日本代表がひとまず危機を脱した。10月12日のオーストラリア戦に2対1で勝利し、最終予選の成績2勝2敗に戻したのだ。

 オーストラリア戦は、流れが変わるきっかけになるかもしれない。システムを4−2−3−1ではなく4−3−3とし、インサイドハーフに田中碧を抜てきした。最終予選初先発の守田英正の起用も含め、スタメンの入れ替えが勝利につながった。勝点3をつかむと同時に、閉塞感を打破したのではないだろうか。

 ようやくオプションを手にしたことで、戦い方の幅が拡がる。対外的な圧力にもなる。4−2−3−1でスタメンも予想しやすかったこれまでとは異なり、対戦相手はふたつのシステムを想定した準備をしなければならない。相手の出かたが分からない状況で試合に臨むのは、チームのレベルを問わずにストレスとなるものだ。

 頭上を覆っていた靄(もや)は薄くなってきた。それでもなお、視界良好ではない。

 4試合を終えたグループBの順位は、4連勝のサウジアラビアが勝点12で首位、3勝1敗のオーストラリアが勝点9で2位にとなっている。3位はどこかというと、日本ではないのだ。2勝2敗で並ぶオマーンなのである。

 オマーンは10月7日のオーストラリア戦に1対3で敗れたが、12日のベトナム戦は3対1で勝利した。得失点差はオマーン、日本ともにプラスマイナスゼロだが、総得点でオマーンが日本を上回る。日本はプレーオフにも出場できない4位にとどまっている。

 勝点で並んだ場合、順位の決定は得失点差、総得点、当該チーム間の勝点、当該チーム間の得失点差、当該チーム間の総得点の順に決定される。サウジアラビアとオーストラリアには、勝点で先行されているだけでなく、得失点差でも「5」の開きがある。さらにオマーンにも、総得点で後れを取っているのだ。オーストラリアを下したからといって、楽観ムードに包まれている場合ではない。

 オーストラリア戦の結果を受けて、監督交代ムードはひとまず沈静化した。サッカー協会の田嶋幸三会長も、反町康治技術委員長も、引き続きバックアップしていくと明言している。

 森保監督の続投に異論はない。11月の2試合は現体制のままでいいだろう。しかし、ベトナム、オマーンとの連戦の結果と内容次第では、再び交代を考える必要が出てくる。

 ベトナム戦は勝利だけでなく、より多くの得点が求められる。サウジアラビアとオマーンと同じ3得点奪取は、必ずクリアするべきノルマだ。

 続くオマーン戦も、2点以上取って勝利したい。オマーンと順位を争うことになった場合、当該チーム間の総得点で上回っておきたいのだ。

 年内の最終予選は11月で終わり、1月末から再開される。体制を代えるならこのタイミングだ。最終予選は1試合ごとに各国の立場が変わっていく。森保監督をしっかりとサポートしつつ、有事への備えも怠らない両にらみで臨んでいくべきである。