであっても遊びではない。 》

ゲームの中での死は、 そのまま現実の死につながっている。

それを聞いた全プレイヤーが混乱し、 ゲーム内は阿鼻叫喚が渦巻いた。 そのうちの一人であったアスナだが、 彼女は世界のルールも分からないまま頂の見えない鋼鉄の浮遊城《アインクラッド》の攻略へと踏み出す。

死と隣り合わせの世界を生き抜く中で、 アスナに訪れる運命的な《出会い》。 そして、 《別れ》――。

《目の前の現実》に翻弄されるが、 懸命に戦う彼女の前に現れたのは、 孤高の剣士・キリトだった――。

【STAFF】

原作・ストーリー原案:川原 礫(「電撃文庫」刊)

原作イラスト・キャラクターデザイン原案:abec

監督:河野亜矢子

キャラクターデザイン・総作画監督:戸谷賢都

アクションディレクター・モンスターデザイン:甲斐泰之

サブキャラクターデザイン:秋月 彩・石川智美・渡邊敬介

プロップデザイン:東島久志

美術監督:伊藤友沙

美術設定:平澤晃弘

色彩設計:中野尚美

撮影監督:大島由貴

CGディレクター:織田健吾・中島 宏

2Dワークス:宮原洋平・関 香織

編集:廣瀬清志

音楽:梶浦由記

音響監督:岩浪美和

音響効果:小山恭正

音響制作:ソニルード

プロデュース:EGG FIRM・ストレートエッジ

制作:A-1 Pictures

配給:アニプレックス

製作:SAO-P Project

【CAST】

キリト:松岡禎丞

アスナ / 結城明日奈:戸松 遥

ミト / 兎沢深澄:水瀬いのり

クライン:平田広明

エギル:安元洋貴

シリカ:日高里菜

ディアベル:檜山修之

キバオウ:関 智一

【音楽】

「往け」 LiSA(SACRA MUSIC)

作詞:LiSA /作曲:Ayase /編曲:江口 亮

(C)2020 川原 礫/KADOKAWA/SAO-P Project

関連リンク



『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』公式サイト

https://sao-p.net/