年齢によって結婚できる/できない論が男性にもあるようです(写真:sasaki106/PIXTA)

かつて、「結婚適齢期=クリスマスケーキ理論」というものがありました。25歳までに結婚しないとそれ以降が難しいというものです。そう言われた時代は1980年代で女性の平均初婚年齢が25歳台の頃です。現代では、「結婚適齢期=年越しそば理論」または「結婚適齢期=夏休み理論」というのもあるようで、これは31歳までが勝負という意味です。

この年齢による結婚できる/できない論については、今まで女性のみを対象として言われてきたことですが、男性も無関係ではありません。女性同様、男性にも年齢による結婚限界理論があります。

平均初婚年齢が約70年ぶりに下がった

厚生労働省の人口動態調査によれば、2020年の平均初婚年齢は男性31.0歳、女性29.4歳で、2019年の男性31.2歳、女性29.6歳と比較して下がりました。平均初婚年齢が前年より下がったのは男性では1972年以来、女性でも1970年以来のことです。


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だからといって、若者の結婚が増えつつあるという早計な判断はできません。そもそも全体の婚姻数が激減しているため、相対的に結婚適齢期である20代の構成比が高まったにすぎません。婚姻の絶対数では20代も30代も減少しています。

昨今の婚姻減を「未婚化ではなく晩婚化現象」とみる向きもありますが、40代以上の初婚数の長期推移をみると、確かに晩婚化が進行したとはいえ、その伸びは頭打ちとなり、2019年の令和婚特需を除けば、40代以上の初婚も男女とも減少基調にあります。それは、とくに男性に顕著です。

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この要因は、以前より当連載でたびたびご紹介しているとおり、「夫年上婚」の大幅な減少です。婚姻数の多かった1970年には8割を占めた夫年上婚は、2020年には5割台に低下。絶対数でも62万組から16万組へと75%減、年間当たり46万組も減少しています。

この46万組減少はほぼ全体の婚姻数の減少数と同等であり、つまり、婚姻数の減少はほぼ夫年上婚の減少によるものなのです。同い年婚と妻年上婚は絶対数としては、この50年間ほぼ変わっていません。晩婚も減少、夫年上婚は大激減となると、男性はますます中年以降に結婚することは難しい時代になったといえます。

既婚夫婦は何歳で配偶者と出会ったか

では、そもそも結婚に至った夫婦は何歳のときに今の配偶者と出会っているのでしょうか。厚労省の出生動向基本調査の夫婦調査によれば、恋愛結婚の場合ですと、男性は平均25.4歳、女性は24.1歳の段階で出会った相手と結婚しています。

1992年からの推移をみると、女性の場合は出会い年齢がやや遅くなっていますが、これは女性大学進学率の増加とも関連があるといえます。男性の場合は、1992年実績でも24.2歳なのでさほど変化はありません。

つまり、30年前も今も結婚する男性というのは、大体25歳までにその相手と出会っているということであり、裏返せば25歳までに誰とも出会えていない男性の結婚は厳しいものになるということでもあります。ちなみに、恋愛結婚でない見合い結婚(結婚相談所含む)場合の出会い年齢はそれよりも当然遅くなります。平均値で、男35.6歳、女32.3歳となります。


さらに、出会ってから結婚に至るまでの期間はどうでしょう? 恋愛結婚の場合、1992年は平均3.4年だったものが、2015年には4.6年へと約1.2年も延びました。先ほどの出会い年齢平均値と照合すると、男性の場合25.4歳に出会って、そこから4.6年付き合って、ちょうど30歳のときに結婚するというパターンになります。

ほぼ平均初婚年齢と一致します(女性の場合は、24.1歳で出会って、28.7歳で結婚)。言い方をかえると、男性の場合、もし30歳までに結婚したいのならば25歳時点で出会っていないといけないという計算です。

結婚確定までに3年半、準備に1年?

もちろん、あくまで平均ですから、それより短い人もいれば、長い人もいるでしょう。ただ、世の中の大半はこんな経緯を経て結婚しているわけです。

また、4.6年は長すぎると感じる方もいるかもしれませんが、これはあくまで結婚年齢なので、プロポーズや結婚の合意はそれ以前に済ませてあります。結婚確定まで3年半、結婚準備に1年というところでしょうか。

余計なお世話ですが、3年以上付き合っているのに一向にプロポーズの気配のない男性と付き合っている女性で彼との結婚を望んでいる場合は、自分からプロポーズするか見切りをつけるかしたほうがよいかもしれません。一方、お見合い結婚は、当然ながらもっとスピーティーです。出会いから結婚まで1年くらいで推移しています。


とはいえ、これをお読みになっている方の年齢層からしたら、出会い年齢の平均値である20代の年齢を提示されても、もうとっくに超過しているので意味がないと思われるかもしれません。

そこで、出会い年齢から全体の95%値を算出することで、恋愛結婚するための「限界出会い年齢」を割り出してみました。その年齢を超えて、結婚する相手に出会える割合は5%以下という意味です。

結果は、恋愛結婚するための男性の限界出会い年齢は36.9歳、女性は34.6歳と出ました。全員とはいいませんが、男性は37歳、女性は35歳を超えるとほぼ恋愛相手との出会いはないと考えていいでしょう。


40歳を超えてから「恋愛結婚したい」と急に婚活にいそしむ未婚男性の方もいるらしいのですが、40歳の時点で付き合っている相手がいない状態からのスタートはほぼ絶望的といっていいでしょう。40歳以上で初婚している男性のほとんどがすでに37歳までに結婚対象相手が存在しているのだ、という事実は押さえておいたほうがよいかと思います。

平均初婚年齢を追うのではなく、「結婚した人がその相手と何歳で出会っているのか」という出会い年齢を基軸に考えないといけないということです。

日本の皆婚時代を作り上げたのは?

かつて、日本の皆婚時代を作り上げてきた最大の要因は、お見合いや職場縁などの「お膳立て」によるものです。夫年上婚が8割を占めていたのもそれに起因します。

冒頭で、夫年上婚が1970年と比較して、46万組も減少していると書きました。出生動向基本調査の「夫婦の出会いのきっかけ」という統計に基づいて、1970年と2015年のきっかけ別婚姻数を比較すると、お見合いと職場を合わせた合計の減少婚姻数が約46万組です。夫年上婚の減少とは、すなわち「お見合い+職場」結婚の減少数と完全に一致するのです。

残念ながら、今後、伝統的なお見合いが増えるとは思えませんし、職場での出会いに関しても、上司のおせっかいも、先輩社員が後輩社員を飲みに誘うことすらセクハラ扱いされてしまうリスクがあります。

婚活系のマッチングサービスを使えばよいではないか、という意見もありますが、あれこそかつての路上ナンパのネット版にすぎず、結局は恋愛強者だけが楽しめるサービスとなっているのが実情です。恋愛が自由市場化すれば、強者の総取りになってしまうのは自明の理だからです。

結婚をするのなら、若いうちにしておいたほうがいい。これは真理なのですが、『「独身の9割が結婚したい」説の根本的な誤解』という記事に書いたように、34歳までの未婚者で結婚に前向きなのは男4割、女5割しかいません。

男性であっても35歳を超えて、結婚相手を新たに見つけるというのは、当記事でご説明したように、恋愛結婚においてはかなり難しくなるにもかかわらず、若いうちの結婚意欲がこれほど低いと婚姻数が減るのは当然です。

晩婚化という言葉に惑わされがちですが、男性の結婚にも締め切りは存在します。「孝行したいときに親はなし」という言葉がありますが、「結婚したいときに相手はなし」ということになるかもしれません。